花だけじゃない。“今、ここにしかないもの”が手に入る場所「花屋マウンテン」
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花だけじゃない。“今、ここにしかないもの”が手に入る場所「花屋マウンテン」

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白い布カーテンが半分ほど閉まり、看板は花の形のネオンのみ。店主自らが認めるほど入りにくいお店「花屋マウンテン」。取材中も、ガラス窓越しに「ここなんのお店なの?」と言わんばかりに店内をのぞき込む疑問の視線に何度もぶつかった。「敢えてそうしている部分もあるかもしれません」と笑う店主の繁森さんにお話を伺った。

Q. 「花屋マウンテン」を始めたきっかけは?

Q. 「花屋マウンテン」を始めたきっかけは?

僕は山などの自然の中で過ごすのが好きだったんですが、当時勤めていたところはそれとは真逆の環境。無菌室の状態で休憩に行くたびに毎回作業着を着替えてエアシャワーを浴びないといけないようなところでした。

ある日、休憩から職場に戻るときにふと空を見上げたら、すごくいい天気だったんです。こんな日は外でのんびりしたいのに、自分は人が生きていくのに不自然な環境に戻ってパソコンに向かわなくちゃならないのかと。ナチュラルなことが好きなのに、1週間のうち5日間我慢して働いて、2日間イオン浴びる生活って逆なんじゃないの?とふと思ったんです。

じゃあ、そういう生活を送れるように、自分で何か始めよう、何がいいかなと考えて。まず自分のしたいこと、できることを書き出して「自然に触れられて、自分のセンスを活かしてオリジナリティが出せるもの」を取捨選択していったら、それが「花屋」でした。

もともと花には全然興味がなかったんですが、一度意識すると、街中の花屋さんや、映画の中の花まで目に留まるようになって。世の中が変わらなくても、自分の意識が変わると、世界を見る目がガラリと変わるんだと知りました。

その後、33歳で会社を辞め、3年間いろんなタイプの花屋さんで修業を積んで、36歳の時にこの店をオープンしたんです。

Q. 開業にかかるお金は、どう準備しましたか?

自分がイメージしていたお店は、昔ながらのわざとらしくない古い家屋の雰囲気がある空間。物件探しから始まりましたが、最終的にサラリーマン時代の貯金で十分賄えました。

物件の改装は自分で行ったし、サラリーマン時代に付き合いのあった設備業者さん達がとてもよくしてくれたので、かかった費用は数十万円程度でした。花瓶や什器も同じくらいかかったかな。実は一番費用がかかったのは車なんです。仕入れや配達で車が必要だったので、軽のバンを購入しました。

Q. でもこのお店、ちょっと入りにくいですよね?

Q. でもこのお店、ちょっと入りにくいですよね?

気持ちの中ではウェルカムなんですよ(笑)。でも、オープンしているのにカーテンを閉めていることもあります。そのほうが、光の感じがお店の中から見て、すごくキレイだったりするんです。

もちろん中に入らないと分からないので、それでも入って来てくださった方には「よく来たね!」という感じです。ハードルが高いかもしれませんが、だからこそ行ってみたくなる、ということもあると思います。それぞれ好みや相性もありますし、ネオンの看板とか、このお店の外観を見て来てくださる方は、ここに置いてある花もタイプなんじゃないでしょうか。

Q. 品揃えやディスプレイもとても個性的ですが、どこからどこまでが商品なんでしょう?

よく言われますが、ほとんど全部売り物です。自分でいいと思ったものだけをセレクトして置いています。

まるでコンビニエンスストアみたいに、いつでもどこにでもあるものって不自然だと思うんです。自然のものなんだから、季節で商品のある・なしが変わるのは当たり前だし、他のどの花屋でも手に入るものだとつまらない。うちにわざわざ来てくださるお客様には、この店でしか手に入らないものをお届けしたいと思っています。

市場で買うと同じようなラインナップになってしまうので、自分で育てたり、山を持っている方にお願いして採らせていただいたりしたものを店に置いています。だから、他のお店には絶対にないし、同じものもありません。毎年8月は丸ひと月お休みをいただきますが、その時には日本中を回って、いろいろなものを集めてきます。

「これ買ってどうするのかな?」と僕も思うことがありますけど(笑)、すべての商品は僕がよかれと思って置いているものなので、そのセンスを信頼して買ってくださるお客様がいらっしゃることが嬉しいです。

【写真:この石も実は全て売り物。海外旅行に行く知人に「石を拾ってきて」と頼んだりもするそう。中にはカナダやグァテマラからやってきた石も。】

Q. 実際に花屋を始めてみていかがですか?理想と現実とのギャップは?

Q. 実際に花屋を始めてみていかがですか?理想と現実とのギャップは?

会社員時代とは、比にならないくらい楽しいです。会社員の頃は安定した収入もありましたし、欲しいものも手に入るけれど、それって自分にとってそんなに重要なものじゃなかったんです。

山に登ったり、キャンプをしたりするときと同じで、生きていくために本当に必要なものの量って実はそんなに多くない。僕は真面目に仕事をして週末思いきり遊ぶんじゃなくて、遊びを仕事にした感覚なので、この仕事を始めてきつかったことはありません。

今お店は7年目ですが、オープンした当初SNSがちょうど流行り始めた時期だったので、おかげさまでこういう店が好きな方達がどんどんUPしてくださって、宣伝らしい宣伝もせずに楽しく運営させていただいています。

Q. 2階の喫茶店では、変わった試みもされているんですよね?

Q. 2階の喫茶店では、変わった試みもされているんですよね?

「Qch(キューチャンネル)」という不定期の座談会を月1~2回、土曜日の夜19時から21時までやっています。
よく、キャンプとかに行ってテントで寝ていると、「好きなヤツ誰?」みたいな話になるじゃないですか。普段話さないことも今ならなんだか話せる、みたいな。この花屋も非日常的な空間なので、そうやってコミュニケーションをとるのが当たり前みたいになってきて。最近では行き過ぎて座談会まで開くようになっちゃいました(笑)。以前開催した「お金とはなんだと思いますか?」というテーマの回では、参加者のみなさんでお金に対する考え方をシェアすることで、新しい発見もありましたよ。

Q. これから先、どんなことをしていきたいですか?

座談会「Qch」を電波に乗せてみたいです。実際に来るのは難しいという方もいらっしゃるので、せめて様子を見たり聞いたりしてもらえることができればと思っています。座談会に参加しているのはインスタなどで募集した一般の方々で、偉い人が正論を言っているわけでもないし、普段親しい人にはかえって聞けないこともこの場ならいろいろ聞ける。テーマもまだたくさんありますし、本当は毎週やりたいくらいです。

本当は、みんな自分の考えていることツイートしたりして言ってるつもりになっているけど満足できているのかな?と思うんです。SNSで全世界に発信しているのに、隣にいる人とはどうして喋らないんだろうと。面と向かって話をするのは責任もあるし、勇気もいるけれど、それが本来の自然な姿だと思います。座談会の様子を電波に乗せることで、いまのこの時間「Qch」やってるから聞こうかな?って思う人が増えて、少しずつつながりや新しい考え方が広がっていくと面白いですね。

花屋マウンテン 繁森 誠

花屋マウンテン 繁森 誠

1976年生まれ、福岡県出身。会社員生活を経て、33歳で花屋としての人生をスタート。36歳のときに「花屋マウンテン」をオープン。「好きな自然に囲まれて、好きな時間においしいコーヒーを飲む」というシンプルな願いのもと、ユニークな品揃えと試みで、多くの顧客の心を掴んでいる。

花屋マウンテン
福岡県福岡市中央区平尾3-5-1
TEL 092-791-3387
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