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目の前に広がる糸島のビーチ、抜けるように青い空。「こんなところで毎日過ごせたら最高だろうなぁ…」と羨ましくなるほどの場所に店舗を構えるのが、波佐見焼メーカー「マルヒロ」の姉妹店「HEY&Ho.」だ。ロケーション同様、なんとも穏やかで人を和ませる雰囲気を持つ店主、本城茂太さんにお話を伺った。
Q. 波佐見焼の代名詞ともいえる「マルヒロ」の姉妹店とのことですが、なぜ専門店をやろうと思ったのでしょうか?
僕はこのお店を始める前、15年間アパレルに勤めていました。人と話をするのはすごく好きだったんですが、自分がおじいちゃんになってもその仕事をやっているイメージがわかなくて。
何か別のことをやってみようと思い、造園業や農家、会社員など、いろんな仕事をしてみたんです。
大きな組織で働いてみて分かったのは、自分がそれに向いていないということ。じゃあ自分でやるしかないな、何をしようと考えたときに、ちょうど昔からの遊び仲間だったマルヒロの社長が開発したブランド、「HASAMI」が注目を浴び始めて。低迷していた有田焼や波佐見焼のイメージがガラッと変わったのを感じました。
でも、他の商品もすごくカッコイイのに大手で扱うのは代表的なカラフルなマグカップなど売れているものだけ。それじゃもったいないと思って「俺が全シリーズ売るからお店やらせてよ」とお願いしたんです。
マルヒロもまだ自分のところで通販もやっていなかったですし、地元だけじゃなく都会でも商品をアピールしたいと思っていたところだったので、その場でOKをもらいました。
Q. 糸島という場所を選んだ理由は?
…偶然です(笑)。実はこの店舗が入っている複合施設「PALM BEACH THE GARDENS」のオーナーが親戚なんです。僕が自分でお店をやろうと思って、まずマルヒロの社長に電話したら5分も話さないうちに「いいよー」って言われたんですけど、まさかそんな急に決まると思わないから開店資金も準備も何にもしていなくて(笑)。
最初は天神界隈で探したんですが、なかなかいい物件がなかったんです。そうしたら、たまたまこの施設がオープンすることになって「ここでお店やったら?」と言ってもらえて。店舗運営の経験もないからマルヒロまで行って展示の仕方やノウハウを教えてもらったり、自分で内装を手掛けたりしました。
でも、結果的には糸島という場所を選んでよかったと思います。お店のお客様は半分くらいが旅行で来られた方なんです。大阪や名古屋、海外から来てくださる方もいらっしゃいます。おかげでご縁が広がってイベントなどに呼んでいただくこともあり、4月の名古屋に続いて5月は大阪でpop-up出店することになっています。
それに、マルヒロの直営店がある波佐見と福岡では売れるものが違ったりするんです。うちは本社とほぼ同じラインナップを揃えていますが、客層も違うので、あっちで売れてこっちで売れなかったり、その逆もあります。
試作品をマルヒロとHEY&Ho.で売り出して両方の反応を見て商品化に踏み切ったり、ボツになったりするものもあり、実験的なやり方ができて面白い。偶然選んだ場所ではありますが、糸島でやっている意味はすごく大きいと思います。
Q. イラストレーターのNONCHELEEEさんとのコラボ商品もユニークですね。コラボのきっかけを教えてください。
実は彼も遊び仲間の一人。僕は趣味でバンドをやっていて、音楽つながりで彼と知り合いました。その頃はまだイラストレーターとして活躍しているわけではなかったんですが、趣味でちょこちょこ描いているイラストがめちゃめちゃ下手くそで面白かったので(笑)、「看板描いてよ」って頼んだんです。その後、マルヒロの社長に彼を紹介してコラボ商品を出したり、うちのオリジナル商品を作ったりしています。
Q. 場所柄、天候や季節によって人の流れや売上が随分違うのでは?何か工夫していることはありますか?
「外に出る」ですかね。このお店でできた人とのつながりを活かしてお店を離れてpop-up出店したり、ワークショップをやったり、イベントに参加したりしています。
でも、確かに季節によって来客数は変わりますが、来客が多いからその分売上が上がるというわけでもないんです。冬場のほうがゆっくり見られるから良いと言ってくださる方や、年に1回必ず来てくださる方もいらっしゃいますし。まずはご縁のあった方とどうつながっていくかということが大事なのかなと思います。
Q. お店を始める前と始めた後、一番変わったことは何ですか?
お店を始める前というよりも、一度会社員として企業に勤めた経験は大きかったと思います。会社員時代の仕事自体は楽しかったですが、守らなければいけない細かいルールの多さや上下関係、めちゃくちゃ頑張ってもマニュアルがあるから階段を一段ずつ上るようにしか進めないというのが嫌でした。
もちろん、大きな組織を機能させるためには必要なことなんだと思いますが、自分には合わなかった。個性を殺されるような気がしたんです。一度会社に勤めて、その後自分でお店を始めたことによって自分自身を取り戻せた気がします。
今は転職も当たり前だし、迷っている人はいろいろ考え過ぎずにこれだ!と思えるものにぶつかるまで、いろんな仕事をやってみたらいいんじゃないかな。
Q. これにはお金を惜しまない!というものはありますか?
昔に比べてモノとかにはお金を使わなくなったし、お金とか経営とかあんまり考えずに動いちゃうので…でも、人とのつながりはすごく大事にしています。今の仕事につながったのは、趣味の友達ばかり。若い頃に遊んでいてよかったな、って思います。
これからも波佐見焼だけでなく、木工作家の友人の作品やNONCHELEEEとのコラボ商品などアイテムも増やして、国内外問わずもっといろいろな場所や人と繋がっていきたいです。
HEY&Ho. 本城茂太
1975年福岡県生まれ。アパレル勤務などを経て、「年齢を重ねてからもずっと自分らしく楽しく生きていきたい」という思いから、波佐見焼メーカー「マルヒロ」の姉妹店「HEY&Ho.」を2015年7月にオープン。「マルヒロ」のほぼ全シリーズを取り扱う豊富なラインナップと飾らない人柄が人気を呼び、福岡県内外問わず海外から訪ねてくるお客様も多い。ユニークな店名はリスペクトしている北島三郎さんの名曲「与作」から。また波佐見焼の「HASAMI」や商品コラボレーションを行っているアメリカのフォントブランド「House Industries」の頭文字の意味も込められている。
HEY&Ho.
福岡市西区西浦285 A-3 Palm Beach The Gardens内
TEL:092-809-1234