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犬専用の総菜屋も…犬フレンドリーな街 N.Y.の最新「犬」事情

N.Y.発、安部かすみの今気になる最新マネートピック 安部 かすみ(あべかすみ)

(c)Kasumi Abe

ニューヨーカーは犬が大好き。ドッグフレンドリーなニューヨーク(以下N.Y.)の街中では、犬の散歩姿を頻繁に見かけます。軒先に犬用の水を置いてくれている店も少なくありません。犬関連のユニークなサービスを提供するスポットも増えています。本記事では市内のユニークな「犬天国」のスポットを紹介します。

アメリカのペット市場はなんと約40兆円に迫る規模

アメリカにおけるペット関連の市場が経済に与えている影響は大きく、2021年のデータで2605億ドル(約39兆4700億円)にも上る規模ということです(参照:APPA=米国ペット用品協会などによる調査をまとめた全米ペット擁護団体のペット・アドボカシー・ネットワーク)。

飼い主がペット関連で使ったお金は939億5000万ドル(約14兆2400億円)で、そのうちもっとも多く占めるのがペットフードやトリート(おやつ)で500億ドル(約7兆7600億円)分とのこと(2021年)。

ペット・アドボカシー・ネットワークのCEOマイク・ボバー氏は、動物やペットとの交流が心身の幸福につながるのは科学で証明されているとし、「これらの数字はペットの産業が健全な米経済も支えていることを示しています」と自身のニュースサイトでコメントしています。 アメリカではペットは経済、そして人々の心身の健康のためにも欠かせないものになっています。

ニューヨーカーも大の犬好きで知られています。N.Y.の街中を歩いていると、犬の散歩をしている人に必ずと言ってよいほど出くわします。カフェやバーの軒先にはワンチャン用の水がよく置かれているし、「犬種は?」「何歳?」などと知らない人同士で犬をきっかけに話に花が咲くこともしばしばです。

そんなドッグフレンドリーなこの街には、日本にはあまりない犬関連のユニークなサービスもたくさんそろっています。

例えば、忙しくて犬の散歩ができない飼い主の代わりに散歩させるドッグウォーカーという職業があり、多忙な飼い主の強い味方になっています。ドッグウォーカーが両手に何十匹も犬を連れている姿はここではすっかり日常の風景です。

市が設置している犬専用のドッグランも充実しています。市議会によると市内に138箇所もあるとのこと。リーシュなしで自由に犬を遊ばせることができ、どの犬も目をキラキラさせて楽しそうに走り回っています。すぐそばで飼い主同士がおしゃべりに興じたりと微笑ましい光景が広がります。

【画像出典元】「rblfmr/Shutterstock.com」

犬関連のイベントも充実しています。先月も犬が仮装したハロウィンパレードが開催されたばかりです。

犬を放し飼いできるドッグカフェ

ラップトップで仕事をしたり、休憩したり。このカフェに入るすべての犬はワクチン接種​​済みであることが条件です。
(c)Kasumi Abe

「ワン、ワン、ワン!」。二重構造になっている入り口ドアから左側のカフェスペースはとても賑やかです。ここでは小型犬から大型犬までどの犬も楽しそうにわちゃわちゃ&自由に行き交っています。

ここは、犬を自由に放し飼いできるドッグカフェ、ボリス&ホートン(Boris & Horton)。最近日本でも犬カフェはいくつかありますが、人間本位の「犬と触れ合う」がテーマのようです。一方N.Y.のドッグカフェは「触れ合う」というよりどちらかと言うと「犬本位」です。ドッグパークの延長線上にあり、飼い犬を自由に遊ばせることができるカフェなのです。ですから客は「放し飼い」をされている犬に不必要に触ったりはしていません。ここはコワーキングスペースも兼ねているため、皆ラップトップで仕事をしたり、友人同士でおしゃべりしたり、ちょっとした休憩で立ち寄ったりと、犬連れの人も犬なしの人もどちらもカフェとして利用しています。

「今日はうちのウィックが少しトラブルメーカーみたい。ほかの犬にちょっかい出すから目が離せなくて...」。コーヒーを飲みながらそう苦笑いするのは、愛犬を連れて来たブルックリン在住のパットさん。月に3、4回はこのカフェを利用するそうです。

ウィックのようにほかの犬と交流する社交的な犬が大半ななか、中にはまったく交流せず飼い主の足元でジッと大人しくしている犬もいて、それぞれちゃんと性格の違いがあるのだと気づかされます。そんな犬同士の交流を見るだけでも癒やされますから、犬なしで訪れてもここでは時間の流れがあっという間です。

「犬は素晴らしいコンパニオン(人生を共に過ごす仲間的な存在)。ソーシャライズする機会が増え人間関係が広がりますし、人生がより豊かになるんです」。ニューヨーカーが犬好きな理由をそう語るのは、娘のローガン・ミクリ(Logan Mikhly)さんと共同でこのドッグカフェを創業したコオピ・ホルツマン(Coppy Holzman)さん。父娘共に大の犬好きで、店名はそれぞれの愛犬の名前からとったそうです。

共同経営者のコオピ(Coppy)さん。チャリティバズの創業者で会社を売却後、2018年に市内初の犬カフェをオープン。 (c)Kasumi Abe

「5年前に市内初のドッグカフェとしてスタートしたんですよ」。コオピさんによると、1号店をマンハッタンにオープンしたのは2018年。瞬く間に犬好きの間で話題となり大盛況に。そして今年6月に2号店となるブルックリン店(写真)をオープンしました。

これまでの人生ではチャリティオークション業界で腕を鳴らしてきたコオピさんでしたが、次なる新たなチャレンジは「市内に存在しないドッグカフェを作る」ということでした。しかし夢の実現にはいくつか工夫が強いられました。

まずは入り口。うっかりとしている間に犬が勝手に通りに逃げ出さぬよう、頑丈な二重構造の入り口にしました(外側と内側のドアの間に小さなスペース=ベスティビュールあり)。一つのドアが開いている間、もう一つのドアが開かない仕組みになっています。

またドッグカフェにとって最大の難関は、食品衛生に関する市の規則に準ずることでした。N.Y.市保健精神衛生局は、市内の食べ物を提供する飲食店に客が犬を連れて入ることを、基本的に禁じています(フードを提供していないカフェやバーは外エリアは連れ込みOK)。そこでコオピさんとローガンさんが頭を捻ったのは、店舗を「仕切る」ということでした。

「こちらの店舗は単にドリンクだけ。何か食べたい人は向こう側の店舗でオーダーするシステムです」。コオピさんは右側の店鋪スペースを指差しながらそう説明します。

このカフェの店舗スペースが二手に分かれているのはそのような理由から(入り口を入ると小さなスペース=ベスティビュールがあり、さらにそこから右と左の店舗スペースに分かれている)。右の店舗では食べ物をオーダーでき、サンドイッチ(10ドルより。約1490円~)、グレインボウル(16ドルより。約2390円~)、グリルドチーズ(13ドルより。約1940円~)などの軽食が楽しめます。

左のより広い店舗(冒頭写真)は犬の放し飼いOKのカフェスペースで、ここではリーシュを外して犬を自由に遊ばせることができるんです。そのほか、店内では犬用のトリート(5ドルより。約746円~)、店内キッチンで手作りされた犬用スウィーツ(ドーナツ3.50ドル、約520円、カップケーキならぬ子犬用パップケーキ2.75ドル、約410円など)、犬関連のグッズ(リーシュ、犬用のバンダナ、マグカップ、キャップ)なども販売。とにかくここでは「犬」が主役です。

リーシュ58ドル(約8800円)など、おしゃれな犬グッズも充実しています。(c)Kasumi Abe
 

衛生面では、店のスタッフが常に様子を伺いケアするためいつも清潔な状態で、ペット独特の臭いなどはしません。たまに犬同士がエキサイトして諍いが起こることはあっても、すぐに飼い主そしてスタッフが仲介に入るので問題はないと言います。定期的に季節のイベント(ハロウィンパーティーなど)、アダプション(里親)イベント、コメディイベント、そして犬の誕生日パーティーも開かれ、いつも犬好きで賑わっています。

もちろん犬なしでの来店もOK。旅行でN.Y.に行くことがあれば、ドッグカフェもぜひ訪れてみてください。自由に行き来する楽しげな犬が微笑ましく、和やかな気分になるスポットです。

犬専用の総菜屋さん

オープンキッチンで手作りされた新鮮な惣菜、冷凍食品、トリート、サプリメントが売られています。(c)Kasumi Abe

「愛犬にもずっと健康で長生きしてほしい」。愛する犬と生活を共にする人なら誰もがそう願っていることでしょう。アメリカの都市部では健康志向の高まりと共に、ドッグフードやキャットフードも加工食品や精製されたものを避け、新鮮で健康的なホールフードを与えたいと考える人が増えているようです。そのようなヘルスコンシャスな層に高く支持されているのが、犬専用の総菜屋さん、ジャスト・フード・フォー・ドッグス(Just Food For Dogs)です。

その人気の理由の一つは、同店で販売するすべてのフードが店内のオープンキッチンで手作りされたもの、もしくはカリフォルニア州とデラウェア州の自社キッチンで手作りされたものだから。保存料など添加物は不使用で、世界標準となっているペットフードの栄養基準を定めているAAFCO(米飼料検査官協会)の基準を満たしたものと発表されています。

創業者のショーン・バックリー(Shawn Buckley)さんがこの店を作ったきっかけは、愛犬のサイモンの里親になった後、市販のドッグフードに保存料や怪しげな原材料が使われ、その安全基準がいかに独自の業界ルールで成り立っているかを知ったことからだそう。ショーンさんは「現実」を知りショックを受けたと同時に、サイモンには栄養バランスの取れた健康的なフードを手作りしようと決めたそうです。獣医の協力のもと、2010年に初の「犬用の餌を作るセントラルキッチン」を立ち上げました。カリフォルニアから全米に支店を拡大中で、N.Y.市内にもいくつかあります。

店のショウケースに並んでいるのは、店内のオープンキッチンで調理された新鮮な“ヒューマングレード”(人間用とも言えるほど高品質)の惣菜(ドッグフード)です。「愛犬に出来るだけ健康的な食べ物を与え、少しでも長生きしてほしいと考える人々に支持されています」とスタッフ。

人間の食事並みにバラエティ豊かで、気になる値段はビーフ&ポテト(11.29ドル、約1700円)、チキン&白ご飯(10.29ドル、約1550円)、魚&スイートポテト(10.29ドル、約1550円)、ラム&玄米(12.29ドル、約1850円)、ターキー&全粒粉マカロニ(9.79ドル、約1480円)など(すべて18オンス=510グラムの料金)。

ドッグフードのほかにも、手作りのキャットフード(猫の餌)、犬専用のトリート(おやつ)や栄養サプリメントなども(サプリメントは、関節の不具合に良いとされるコラーゲン入りカプセルが55グラム入りで53.29ドル(約8000円)など)。

犬専用のスウィーツ専門店も

市内には、犬専用のスウィーツ店、リトルL's ペットベーカリ&ブティック(Little L's Pet Bakery & Boutique)などもあり、ここでは犬用ケーキ、ワッフルやチョコチップクッキーならぬ「ミートチップクッキー」、カップケーキならぬ「パップケーキ」などが売られているんですよ。

このようにN.Y.には「犬天国」とも呼べるさまざまなサービスやスポットが点在しています。旅行の際は、犬好き&猫好きの大切な人へのお土産選びにもオススメです。

【店舗情報】
Boris&Horton
195 Ave A., New York, NY 10009
TEL:  212-510-8986

510 Driggs Ave., Brooklyn, NY 11211
TEL:  212-320-2226
https://borisandhorton.com


Just Food For Dogs (NYC UES store)
2025 Broadway, New York, NY 10023
TEL: 332-205-7888
https://justfoodfordogs.my.site.com/jffdcommunity/s/

 

Little L's Pet Bakery & Boutique
311 Atlantic ave, Brooklyn, NY 11201
TEL: 347-422-0560 
https://www.littlels.com/