アメリカZ世代の投票率や選挙への関心は?最新の米選挙事情を解説
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日本では7月、参院選が行われました。18歳選挙権が初めて適用されたのは2016年参院選ですが、Z世代の政治への関心の低さが以前より指摘されています。ではアメリカのZ世代はどうでしょうか。今回は米国でもっとも注目を集める大統領選をめぐる動きも含めてお伝えします。
Z世代の低い投票率、参院選で顕著
日本では参議院選挙が7月20日に投開票され、日本の各メディアにより自民党の「歴史的大敗」が伝えられました。
これからの時代を担う若い有権者の投票率はどうだったかというと、18歳と19歳の投票率(選挙区選)は抽出調査で41.74%(18歳は45.78%、19歳は37.63%)だったと発表されています。これは前回2022年参院選の35.42%から6.32ポイント上昇しています。しかし今回の全体の投票率の58.51%と比べると16.77ポイント下回った結果です。
選挙のたびに指摘されるのが若者による投票率の低さです。18歳選挙権が初めて適用されたのは16年参院選からで、その時の18・19歳の投票率は46.78%(全体投票率は54.70%)でした。総務省の資料を確認しても、若年層の投票率は全体の投票率を大きく下回っていることがわかります。
若者は政治参加への行動に繋がりにくいと言われています。理由は様々でしょうが、一つには政治家を信頼できないなど「政治不信」や「政治的無力感」があるとの指摘も見られます。
米・Z世代の投票率は?
アメリカには大統領選・中間選挙、州知事選・市長選などさまざまな選挙の種類がありますが、もっとも盛り上がるのは4年に一度の大統領選挙です。直近では2024年が記憶に新しいでしょう。
Census(米国勢調査局)によると、24年の全体の投票率は65.3%(1億5400万人)でした。20年より1.5ポイント下回ったものの、過去44年間で3番目に高い投票率を記録したと伝えられています。
Z世代の投票率について、CIRCLE(タフツ大学市民学習・参加情報研究センター)の調査によれば、18~29歳の有権者では、ほぼ半数近い47%が投票したことがわかります。20年の50%よりは低く16年の39%よりは高い投票率でした。全体の投票率に比べて若年層の投票率が歴史的に低い水準にあるというのは、日本と状況が似ています。
ただしアメリカでは性別・人種別・州別などにより政治的志向が異なる傾向があります。特定のグループ間での格差が依然として存在することから、「一枚岩の若い有権者」として一括りに説明できるほど物事はシンプルではありません。
それを踏まえてあくまでも一つのデータをもとにした「傾向」として話すならば、24年の大統領選の若年層の投票率は、白人が55%と高く(特に白人女性は58%)、黒人男性は25%と、人種と性別による格差が顕著です(ちなみにアジア系は43%、黒人34%、ラテン系32%)。
州ごとの違いもあります。若者の投票率が高かったのはミネソタ、メイン、ミシガンと北部にある州で、低かったのはオクラホマ、アーカンソー、ルイジアナと南部の州でした。18・19歳の若年層の投票率に絞ると、18~29歳の有権者より6ポイント低い41%でした(18・19歳に限って言えば、日本の7月の結果とほぼ同じ数値)。
若年層の投票への参加促進が課題であるからこそ、候補者にとってそのような層の支持を取り込むことは勝利へのカギの一つになります。何より若い人々の政治的思考はInstagramやTikTokなどで流れてくる情報に左右されやすいため、この層の投票率を引き上げる試みとして、近年の大統領選ではSNSやポッドキャストを活用し、インフルエンサーやセレブとのタイアップが行われます。加えて大学のキャンパスやダンスパーティーなどでも選挙運動が展開されます。トランプ氏は若い有権者の傾向を知るために、10代の末っ子バロン氏にアドバイスを求めたといいます。
『ティーンヴォーグ』によると、24年の若年層の投票はトランプ氏よりハリス氏への支持がより多かったが、若い男性有権者はトランプ氏を支持し、有色人種の若い女性有権者はハリス氏を支持する傾向が見られたそうです。中絶へのアクセスを含む女性の権利がこの年の大統領選の争点の一つだったのも関係あるかもしれません。
今後は2026年に中間選挙が控えています。中間選挙は通常、大統領選に比べて投票率が低くなる傾向があります。
日本とは比にならない莫大な資金
アメリカの選挙で話題になりやすいのは「資金」もそうです。特に大統領選ともなれば莫大なお金がかかることで知られています。
24年の大統領選の調達資金を伝えた『フォーブス』によると、ハリス&バイデン陣営が23年1月から24年10月16日までに調達したのはなんと9億9720万ドル(約1471億円)にも上ったそうです。トランプ陣営は3億8800万ドル(約573億円)でした。残った手元資金はそれぞれ1億1800万ドル(約174億円)と3620万ドル(約53億4500万円)。このような数字を見ても、日本の国政選挙とはケタ違いの差があると言わざるを得ません。
これほど膨大な資金が必要なのは近年、宣伝広告費が拡大しているからです。候補者は自身の政策やこれまでの実績をアピールするため、時には対立候補へのネガティブキャンペーン(批判するような広告)のために、伝統的にテレビコマーシャルをPRとして使ってきましたが、近年はネットメディアやSNSの普及で、それらの広告にも膨大な資金を投入しています。
ほかに、スイングステーツ(共和党・民主党の支持率が拮抗し、ここでの勝利が大統領選の行方を左右するとされる州)を中心とした各地域で開催される遊説集会などの運営費、移動費、投票促進(票の掘り起こし)のための戸別訪問・電話・SMSなどに必要な人件費にも多額の資金が必要です。各州の予備選挙を経て党大会(党ごとの大統領候補指名をする場)までの選挙期間が長期にわたることも、莫大な資金が必要になる理由の一つです。
資金が潤沢にある候補者が有利なのは間違いないですが、これだけの大金を投入しても勝利できる確証がないのは、これまでの歴史が物語っています。大統領選直近4回のうち2回は資金力がより多かった候補が敗北しています。2016年のクリントン候補と2024年のハリス候補です。
このように「お金がないと民主主義のレースでそもそも戦えない」がアメリカ選挙制度の現実ですが、加えて「膨大な資金が勝利を約束するとは限らない」ことも付け加えておきます。