全国に残る「地方番茶」の魅力。未経験から専門店をおこした店主の想いは?
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全国に残る「地方番茶」の魅力。未経験から専門店をおこした店主の想いは?

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周りに飲食店等も見当たらないのどかな住宅地の中、軒先に白い暖簾がはためく日本家屋が一軒。遠方からわざわざ買いにくる方もいらっしゃる、こだわりの日本茶が並ぶ「茶舗ふりゅう」だ。珍しい番茶専門店を営む店主の池松さんに、その思いを伺った。

Q. 珍しい「番茶専門店」ですが、そもそも“番茶”とはどんなお茶のことですか?

Q. 珍しい「番茶専門店」ですが、そもそも“番茶”とはどんなお茶のことですか?

自分の考える「番茶」は、それぞれの地方で昔から親しまれているいわゆる「地方番茶」と呼ばれるお茶のこと。よそから見たら珍しいけれど、地域の方には昔からなじみのある、郷土料理のような存在のお茶です。

おばんざいとかばん傘とか、「ばん」という言葉には普段使いという意味があります。お茶と聞くと「茶の湯」を思い浮かべる方も多いと思いますが、今自分たちが飲んでいる緑茶が流通する前から、庶民の間ではその土地ならではのお茶を楽しむ習慣があったんです。日本各地を回ってそういった地方番茶を仕入れたり、九州の素材を使ったオリジナルブレンドのお茶を作ったりして販売しています。

【写真前列中央:バタバタ茶/黒茶を煮出し、バタバタと音をたてながら茶筅(ちゃせん)で泡立てていただくお茶。昔は塩をちょっと入れて混ぜていたそう。(30g 500円) 前列右端:乳酸菌発酵茶/漬物のように茶葉を漬け込んで発酵させたもの。独特の酸味があり、今は健康茶としても人気。元は茶粥などを炊く際に使われていた。(40g 2200円)】

Q. 「番茶専門店」をやろうと思ったきっかけは?

Q. 「番茶専門店」をやろうと思ったきっかけは?

僕はもともと音楽を学んでいて、将来は音楽を楽しみながら人が集まれるカフェバーのような場所を作りたいと思っていました。それならコーヒーや紅茶をお客様に提供することになるので勉強しておこうと考えて、本を読んだり、カフェを巡ったりしていたんです。

コーヒーに比べて紅茶のお店は少ないな…と思っていたときに、佐賀にある和紅茶の専門店「紅葉(くれは)」さんと出会い、お話を聞くうちにどんどんお茶に興味がわいてきました。子どもの頃からお茶はとても身近なものでしたが、それにスポットを当てたお店がないと気づいて。だったら自分がやろうと、この仕事を始めたんです。

Q. 開店資金など、お店を始める前にどんな準備をしましたか?

Q. 開店資金など、お店を始める前にどんな準備をしましたか?

23歳で会社を辞めて、最初は店舗を持たずにお茶の卸業としてスタートしました。まだ若かったし家庭も持っていなかったので、とにかくやってみたいという思いのほうが強くて。開店資金や蓄えもほとんどなく、今同じことをやれといわれたら怖くてできないかもしれません(笑)。

イベントに出店したり、お店に卸したりするうちに、もっとお茶の話をしたり、ゆっくり選んだりできるような店舗が欲しいと思うようになって…。それで2015年の11月にこの店をオープンしました。

この店はもともとは普通の民家で、かなり傷んだ状態でした。それを店舗として使えるように約70万円で業者さんに依頼、壁や天井を整えてもらいました。その後の壁塗りや店舗レイアウトは自分でDIYしました。

物販の店舗としてスタートしたので、水回りの工事や設備などが要らず、飲食店などよりは費用がかからなかったと思います。

Q. まったくの未経験からスタート。順調でしたか?

最初はこれだけで食べていけていたわけではなく、アルバイトをしながら、カフェや小売店などの卸先を増やそうと営業活動していました。

僕はコミュニケーションも特にうまくありませんが、お茶の話ならできます。お茶が好きで、その楽しさをもっといろんな方に広めたいという思いで続けてきました。その後、口コミなどで少しずつお客さまも増えてきて、やっとバイトを辞められたのは今から4~5年前でした。

【写真:たけがや焙ジ茶 /佐賀・武雄と熊本・南関の無農薬栽培レモングラスをほうじ茶に。さっぱりした味わいと爽やかな香りが楽しめる。(30g 847円)】

Q. これにはお金を惜しまない!というものは何ですか?

Q. これにはお金を惜しまない!というものは何ですか?

お茶と急須ですね。今うちで取り扱っているお茶の中で一番高いものは50g 3000円の「風流」という茶葉。

「風流」は樹齢100年以上にもなる在来茶園から採れたものです。挿し木から育てる品種のお茶と違い、種から育てる「在来」は同じ茶園でも1本1本個性が異なり、まるで自然がブレンドしたような味わい深いお茶になります。

全国の茶園面積の2%ほどしかない稀少なお茶で、力強く華やかな香りが特徴です。

それから、常滑焼の平型急須が好きです。急須の本体と蓋がぴったり合っていて、ここまで精度の高い急須はなかなかないんです。陶器は焼くと生地が縮むのでズレが生じることも多く、熟練の職人でも難しいといわれています。

口が広いので、蓋を開けていれば一煎目の湯冷ましができ、二煎目、三煎目は蓋を閉めて冷めにくくできます。茶葉が重なる面も少ないので、一枚一枚キレイに開いて、最後までおいしくいただけます。

ひとつ2~3万円以上するものもありますが、使う人のことを考えて作られていて、おいしいお茶を煎れるためには欠かせないものです。

【写真:常滑焼 平型急須無地鉄色 (磯部輝之作 1万7000円)】

【写真:常滑焼 平型急須印花(磯部輝之作 2万4000円)】

Q. 池松さんの考えるお茶の魅力って何ですか?

Q. 池松さんの考えるお茶の魅力って何ですか?

お茶は煎れ方で味わいが変えられるところが面白いんです。0℃~100℃と幅が広く、熱湯で煎れると香りが立つし、氷水などでゆっくり時間をかけて出すと甘みが増します。

ボトリングした飲み物はほとんど味を変えられませんが、お茶は同じ茶葉から入れても、水の温度や量、抽出時間の違いで、味わいも香りも全く違います。いつでも煎れたてを味わうことができるし、自分の好みを探すのも楽しいですよ。

日本では、お茶って外食したときに「タダで出てくるもの」というイメージがありますが、コーヒーや紅茶を楽しむのと同じように、お金を払ってでも楽しみたい「嗜好品」としてのお茶の魅力を伝えていきたいです。

幅広い楽しみ方をもっとたくさんの方に知っていただけるように、今後はカフェスペースもある店舗を作りたいですね。

※価格はすべて税抜

番茶専門店 茶舗ふりゅう 代表 池松伸彦

番茶専門店 茶舗ふりゅう 代表 池松伸彦

1986年生まれ、福岡県出身。自分の好きな音楽が楽しめるカフェバーの運営準備中にお茶の魅力にはまり、より深く学ぶためにお茶メーカーに転職。休日はお気に入りのお茶やさんに通うお茶三昧の日々を経て卸業として独立し、2015年11月に現在の「茶舗ふりゅう」をオープン。各地に残る、個性的でありながら日常的に愛される“番茶”の魅力を広めるべく、店舗運営のほか、イベントなどにも積極的に参加。じわじわとファンを広げている。

福岡県久留米市津福本町1863-3
TEL:0942-55-8386
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