消費者のためのわかりやすいFinTech(フィンテック)~第8回「個人が株を発行できる時代が到来!! その仕組みとは?」~
これまで、株式を発行して市場から資金を調達できるのは株式会社だけでした。ところが、フィンテックの進展とともに、個人がWEB上のサービスを介して疑似的に“株式”を発行し、資金を集めることができるようになってきました。
今回は、個人が知識や経験、知名度を生かしてネット上で”評価“され資金を集めることができる新たな仕組みと、その仕組みを実現するサービス「VALU(バリュー)」について説明します。
個人がお金を集められる新しい手段が誕生!
新しい事業のアイデアやかなえたい目標があるという人はたくさんいると思います。でも、それを実現するための資金を集めるのは想像以上に大変なことです。
個人の場合、金融機関からの信用が低く必要な額の資金を調達できず夢を諦めるというのは珍しい話ではありません。何かしら担保が必要なことも多く、書類作成の手間もかかる上に、厳しい審査が待っています。
どれだけ斬新なアイデアがあっても、どれだけニーズが高くても、金融機関はその点だけを評価してお金を貸してくれる訳ではありません。つまり、今までは、すでにある程度まとまったお金を持った人だけがチャンスをつかめる状況だったのです。
ところが、最近、金融機関では信用が低いとされがちな個人でもアイデア次第で手軽に資金調達できるサービスが誕生し、話題となっています。
「VALU(バリュー)」と名付けられたそのサービスは、個人が「VA」と呼ばれる“株式”のようなものを発行して公開し、その「VA」に価値が付くことで資金調達が可能となる仕組みです。
どのような人たちが「バリュー」を利用しているの?
「VALU」は2017年6月にリリースされたばかりの新しいサービスで、個人で何かを志し、その活動資金を必要としている人が多く利用しています。
例えば、イラストレーター、カメラマン、コスプレイヤー、YouTuber、アーティスト・・・あるいは自分の店舗を持ちたい人、社会的なプロジェクトを志す学生などが中心となっています。
こうした資金を調達したい人たちは、「VALU」上で自分の夢や希望を語り、アピールします。また、応援してくれる人に対する優待を自ら考え、設定します。
例えば、「1va所有で似顔絵描きます」とか「1va以上で手作りウィンナー送ります」、「3va以上でコンサルティングします」など。
優待をつけることで、自分の発行する「VA」がより購入してもらいやすくなり、資金を手にすることができるのです。
また「VA」は自由に取引することができるため、VALUERと呼ばれる投資家間で「VA」の売買も行われています。この場合も株式と同じで、価値の高い「VA」ほど高い値が付くことになります。
「VA」はビットコインでしか買えない
「VALU」のもう一つの特徴は、「VA」の取引にビットコインを使用するところです。「VALU」は参加する時点で誰もがSNSデータをもとに価値が設定されます。例えば「1va=0.002ビットコインで、1000vaの価値があるとすれば、2ビットコインの価値がある」と評価され、取引によってその価値は上下します。
このあたりの仕組みは株式と同様です。株式の場合は日本円で売買しますが、「VALU」ではビットコインで購入するため、その仕組を理解することをより難しくしています。なお、株式配当など利益配分の仕組みはありません。
「VALU」では短期売買というより長期的に保有して、夢実現を長期にわたって応援する傾向が強いのも特徴です。
これからは「評価経済」がキーワードに!
「VALU」には、2017年9月時点で約2万人の利用者がいます。現時点での利用者は一部の情報通の人たちだけですが、個人が資金を調達できる手段として今後の成長が期待されます。
「VALU」の根底にあるのは、「評価経済」です。これまで価値を評価しにくかった知識や経験、人脈などから、どれくらいの価値がある人物なのか評価し数値化します。これはスマホやSNSの普及が可能にした技術で、その結果、個人でも資金を集めることができるようになりました。
一見、一般の家庭では関係ないと思われがちですが、例えば子どもが自分の教育資金を調達することも可能です。当然、簡単なことではないため、子ども自身の本気度も試され、計画性や行動力もチェックされます。日本の教育現場にない「金融教育」を身をもって体験することになるでしょう。「評価経済」は、従来の「お金の経済」とは違う、信用を積み重ねコツコツ頑張っている人が評価される「信用経済」へと取って代わる可能性を秘めています。
新しい発想から生まれた「VALU」。個人の夢を応援し背中を押すツールとして非常に魅力的です。とはいえ、新しいサービスでスタート間もないこともあり、不正行為ともとれることも起こり、改善・改良が重ねられているのが現状です。不安要素もあるものの、近い将来、個人が資金を調達する手段としてメジャーになってくるかもしれません。