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お花畑のようなお弁当、宝石と思ってしまうほどの色鮮やかなお菓子。これらの美しい光景をうっとりと眺める時間は、まるでアート鑑賞に似ている。ただ決定的に違うのは、食べられるということ。手がけるのは、野菜や果物が持つ自然本来の色を生かし芸術的に“食”を作り上げるフードクリエイター集団「harapecolab(ハラペコラボ)」。女性をはじめ日本中の人々を虜にする、クリエイティブでアートな食べ物はどうやって生まれるのか。harapecolab代表・野尻ともみさんに、制作現場の思いを尋ねてきた。
Q. フードクリエイター集団「harapecolab」とは? 立ち上げのきっかけも教えてください。
私はもともと食べることが大好きで、20代の頃から友人たちと「ハラペコ会」と題し、ごはんを作って、空間演出して、食べて……とケータリングに近いことをプライベートで楽しんでいました。主人の転勤で福岡に移住し、本格的にケータリングを展開しようと2013年にharapecolabを立ち上げました。
途中でカフェの立ち上げと運営を任せてもらった経験も大きな糧になりました。ただ当時は、自分の中で「こうあるべき!」という厳しいマイルールを設けていたので、一人でたくさんのことに取り組み、今よりストイックで表情も全然違っていたと思います。けれど2人目の子供の妊娠を機に、「これからはやりたいことだけをやろう」とシンプルな考え方になりました。育児や家事で忙しく、仕事の時間が限られるのも大きな理由。あれもこれもやっていたら結局手が回りませんから。
私の場合は、鮮やかな野菜や食用花を自然のままアートのように表現して、純粋においしく楽しく食べてもらいたいと、今のクリエイティブなスタイルに集中しました。harapecolabの立ち上げ後はしばらく私一人でやっていましたが、今は信頼できるスタッフとともに、ケータリング、そしてお弁当やお菓子の制作を展開しています。
Q. アートな食の数々にうっとりしちゃいます。この美しい感性はどこから?
父が大工だったので、実家の作業場には常に職人さんがいて、ものづくりが当たり前に行われる環境で育ちました。興味があればまず手を動かしてみるし、頭でイメージしたものを作り上げることも大好き。
高校卒業後は美術大学へ進み、建築やデザインの他、生け花を学びました。私の先生は剣山を使わずに植物同士のバランスをとって自立させる生け花をしていたので、それが今の私の感性やスタイルにつながっているんでしょうね。
お弁当では野菜のスライスを仕切り役に使って、隣り合う食材の相性、色のバランス、立体感にもこだわって作っています!
Q. まさに「食べるアート」そのもの。野尻さんが食を通して伝えたい思いとは?
大人って日頃からいろいろ忙しくて、自分のためだけに時間を割くことが難しいですよね。そんな多忙な毎日だからこそ、食事でもワークショップでもいいから、せめてharapecolabと関わる時間だけは、誰にも邪魔されずに食事を楽しんだり、乙女ゴコロを取り戻したり、“自分のご褒美タイム”を堪能してもらいたいなと思っています。
【写真右:ケータリングで人気の「サラダロード」。色とりどりの野菜や果物、ローストビーフ、オムレツなどがテーブルの上にズラ〜ッと連なり、華々しい一本の道に!】
お弁当一つにしてもそう。開いた瞬間から、胸をキュンとさせるトキメキを与えたい。そして、見た目の美しさだけじゃなくて、味もよくあるべき! おいしい野菜をさらにおいしく食べられるように、野菜や食用花は必ず旬のものを入れて、相性のいい肉料理や魚料理と合わせてモグモグ箸が進む献立にしています。あと、これは大々的には言っていませんが、昔の人たちの知恵に習って、デトックスにいい食材や調理法などを少し取り入れているんです。こっそり、マクロビと薬膳のいいとこ取りをしています。
写真より実物の方が美しくて、見た目以上においしくて、おいしい上にヘルシー! と喜びと満足感を膨らませる存在でありたいです。実際に女性のお客様が「私の中に眠っていた乙女が目を覚ました〜♡」と喜んでくださるので私も嬉しいです(笑)。
Q. 食育にもつながる子供向けのワークショップも人気ですよね?
無添加の自家製ソースとこだわり無農薬野菜を画材にした、“食べられるアート”のワークショップをちょこちょこ開いています。野菜嫌いの子もまずは触ってみるだけでOK! こんな面白い野菜があるんだと存在を知って、触れて、楽しんでみませんか? そんなコンセプトでやっています。形や色など野菜の個性を面白がりながら、一口食べてみて、今まで食べられなかったものを克服できたらラッキー。野菜嫌いの克服はあくまで「おまけ」という感じで、何かいいきっかけになれば嬉しいです♪
あとは、私みたいな大人がいることも知ってほしい(笑)。テーブルの上にお花畑を作る可笑しな大人がいるよ。だから君たちも自由に好きなことをしていいんだよ。そんな風に伝わればいいなと思います。
Q. こうぶつヲカシは包装までかわいい! 正直、お金かかってますよね?
そうなんです。こうぶつヲカシは手間暇も原価もかかっているのに、最初の設定額が安すぎたという……。それでは原価、運営費、人件費までカバーできず、パンクしてしまうと気づいて、慌てて価格設定を見直しました。ちなみに、こうぶつヲカシの外装は原価500円くらいかかっています(笑)。
箱やタグにはロゴをつけて、オリジナルで製作したり、ショップカードやパンフレット、包装紙もこだわったり。たとえ費用がかさんだとしても、料理やお菓子と同じようにパッケージでもうちの世界観を表現したいですし、絶対手を抜きたくないんです。
中身だけでなく全体の世界観まで上質に仕上げることが、モノとしての価値を上げるのではないでしょうか。今、全国でリピーターになってくださる方が増えているのは、何よりの証だなと感じています。
「こうぶつヲカシ」(9粒箱入り3000円)
こうぶつヲカシ・オンラインショップ
Q. アートブックを出版予定と聞きました。どんな本になりそうですか?
現在サラダロードのアートブックを制作中です! これまでケータリングでいろんなサラダロードを作ってきましたが、素材の組み合わせや光のバランスなど、自分の理想形を追究しながら作品撮りしています。時間をかけて撮影をしているので、完成は来年頭くらいかなと。彩りもデザインもまったく異なる、世界に一つだけのサラダロードを20パターンほど載せた“涎が出るアートブック”となる予定です。楽しみに待っていてください。
harapecolab 野尻 ともみ
静岡県出身。棟梁の父の影響でものづくりに興味を持ち、多摩美術大学に進学。建築・不動産業界を経て、結婚を機に福岡へ移住。趣味でやってきた空間演出を含めたホームパーティー「ハラペコ会」をベースに、2008年よりケータリング事業「harapecolab(ハラペコラボ)」を本格的に始める。アート×フードの美しいケータリングやお弁当の制作、ワークショップを展開。2017年10月には鉱石の形をした「こうぶつヲカシ」を販売し、人気が全国に拡散。
harapecolabアトリエ
福岡市南区寺塚2-8-1 金子アベニュー200棟212号室
080-3951-1708
※火~金曜はコウブツ食堂をアトリエにて営業(ランチタイムのみ)
※営業時間は要確認、土曜・日祝日は休み
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