デザインで課題解決へ。プロダクトデザイナーが変えていくモノの“価値観”
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デザインで課題解決へ。プロダクトデザイナーが変えていくモノの“価値観”

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「パケ買い」「ジャケ買い」などと呼ばれるように、商品のルックスやパッケージに惹かれて買い物することが多くなったように感じる今日この頃。商品のスペックも重要だけど、デザインがいいと使うときの高揚感を楽しめて、愛着もぐんぐん増していくから見た目はやっぱり大事。

今回は私たちの身近なモノをデザインする「なかにわデザインオフィス」の中庭さんにプロダクトデザイナーの役割について尋ねてみた。すると、想像以上に深く、長〜い考え方でモノづくりに向き合う姿勢が垣間見られた。

Q. プロダクトデザイナーとは、具体的にどういう仕事ですか?

Q. プロダクトデザイナーとは、具体的にどういう仕事ですか?

「どんなものをデザインしているんですか?」とよく聞かれるんですが、身近なもので挙げると、花火やお茶の商品企画とパッケージデザイン、そして鏡や時計の企画・デザインをしています。売りものとしての製品ですね。

長崎県波佐見町にある岩嵜紙器さんとのお仕事は、企画から入らせていただいたのですが、箱やパッケージの製造会社ということで、長年培われてきた技術である展開図の設計や組み立て、箔押し、エンボス加工などの技術を利用して生活雑貨を作りました。カレンダーや鏡、時計、フォトフレームなど、すべて紙製のアイテムです。

紙は劣化しやすいからと表面を補強加工しがちですが、そうすると紙特有の質感や手触りを無くしてしまいます。社名に「紙」の文字があるだけに、それは避けたいと思って、紙でも十分に機能するものを作ってみてはと提案しました。時計もフォトフレームも飾ってしまえばめったに触らないので、劣化もあまりせずに耐久性をキープできるんです。

【写真:岩嵜紙器の自社プロダクト「enough」シリーズの時計4000円、フォトフレーム1500円~】

Q. 商品のデザインだけではなく、ブランディング的な役割もありますか?

Q. 商品のデザインだけではなく、ブランディング的な役割もありますか?

そうですね、企業側からいろんな発注をいただきますが、「本当にそれ、やるべきですか?」と疑問を抱くケースもあったりして。何がしたくてデザインを依頼しているのか、根っこの部分を尋ねたくなるような……。

まず、既存の商品をデザインし直す場合は、本当に必要なのかを考えます。ビジュアルを作り直すことで実際に相手(消費者)に伝わり、売れるようになるのか。効果を生む=売れることがプロダクトデザインの前提なので、根底部分からジャッジして……となると、自然とコンサル的な仕事に結びつくんですよね。

あと、クライアントさんによっては、営業費など制作費以外のコスト感覚を持っていないこともあり、要望通りに作ると初期投資だけで高額になることも。

最初から予算を使い切ってしまうと、商品完成後、売るための営業や販促、ウェブサイトの立ち上げ、運営まで金銭的体力が持たなくなってしまいます。全体のコスト感は経験上自分が把握しているので、打開策を挙げてアドバイスをしています。社内だとわからない、外部かつデザイナーという立ち位置だから見えることがあるので、思ったことは伝えるようにしています。

Q. デザインや見た目だけでなく、その先も大事ということですね!?

Q. デザインや見た目だけでなく、その先も大事ということですね!?

せっかく作ったものでも誰かに知られなきゃ効果が生まれないし、意味がないですよね。まだまだ“新しいものを作れば売れる”と思っている企業さんが多いので、作った後のその先のことまで考えなければ。個人的にもデザインして終わりではなく、その次の売り場のこと、営業のこと、お客さんにどう使われているかを考えながら、展開の仕方やコスト感も提案しています。

既存商品のリニューアル時、パッケージデザインとともにネーミングや値段を再考します。というのも、ビジュアルと価格次第で、店頭での扱い方が変わるんですよ。安すぎると棚に置かれるだけで目にとまるディスプレーをしてもらえないので、例えばビジュアルと価格をギフト仕様にしたり、デザインや名前にフックを与えたり、売り場のことを念頭に置きながらデザインしますね。

あと、作る人たちのテンションも大事にしたい。製造や営業の方々にとって愛着を持てる商品でありたい。

何かしらの手間がかかったとしても、結果として素晴らしい効果を得られるなら、やりがいを持って取り組んでくれると思うんです。そして単純に、作ったものが売れたら儲かるし、これが一番嬉しいですよね。こういう好循環を生み出さないとなと常々考えています。

【写真左:吉田木型製作所「ダッチオーブン」1万4000円 写真右:筒井時正玩具花火製造所「花富士」450円】

Q. シリコーン製の生活雑貨「FACTORY」の開発は、どういう経緯で?

Q. シリコーン製の生活雑貨「FACTORY」の開発は、どういう経緯で?

母校の専門学校に依頼があり、最初は学生と進めていくプロジェクトでしたが、デザインはできても運営まで長期的に取り組むことが難しいだろうと、卒業生を中心にした僕らでやらせてもらいました。

【写真:SiNG「FACTORY」ペンシート・かき 800円】

依頼主の株式会社SiNGさんは、シリコーンゴム専門の製造工場で設計から製造までされている会社です。

部品メーカーだと図面通りに作って納品するだけの仕事が多いので、自社で製造した部品や製品が最終的にどのように使われているか見えなかったりするんです。

「日々自分たちが作っているものって何なんだ!?」とジレンマを抱えていらっしゃったとか。そこで僕が提案したのは、直接ユーザーと繋がれるプロダクトの生産。SiNGさんは工業製品を作っているバックボーンが強みなので、精密なものを作り続けてきた実績をもっと前に出したくて、“部品のようなアイテム”の商品化を提案しました。

輪ゴムも特殊なパッキンに見えたりして、部品っぽく見える形状。ちなみに、シリコーンはアレルゲンがなく、弾力性や耐熱性に優れた特性があります。この安全性を伝えたくて直接肌に触れるアイテムを作ることにしました。マグカップも「これ実はシリコーンで……」と、シリコーンが会話の中心になりますしね。

【写真:太宰府・竈門神社の参道にある「cafe Si」は、「SiNG」のショールーム兼カフェ。オリジナルブランドのテーブルウエアを使って、手作りのプリンとコーヒーを味わえる。】

【写真:キーリング(1200円)やタビーライト(1万4000円)もシリコーンを原材料に作られている】

sing_factory Instagram

Q. モノづくりにおける「お金」についてどう考えますか?

Q. モノづくりにおける「お金」についてどう考えますか?

値段で判断しないようにしています。例えば、値段が安いとそのモノ自体が安っぽく見られますが、値段をいわれなければ品良く見えるモノが世の中には結構あるんですよ。これって扱い方次第。だから、上質に見せるパッケージをデザインする際、素材自体が安いからと言って除外しません。安くても良く見せることができそうだと思えば採用します。

これは「うきはの山茶」が出している、有機栽培の茶葉を使ったプレミアムシリーズ。片艶晒(かたつやさらし)というごくごく一般的な紙を使い、しかも裏面を表にしてデザインしました。裏のザラザラした紙面にグレーのモノクロ印刷をかけることで、ちょっと艶のあるいぶし銀みたいな質感になるんです。上質な雰囲気をまとっているけれど、パッケージの材料は高価ではないし、モノクロ印刷なのでローコスト。きっと、言われないとわからないですよね。

この素材を使った理由はコスト面だけでなく、生産者や販売元の雰囲気も意識しました。田舎で粛々と茶葉を育てているお店だから、パッケージには硬質なものを使いたくなくて。

現場の有機的な雰囲気に合わせることが重要だと思いましたし、安い紙でも整えることで上質そうに見せることができるんです。また、紐を結ぶひと手間があり、外装から手仕事の温かみが伝わるのもポイントです。

※本文中の商品価格はすべて税別です

Q. 中庭さんの個人的な金銭感覚も教えてほしいです。

Q. 中庭さんの個人的な金銭感覚も教えてほしいです。

最近の大きな買い物は、自然豊かな環境を手に入れたくて、梅やビワがとれる小さな梅林を買いました(笑)。もともと所有されていた老夫婦が丁寧に管理していた梅林を安く譲ってくれたんです。子供の野遊びの場にもなるし、僕らも山仕事が楽しみで。近くの小川には蛍が生息しています。こうした最高のロケーションをずっと楽しめると考えれば、一生かけても十分モトを取れるんじゃないかと思います。

我が家は、マンションを中古で買ってリノベーションをしたんですが、同じスペックの新築物件の半額ほどで済んだので、浮いた分を他に充てています。

家や車など大きな買い物は、考え方次第で大幅にコストを下げられるのでは。缶ビールの節約とか日々の小さな積み重ねも大切ですが、高額な買い物でやりくりした方が大きな節約になって合理的だと思っています。

最近は生活スタイルが多様化していますし、生活にお金をかけない人も楽しく暮らせそうです。さらに住む場所の選択肢も増えてきました。僕のような職種なら都心に住まなくても作業できますし、子供を育てたい環境で仕事をすることができます。価値観が広がったこのご時世、自分にとってはいい時代だと感じます。

「なかにわデザインオフィス」 中庭 日出海

「なかにわデザインオフィス」 中庭 日出海

1981年生まれ、長崎県出身。福岡の専門学校で2年間空間デザインを学び、1年間研究生として過ごす。卒業後は建築デザインに従事しながら、デザインの専門学校講師を務め、数々のデザインコンペにて受賞。2007年に「なかにわデザインオフィス」設立。プロダクトデザイナーとして家具、空間、食品や化粧品など幅広いジャンルのデザインや商品開発に携わる。

福岡県福岡市南区井尻5-24-15 野上ビル #305
TEL:092-586-6770
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