いま注目のパルクール。世界に羽ばたく18歳パルクーラーの価値観とは?
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いま注目のパルクール。世界に羽ばたく18歳パルクーラーの価値観とは?

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走ったり跳んだりという移動する動きの中で、人間の身体能力を引き出す「パルクール」。近年エクストリームスポーツとして、また映画や舞台でのパフォーマンスとして、さらにはトレーニングのメソッドとして注目を集めています。福岡県古賀市に住む現在18歳の中野紫音さんは、そのパルクールを使ったパフォーマンスで注目を集めています。中野さんが子どもの頃からトレーニングを積んできたという公園で、話を伺いました。

Q.なぜパルクールにハマったのですか? もともと運動が好きだったのでしょうか?

全然です(笑)。どちらかというと、運動は苦手なタイプでした。逆上がりもできなかったし。パルクールを知ったきっかけは、ゲームでした。「アサシンクリード」で遊んでいて、その中で壁をよじ登ったり、狭い足場から足場に飛び移ったり、高いところから飛び降りたりする、ゲーム内の動きに夢中になりました。そして僕が考えたのは、「この動き、実際にできないかな?」ということでした。ゲームの世界が、現実に飛び出してきたらおもしろいのに!って。

それから、ゲーム内の動きがパルクールと言われるものであること、世界中にはそれを実践している人たちがいることを知り、YouTubeで「パルクール」を検索しまくりました。そして自分でも実際に自宅の壁をよじ登ったり、障害物を飛び越えたり、見よう見まねで始めたんです。それが小学校6年生の頃です。

中学に入学して、最初は友達と一緒にチームを組んで練習していたのですが、あまりに僕がガチでハマってしまったため、どんどん人数が減ってしまって(笑)。数ヶ月後には一人で練習するようになりました。

Q.どのような方法でうまくなっていったのですか?

Q.どのような方法でうまくなっていったのですか?

側転→片手側転→側宙のように、少しずつ難易度を上げていきました。この公園や、海に行って砂浜でコツコツと練習をしていました。一人になりましたが、さみしい気持ちなどはまったくなく、学校から帰って即練習の日々でした。

1つの技ができるようになる瞬間というのは不思議で、徐々にできるようになるというより、それまで全然できなかったのに、ふと出来るようになるのです。たぶん必要な筋肉がつき、精神的にも準備ができた時に、できるようになるのではないかと思います。

ケガも多かったです。鎖骨や足の甲、手首など、何度も骨折しています。骨折って、いつも想像をはるかに超えて痛いんです。ケガの後は恐怖心が生まれて、しばらくパルクールをやるのが怖くなります。それでもなぜだか練習を再開してしまうのは、やっぱり好きなのかな? 新しい技ができるようになった時の高揚感は、なにものにも代えがたいです。

Q.得意な技について教えてもらえますか?

得意なのはバック宙です。どこでもできるし、どんな狭い場所でもできる自信があります。

また九州では僕しかできないのでは?と思うのは、ダブルウェブスターという技。片足で踏み切って前宙で2回まわるというもの。これはめちゃ怖かった! 怖さを克服する方法は人によって違うのですが、僕の場合は集中しすぎて考えすぎて逆にパニックになるくらいまで追い込んで、頭を真っ白にして練習します。

Q.中野さんはパルクールに集中するために、高校も通信制を選んだそうですね?

Q.中野さんはパルクールに集中するために、高校も通信制を選んだそうですね?

はい。パルクールが好きすぎて、自分で決めました。僕の通った学校は、週2回の通学でよかったので、それ以外の時間は練習や、その頃始めたスタントの仕事に費やすことができました。高校自体、いろいろな生徒がいて、先生たちもそれを認めてくれる環境で、楽しかったです。

両親は応援してくれました。「とにかくケガには気をつけて」ということは口を酸っぱくして言われましたが、僕の決断を信じてくれたのはうれしかったです。

Q.高校生の頃からいろいろな仕事をしているのですね。これまでに取り組んだ仕事のことを教えてもらえますか?

交通教室で自動車の危険性を伝えるためのスタントをやったり、様々な劇場やショッピングモールなどで、忍者パフォーマンスをやったり。パフォーマンスの仕事は、パルクールに演技や殺陣を交えたもので、やりがいもあるし、お客さんが喜んでくれるのを目の当たりにできて楽しいです。

最近では、韓国のアーティストMINSEOさんのミュージックビデオに韓国人少年の役で出演しました。福岡と韓国でのパルクールを活かした本格的な撮影は、緊張もしましたが、本当に楽しかった!

NARUTO✕BORUTOの「忍者BORUTAGE」というゲームのプロモーション用の動画にも参加しました。忍者が全力でドッジボールをするという設定で、アクロバティックな動きに特殊効果が加わって、おもしろい映像に仕上がっていました。

仕事はホームページなどから直接問い合わせがあります。インスタグラムのDMから来ることも。様々な依頼の中から、周りの人に相談したり、勘を働かせたりしながら、自分で仕事を選んでいます。

Q.仕事をして得たお金はどのように使っていますか?

Q.仕事をして得たお金はどのように使っていますか?

初めてもらったお金は、体操教室でアクロバットを教わるために使いました。今でもレッスンそのものや、それに通うための交通費に使ったりしています。もちろん普通のアルバイトもそうだと思いますが、お金を稼ぐって本当に大変だなと思います。大切に使おうという気持ちになります。

洋服が大好きで、衣装も自分で準備しているので、洋服代にもお金を使います。韓国のアイドルが大好きで、似た服を通販で探すことも。あ、ちなみにいま防弾少年団のダンスの振付の完コピも目指しているんですよ!

もうひとつ、海外に行きたいということも考えています。パルクール発祥の地であるフランスのパルクール専用施設で、もっとハイレベルな技術を教わりたい! それにアメリカでストリートパフォーマンスもやりたいです。英語が出来なくても、パフォーマンスで通じ合える自信があります。

日本はパルクールをやるには、ちょっと窮屈な環境です。許可がないと何も出来ないし、専用施設も福岡にはまだありません。海外は、もっと自由に街なかでパフォーマンスできて、うらやましいなぁと思うんです。

これはパルクールをやっている人間ならではだと思うのですが、初めての街を歩いていても、パルクール目線で景色が違って見えるんです。「あ、この壁登れそう」「この隙間は渡れるな」「ここはショートカットできるぞ」って感じ。だから散歩が大好きです。なんか猫もこんな感じなのかな?(笑)

Q.中野さんは将来なにを目指していますか?

僕はマルチタレントになりたいと思っています。パルクール=紫音という認識をしてもらえるまでがんばって、その能力を活かして、テレビで自分の冠番組を持ちたいですね。スタントマンをやっている時に感じたのですが、自分の名前や顔が出ないことが不満で。きっと目立ちたがり屋なのだと思います(笑)。

本当にパルクールと出会ってよかったです。人間の可能性って無限大だと感じます。

中野紫音

中野紫音

小学6年生でパルクールを始め、いまではパフォーマンス、振付、衣装まですべて自分でプロデュースを務める。NHK、テレビ東京など多数のメディア出演経験あり。CMやミュージックビデオ、舞台など多彩に活躍中。