カフェ×ギャラリーという空間に込めた想いーTAG STÅ 橋口靖弘さん
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カフェ×ギャラリーという空間に込めた想いーTAG STÅ 橋口靖弘さん

my story

福岡市春吉にあるコーヒースタンド&ギャラリー「TAG STÅ(タグスタ)」のオーナー・橋口靖弘さん。

2000年頃に起きた福岡のカフェブームを牽引し、今もバリスタとして、また若手アーティストの作品を発信するキュレーターとしても活躍中。地域のカルチャーシーンになくてはならない存在である橋口さんに、これまでの歩みとこれからの展望を聞いてみた。

Q. 橋口さんにとって、人生のターニングポイントは?

大学卒業後、東京の外資系コンピューターメーカーで6年ほど営業マンをしていました。当時は億単位のお金を動かしていて、そこそこやり手の敏腕営業マンだったと思います(笑)。でも28歳のときに、あと10年後、自分がどうなっているのかをふと考えたんですよ。このまま会社勤めすれば、ステップアップして地位も年収もそれなりに上がっているだろうけど、ぬるま湯につかっていそう……それじゃダメだ! と思ったんですよね。

ここが大きな岐路だったと思います。

Q. IT企業の営業マンがカフェを選んだ理由は?

Q. IT企業の営業マンがカフェを選んだ理由は?

外資系のIT企業だったので会社に専用のデスクがなくて、日頃からよくカフェにパソコンを持ち込んで仕事をしていたんですよ。その中にお気に入りのカフェがあり、居心地が良くて大好きでした。

ただ、好きなお店や行く店はあるけど、理想とするカフェにはまだ出会えていない。だったら自分で作ってしまえ! と思って(笑)。当時まだ28歳で未熟者でしたが、そんな中でも「自分が思い描く最上のカフェを作りたい!」という強い思いが芽生えました。

それが形になったのが、2003年にオープンした「ダーラヘストカフェ」。北欧の雑貨とカフェのお店でした。今でこそ「北欧」が認知されていますが、当時はインターネットで調べても「北欧」の情報が出てこない。

現地の料理レシピなんて、なおさらでした。だから、カフェのメニュー開発のために北欧の国々へ渡り、そこにいるおばあちゃんに直談判して、伝統的な家庭料理を教えてもらっていましたね。現地の食材も出回ってないから、自分たちで買い付けて……。そこが一番大変だったかな。

Q.  開業資金はどのくらい?どんな準備をしましたか?

Q.  開業資金はどのくらい?どんな準備をしましたか?

カフェをやろうと決めてから集中して1000万円くらい貯めて、創業融資制度も申請したので、開業資金は合計約2000万円だったかな。内装費はもちろん、雑貨の買い付けのコストも大きかったですね。

退職前は東京でバリバリ働いていたし、当時若かったから、「店の立ち上げで借金しても、3年間で返せるだろう。やってみてダメでも、またやり直せる」なんて思ってました(笑)。そして、福岡で軌道に乗ったら東京に進出しようというビジネスプランも。

けれど、福岡でお店を始めて、いろんな人に出会って、「お金儲けが全てではない」と実感。僕にとっては、人とのつながりこそが財産だと感じました。

Q. どんな思いで、カフェ×ギャラリーの「TAG STÅ(タグスタ)」を始めたのでしょうか?

Q. どんな思いで、カフェ×ギャラリーの「TAG STÅ(タグスタ)」を始めたのでしょうか?

「早朝から営業」「立ち飲みコーヒー」「ギャラリー併設」「カルチャー発信地」。そんなエスプレッソバー、他になかったからかなり珍しがられました。けれど、特にトリッキーなことを狙ったり、流行らそうと思ってやり始めたわけじゃないんです。

自分がいいなと思うモノ・コト・空間に、どのくらいの人が共感してくれるのかを確かめたかったのかもしれません。このエスプレッソスタンドの「TAG STÅ」も、奥のギャラリーで展示する作品も、「こういうのっていいよね! 間違いないよね!?」という確認作業の意味合いが大きくて、結果的に多くの人に賛同してもらったように感じます。

Q. 橋口さんにとっての「自己投資」とは何ですか?

20代は、洋服や趣味のバイクにガンガンお金をつぎ込んでいました(笑)。30代は身の回りのモノの質にこだわって、ライフスタイルをブラッシュアップさせたり、内面と外面を磨くために自己投資していたかな。40代になってお金をつぎ込む頻度は減りましたけれど、自分の経験を積むために海外一人旅に力を入れました。10代、20代、30代の頃からよく行ってたんですが、だんだん着眼点が変わってくるのが楽しくて。自分の力だけで未知の世界にサバイブするのって、たまには必要!

今はインターネットでいくらでも情報を引き出せるけれど、結局自分の頭に残らないことも多いですよね。でもその場に行って、見て、触って、経験することで、クラウド上ではなく自分の中にインプットされます。現代社会を生きる若者にも、「ネットに頼らず、自分の経験で切り開くことが大事だよ!」って強く言いたいですね。

Q. ブレずに自分がいいと思ったことをやり続ける、その心得は?

「我慢」でしょうか。パイオニアみたいに他の人よりも半歩先のことをやっているので、“わかる人にはわかる”けれど、大多数には認知されていない。だから人が来るまでひたすら待つ我慢強さと、トレンドや時代に飲み込まれない芯の強さが大事。

手を変え品を変え、人にウケるために方向転換するくらいなら、いっそのこと辞めた方がいい。僕ならね。

Q. これからの展望を聞かせてください。

妻と2人で経営しているカフェ「trene(トレネ)」(福岡市警固)がまもなく10周年。これを機に、今まで培ってきた料理や人と人のつながり、いろいろなものをアウトプットできる店を来年春にオープンします。チーズケーキとカレーの専門店で、これまでずっと考えながら温め続けてきたお店です。乞うご期待!

TAG STÅ 橋口 靖弘

TAG STÅ 橋口 靖弘

1974年生まれ、佐賀県武雄市出身。大学卒業後、外資系IT企業に入社し上京。28歳の頃、第二の故郷・福岡でカフェを立ち上げるためUターン。2003年に北欧雑貨とカフェのお店「ダーラヘストカフェ」(現在は閉店)、2012年にギャラリー併設のコーヒースタンド「TAG STÅ」をオープン。

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