驚愕の事実!儲かったらアウト!な相続すると怖いビットコインの話
監修・ライター
あなたがもし、巨額の資産を相続できたとしたら、どうですか?「そんなの嬉しいに決まっているじゃないか!」と思われるかもしれませんが、実はそうでもないかもしれません。例えば、もしあなたが100億円位のビットコインを相続したら、ほぼ間違いなく、自己破産です。いえ、自己破産以上に最悪な状況が待っています。それはなぜでしょうか?
本日は、相続すると怖いビットコインの話についてお伝えします。
ビットコインの特徴
仮想通貨の代表として多くの方がご存知のビットコインには、大きく3つの特徴があります。
- 他の資産と比べ、かなりのスピードで価格が上がり続けている
- 短期的に見ると値動きが非常に激しい
- 売却益は雑所得となるため、高い税率で課税される
ビットコインは、登場したばかりの2010年には1万ビットコインあたり4500円でしたが、2025年の1月12日には、なんと1万ビットコインが約1500億円にまで高騰しています。ですが、毎年のように暴落を続けており、「暴落→高騰」を続けながら、現在に至っています。
つまり、あまりにも値動きが激しいため、売り時を見つけるのが非常に難しいのです。
それに加え、ビットコインで得た利益は雑所得となるため、最高で約55%の税金が課税されてしまい、儲かっても手取りが半分以下に減ってしまいます。
こうしたことから、日本のビットコイン長者の多くは、売り時が掴めずに売りたくても売れない「塩漬け」の状態にあるとも言われています。
つまり、ビットコインは株式と同じ資産ではあるものの、儲かれば儲かるほど売りにくくなるという特徴を持った資産であると言えます。
これが、ビットコインを相続する際の悲劇を生む土壌となっているのです。
ビットコインの税制を巡る問題点
ビットコインを持っている人が亡くなると、基本的にはそれを誰かが相続します。そして、ビットコインに限らず、相続した遺産が巨額になればなるほど、納めるべき相続税も巨額になります。
手元の預貯金などで納税できるのであれば構いませんが、相続税が高額になるとそういうわけにもいきません。
従って、巨額な土地や株式などを相続した場合は、その一部を売却し納税資金を捻出しないといけない人も多くいるわけです。
取得費加算の特例
土地や株式などの資産を売却したら、以下の算式に基づいて譲渡所得を算出し、それに応じた税金を納めなければなりません。
譲渡所得=収入-(取得費+譲渡費用)
「収入」とは、その資産を売却して得た資金のことです。これに対し、「取得費」とは、その資産を買った際に支払った費用のことです。相続した財産を売る場合であれば、亡くなった方が実際に購入した際に支払った費用が、取得費となります。最後に「譲渡費用」とは、不動産業者や証券会社などに支払う、売却の際の手数料のことです。
従って、相続税を納めるために相続した資産を売却すると譲渡所得が発生するため、相続税だけでなく所得税も納めることになります。ですが、それではあまりにも酷すぎると思いませんか?これでは二重課税ですよね?
というわけで、こうしたケースでは売却した資産や納めるべき相続税額に応じた金額を、「取得費に加えて良いよ」という救済制度が設けられています。これが「取得費加算の特例」です。この制度のお陰で、相続税を支払うために売却して得た譲渡所得に関しては、所得税ができるだけ課税されないように定められています。
ですが、この取得費加算の特例がビットコインには効かないため、大問題が生じているのです。
取得費加算の特例が使えないビットコイン
前章でお伝えした算式を、もう一度ご覧ください。あの算式は譲渡所得を算出するための式です。そして、取得費加算の特例は、譲渡所得に関する取得費の特例です。
上述のように、ビットコインの売却で得た利益は、譲渡所得ではなく雑所得に分類されます。従って、ビットコインを相続した場合、相続税を捻出するためにビットコインを売却しても、それは譲渡所得ではなく雑所得です。
そのため、納めた相続税は取得費に加算できません。ですから、ビットコインを相続してそれを売った場合、相続税とは別に所得税が課税されることになります。
では、相続税と所得税の税率はそれぞれどれくらいになるのでしょうか?まずは相続税からです。下の図をご覧ください。
ビットコインに限らず、財産を相続すると以下の表に基づいた税率が相続税として課税されます。
ご覧のように、相続した財産に対して最高で55%の税率が課されます。
次に所得税です。上述のように、ビットコインの売却で得た利益は雑所得に分類され、総合課税によって所得税が課税されます。その際の税率は、以下のようになります。
こちらも所得税45%に住民税10%と復興特別所得税が加わるため、最高で約55%の税率が課されることになります。
ということは、最高税率となる以上の含み益を抱えたビットコインを相続すると、相続税として55%、それを売却した時に55%の所得税が課税され、合計110%という相続財産以上の税金が課税されてしまうのです。
そのため冒頭で述べたように2010年に購入した1万ビットコインをもしあなたが相続した場合、約1,500億円の財産を相続することになりますが、合計で110%の税金が課税されるため相続したすべてのビットコインを売却した上にさらに150億円(=1500億円×10%)近くは現金で用意しなければなりません。
もちろんそのようなお金はほとんどの人が用意できないでしょうから自己破産するしかありません。ですが、自己破産しても税金は免除されないため、税務署から一生取り立てられ続けることになります。
これを防ぐには相続放棄しかありませんが、1500億円もの価値があるビットコインを相続放棄しないといけないなんて、どうかしていると思いませんか?
ちなみに、相続人が相続放棄をすると、裁判所によって選任された管理人がビットコインをすべて清算(現金化)し、国庫へ納付します。また、亡くなった方がビットコイン以外に家や土地などの財産を持っていたとしても、相続放棄をするわけですから、これらの財産も一切相続できなくなります。
改正に向けて動き出すか
ビットコインなどの暗号資産を巡る現在の税制は、このように大きな問題を抱えていますが、その解決に向けて大きな一歩が踏み出されました。自民・公明両党によって令和6年12月20日に決定した「令和7年度与党税制改正大綱」では、「暗号資産取引の課税の見直し」に関する内容が以下のように定められたのです。
『暗号資産取引に係る課税については、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、上場株式等をはじめとした課税の特例が設けられている他の金融商品と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制などの必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する。』 金融庁「令和7年度税制改正について」
まだまだ「検討」段階ではありますが、ビットコインなどの仮想通貨に関する税制については、見直しに向けた話し合いが行われることになりました。
1月20日に米国大統領に就任するトランプ大統領は、就任前から「アメリカをビットコイン超大国にする」と宣言しています。今後は、ビットコインの取引がさらに活発に行われることが想定されるだけに、できるだけ早く税制改正に向けた話し合いに取り組んでもらえることを望みます。