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会社員から靴職人に! 靴作りを通して知った新しい“モノの見方”

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会社員から靴職人に! 靴作りを通して知った新しい“モノの見方”

築59年の古いビルをリノベーションし、ギャラリーや個性的なお店が集まる「リノベーションミュージアム冷泉荘」。その一室に、靴のオーダーメイド&靴作りの教室『Shoe lab noppo(シュー・ラボ・ノッポ)』があります。

お店の名前のとおり、スラリと背の高いオーナーの黒木さんに、オープンのきっかけなどを伺いしました。

まるで事件! 靴作りを通してモノの見方がガラリと変わった

黒木さん

オープンして6年目を迎える『Shoe lab noppo』。以前はどこかのショップで修業を?と思いきや、なんとお店を始める前はずっと会社員としてお勤めだったそう。

しかも、靴作りのきっかけは「近所に靴作りの教室があったから」! 子どもの頃からモノ作りは好きだったものの、それを仕事にしようと思っていなかった黒木さんですが、靴作りを始めてすぐ、その魅力にとりつかれます。

靴いろいろ

「それまで、『靴を履く』ということをちゃんと考えたことがなくて。靴ひもは結びっぱなしで履くたびに締め直すこともない。それが、靴作りを学んでいくうちに、靴の履き方や歩き方など、一つひとつを意識するようになりました。

その考え方、モノの見方の変わり様は、自分にとってまるで“事件が起きた!”くらいの衝撃だったんです」と黒木さんは笑います。

学費も開業資金も、すべて会社員時代の預金から捻出

ミシン

そして会社を辞め、靴作りの学校に通うために上京。

この思い切った決断は、「ちょうどリーマンショックなどもあって、この先どんなことがあるか分からない。だったら興味のあることをしたい」と思ったからでした。

「もともとそのつもりがなかったので、開業用の資金なんてありません。ただ、会社員時代になんとなく毎月預金をしていて、妻と一緒にしていた貯金も合わせると割とまとまった額がありました」。黒木さんは、その預金から、靴作りの学校の学費約100万円を支払い、開店準備を進めます。

開店準備に使った金額は「だいたい普通自動車1台分くらい」。一番費用がかかったのは機械で、ミシンや革漉き機(革を薄く削る)、グラインダー(靴底などを削る)を、約100万円で揃えました。

大切な靴型

そして、オーダーメイドの靴作りに欠かせないのがさまざまな靴型。サイズだけでなく、爪先の形など、靴の見た目を決定づける大切なものです。

今も自分でも削ったり調整したりしながら、欲しい靴型を少しずつ増やしています。

未経験からオーダーメイド靴のショップ&靴作り教室のオーナーに!

看板

黒木さんの仕事の中心は、お店で注文できるオーダーメイドの靴や、決まったパターンから選ぶセミオーダーメイドの靴作りですが、もう一つ大事にしているのが「靴作り教室」です。

この教室は口コミで人気が広まり、現在は十数人の生徒さんが靴作りの魅力にハマって通ってくるのだとか(月2~4回、月謝5000~1万円)。

靴型

教室を営むのは、自分と同じように「靴作りを通して、今までとは違うモノの見方を知る」楽しさを体験してほしいから。

自分で作った靴を履くと、「今までは既成の靴の形に、自分の足を合わせていたんだな」と分かるそう。ぴったりフィットする履き心地の良さはもちろん、「自分が作った靴を履いて、歩いて好きな所へ行ける」という気持ちよさは格別なのだとか。

以下は教室で作った生徒さんが作った靴です。素敵ですね!

 


型にはまらない、靴作りの新たな可能性を探索中!

「やればやるほど新しい視点が加わって、次はもっとああしよう、こうしようという気持ちになります」と黒木さん。

「でも、オーダーメイドの靴作りは、自分とお客様のゴールが必ずしも同じだとは限りません。自分がこだわりすぎてもダメだし、オーダー通りだと自分が出来上がりに納得できないときもある。そのバランスがとても難しいんです」

大好きな靴に囲まれて、じっくりと言葉を選びながら丁寧に説明してくださる黒木さん。靴作りにも、お客様の思いにも、まっすぐに向き合って真摯に取り組む様子が伝わってきました。

足の模型

「まだまだ、商売も軌道に乗っているとは言えません」と話す黒木さんですが、ワークショップやカフェとのコラボイベントを行ったり、足の構造と健康について興味を持ったりと、黒木さんの新たな視点への探求は尽きることがなさそう。

『Shoe lab noppo』で、これから何が始まるのか、ますます楽しみです。

Shoe lab noppo

Shoe lab noppoインスタグラム