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本当に米国株は配当が高いの?初心者が始める時の注意点は【FP相談】

FPに聞きたいお金のこと 内山 貴博

本当に米国株は配当が高いの?初心者が始める時の注意点は【FP相談】

【画像出典元】「iStock.com/SIphotography」

Wallet+ユーザー様からいただいた「FPに聞きたいお金のコト」にお答えします。今回は投資初心者で、配当が高い米国株に興味を持っている20代女性Hさんからのご相談です。

20代女性Hさんの相談

「米国株はリターンが大きいと聞きましたが、どうやって始めたらいいでしょうか。投資初心者で、今は確定拠出年金で投資信託をしています。会社の掛け金のみでマッチング拠出はしていません。予算は100万円で、毎月1万円くらいを考えています」

米国株投資に興味を持った方からの相談です。コロナショックで世界の主要株価は過去に前例がないほど急速かつ急激に値を下げる局面がありました。一方、「終息すれば経済活動が活発化する」そのときに備えて、株価が下がった今の場面は絶好の買い場であるととらえ、投資をする個人が増えたともいわれています。

それでは、米国株投資をどのように始めるかの前に、まず米国株は本当に日本株よりリターンが高いのか?ということを確認したいと思います。

日本株と米国株の違い

日本株は、主に東京証券取引所に上場している日本企業の株式のことを指します。皆さんは、よくテレビ等で見かける証券会社の株価ボードや、新聞の株価欄に記載されている企業の株式に投資をすることができ、そのためには証券会社の口座開設が必要です。

米国株は主にアメリカの企業で、ニューヨーク証券取引所ナスダック市場があり、一般的に、大手主要企業はニューヨーク証券取引所、IT系はじめ新興形の企業はナスダックに上場しています。近年急成長中のamazonやFacebookなどはナスダック市場に該当します。

海外の株式を買うためにはいくつかの方法がありますが、一般的には日本株同様、国内の証券会社に口座を開設します。多くの証券会社が外国株式取引も対応可能となっています。ただし、後述する為替のリスクをはじめ、取引時間など国内株式とはルールが異なるため、口座開設後に、外国株式を取引するために別途手続きが必要となります。

米国株の株価はドルで表示され、時差の関係で米国市場は日本時間の夜から朝方にかけて取引が行われます。サマータイム制があるなど日本とは少し事情が異なるため、口座開設時に一通り確認をしておいてください。

日米株価動向の比較

株式投資
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以下は日経平均と米NYダウの株価指数で、10年前を100とした指数の推移です。青が米国NYダウ、赤が日経平均を表しており、コロナショック前で見ると日経平均が100%つまり2倍となる中で、米国NYダウはおよそ2.5倍となっており、 たしかに米国株の方がパフォーマンスで上回っています。

<日米株価指数の比較>過去10年

ヤフーファイナンスより
https://finance.yahoo.co.jp/

また、通常「円」を使って生活している日本人にとっては、上記をさらに「円ベース」で考えるべきです。ドル円レートは2011年の東日本大震災後に1ドル80円台を割り込む超円高局面がありましたが、その後は100円台前半での推移となり、一時120円台までドル高・円安が進んだ場面もありました。

<ドル円レート>過去10年

 
ヤフーファイナンスより
https://finance.yahoo.co.jp/

2010年ごろ、1ドル80円のときに円をドルに換えた場合、その後ドルの価格は100円~120円程度で推移しているため、1ドル20円~40円程度、為替変動での利益が生じているのです。
いわば米国株投資を行うことで、日本株よりも高いリターンが得られ、かつ為替差益、2つの恩恵を受けられるということです。

本当に米国株が有利なのか?

主要株価指数を用い、10年という一定期間で見た限りでは米国株の方が有利に見えます。ただし、ここ数年の間にも何度も急激なドル安・円高局面もあったため、その場合は為替の変動分、米国株投資のパフォーマンスが低下することも考えられます。

日米の経済をマクロで比較すると日本はバブル崩壊以降、低い経済成長が続いており、加えて少子高齢化や財政赤字など構造的な問題も抱えています。一方、GDP世界第1位の米国は日本よりも高い成長率を誇り、今後もこの流れが続くという見方もあるため、米国株に投資妙味があると考えることもできるでしょう。

ただし、あくまで相場次第。個別株次第となります。よって、今回の相談者は「米国株はリターンが高い」と聞いたようですが、リターンとリスクは表裏一体のため、「リスクも高い」ととらえておくことが大切だと思います。

銘柄選別は難しい、米国株ファンドの積立からがおすすめ

資産運用でお金を増やす
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投資初心者のみならず、株式(銘柄)を選ぶときの原則は、良く知っている産業や業種の中から選ぶことです。IT分野に詳しくない人がIT関連の銘柄を買うことはあまりおすすめできません。

その業界がどのように変化しているのか、その会社がどんなサービスを始めたのか。こういうことを把握する上でも、良く知っている会社の方がいいですよね。そう考えると、日本株なら良く知っている企業もあると思いますが、米国株になるといかがでしょうか?おそらくは日本株よりも銘柄選別は難しくなると思います。

特に今回の相談者は投資初心者ということですので、米国株投資に興味があるならば、まずは確定拠出型年金でなじみのある投資信託から始めてはどうでしょうか?「○×米国株インデックスファンド」、「◇△米国成長株ファンド」など米国株に投資をする投資信託もたくさんあります。そして、現在の手元資金の状況も考慮し、まずは積立から始めてください。

米国経済や米ドルの影響を強く受けやすい家計資産になってはいけませんので、当面は積立可能額の1万円のうち、最大でもその半分、5000円ぐらいが良いと思います。残りは預貯金とのバランスも考えながら、先進国や成長国の株式、債券やリートなどその他投資対象を検討してみてください。