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mymoで「おほまんが」を連載中のお笑い芸人・おほしんたろうさん。一見ゆるい絵に、ピリリと込められたブラックユーモアに、思わずクスリと笑わされている人も多いのでは? ふだんどんなふうにネタを考えているのか、創作の秘密を知るべく、取材を敢行! おほさんは「こんにちは」と、街に溶け込む普通のお兄さんの姿で現れた。
Q. いつも楽しく読ませていただいています。「おほまんが」は、いったいどんな時に生まれるのですか?
自転車をこいでいたり、お風呂に入っていたり、半分ぼーっとしながら、半分考えている状態の時に浮かんでくるみたいです。机に向かって構えていると、なかなか浮かんでこないんですよね。どんなものを取り上げるかですか?テレビで見かけたシーンをきっかけに思いついたり、みんなに共通する学校や会社などの定番シチュエーションから考えたり。
描く時は、自分なりの仕事道具があって、紙はセブンイレブンで買える「いつもの普通紙」のA4サイズを半分に折ったもの。ペンは呉竹というメーカ−の筆ペン「すらら」。
これはなかなか見つからないので、見つけたら買い占めてストックを増やしています。喫茶店やカフェなどで仕事の合間に描いていることも多くて、先日はおばあさんに「あなたマンガ家さん? ステキねぇ」なんて声を掛けられました。自分でも芸人なのかマンガ家なのか定かじゃなくて、「えぇ、まぁ」とあいまいに返したり(笑)。
Q. おほさんの、ちょっとシュールな笑いのルーツはどこにあるのでしょうか?
高校生からずっとやっていた、雑誌への読者投稿が原点です。
その雑誌は投稿のクオリティが異様に高くて、不条理なお笑いがどんどん掲載されていました。僕もその「意味がわからないことに片足突っ込んでいるけど、なんだかおもしろい」ことに夢中になって、授業中も通学中もずっとネタを考えて、毎月何十通も投稿のハガキを出していました。
大学では落語研究会で、漫才をやっていました。これも、シュールでメチャクチャなのがおもしろいという、若気の至り(笑)。例えばおぎやはぎさんみたいに、王道から外れてぶっとんだことをやる人たちへの憧れが強くありました。
Q. その後、福岡で芸人となられますが、いつから今のようなマンガを使ったスタイルが仕事になったのですか?
ちょうどお笑いの世界にも、地方から発信してもいい雰囲気が生まれた時期でした。お笑いって本当に恐ろしい世界で、おもしろい人しか存在してはいけない空気がある。しかもやってみたら、自分があがり症だってことがわかって(笑)。その中で東京や大阪に殴り込む勇気はなく、いま所属している事務所が福岡に進出するタイミングに、「福岡だったら大丈夫だろう」と甘い考えで、ぬるりとこの世界に入りました。
最初はまさか自分のマンガが仕事になるなんて考えていませんでしたが、先輩から「そこが大きな特徴なんだから、もっとマンガを描いたら?」とアドバイスを受けて、イラストを使ったフリップネタをやり始めました。すると、「演じるのがうまいか、絵にした方がおもしろいかの違いで、ネタのおもしろさ自体は共通しているんだな」と分かり、絵が武器になってきました。
Twitterでもイラストのネタをあげ始めたら、どんどんフォロワーやリツイートが増えてきました。ある時HKTの指原さんがぼくのネタをリツイートしてくれて、一気にフォロワーが3万人に。人気者の力を思い知りました(笑)。
そこからは、イラストネタを集めたものが本として出版されるなど、自分が思っても見なかった展開に。マネタイズなんて考えず、おもしろがってくれる人の反応がうれしくてTwitterをやっていただけでしたが、自分が思ってもみなかったところが強みにつながった感じです。
Q. mymoではお金に関するマンガを描いていただいていますが、おほさんのお金にまつわるエピソードを教えてください。
実はぼくは、事務所に入るときのオーディションで優勝して、100万円をもらいました。で、何に使ったかというと、ちょうど大学を半年留年してしまっていて、学費と生活費に。パーッと使うのには、向き不向きがあるなと感じた出来事でした(笑)。その後「お笑い芸人たるもの、ストイックにバイトをせずに稼ごう」と考え、焼酎のフタでバッジを作って、路上で売ろうとしたこともありますが、まったく売れず、材料費のほうが高くついて赤字のまま、あえなくフェイドアウト。お金を稼ぐって本当に難しいですよね。
芸人の間では、先輩が後輩にごちそうするという文化が根づいています。最近やっと後輩に「ハンバーグに、なんだったらチーズトッピングしたら?」と言えるようになって、ようやくここまで!と感慨深いです。
Q. 最近印象に残っている「買ったもの」ありますか?
うーん…。あ、最近買ったものがムダになりました。絵を仕事にしていることだし、いよいよここらでデジタルデビューだと、iPadとApple Pencilを買ったのです。が、アプリが全然使いこなせなくて、いまやドラマ「ウォーキング・デッド」鑑賞のための専用機に。いや、使いこなせたら、もちろん便利だと思うんですけど…。結局紙と筆ペンに戻りました。
Q. これからの野望を教えてください
せっかく世界に通じる「絵」を持っているのだから、2020年の東京オリンピックまでには、世界に通じるネタを作ってみたいですね!
プロフィール
1985年佐賀県出身。2015年11月「おほまんが」をKADOKAWAより出版。サガテレビ「かちかちPress」、福岡放送「バリはやッ!ZIP!」、ラジオ番組「RKBラジオ「こりない二人」などに出演。NHK大河ドラマ「西郷どん」データ放送で、1コマ漫画「モウ想せごどん」連載中。