目次
- Q. 岡村さんはデザイナーとしても活躍されていますよね。普段はどんなお仕事をしていますか?
- Q. 本業の傍ら、7年前に始めたアーティスト活動。自由な表現を始めたきっかけは?
- Q. クスッと笑える作品が特徴ですね。岡村さん自身、自分の作風をどう捉えていますか?
- Q. 「おっぱい展」への出品でN.Y.へ進出! どんな経験になりましたか?
- Q. 「稼ぐための活動」と「アーティストとしての活動」を、どう区別していますか?
- Q. 「思いついたことを形にすることを続けてみたら…」の着地点は?
- Q. 岡村さんにとって、お金はどんな存在ですか? お金や仕事の価値観について教えてください。
- デザイナー・アーティスト 岡村しんし
カラーコーン型のミラーボールや、浮き輪を繋ぎ合わせた遊具、手のひらでクルクル回る寿司皿など、クスッとした笑いを生むアートの数々。『デザインで世界を笑顔に』をモットーにアーティストとして活動する岡村しんしさんは、ガム型名刺「SOOCIAL GUM」の制作や、「クラブでそれっぽく踊る為のダンス教室」など、幅広いジャンルで活躍し、人々の心をハッピーにする仕掛けを発信している。アーティストとデザイナーの両面を持ち、独自のスタンスで突き進む岡村さんに、これまでのプロセスとこれからの展望、そして物事の価値観を尋ねてみた。
Q. 岡村さんはデザイナーとしても活躍されていますよね。普段はどんなお仕事をしていますか?
クライアントワークとしては、デザイン業を主に、SNS用の広告動画も作っています。SNS向けの動画編集は、5〜10年前にはなかったタイプの仕事ですよね。
あとは、ネットショップの運営代行や、ロゴ制作、フライヤーなどのグラフィックデザインも。専門学校卒業後に入社した会社が、ガラケー(ガラパゴス携帯電話)のモバイルコンテンツ事業をやっていたので、ウェブサイトの企画・運営・デザイン、グロースハックは得意です。
ここ10年で携帯電話がガラケーからスマホに移り変わったように、ツールの機能性やデザインが日々アップデートされる現代社会で、当然僕らもトレンドやニーズに合わせた企画・制作のアップデートを常に求められています。そんな環境にずっといたからか、時代の変化に対しては柔軟な方。独立した今も、1〜2年サイクルで受注の内容が少しずつ変わっていると感じますね。今後ますます動画制作の需要が上がりそうです。
Q. 本業の傍ら、7年前に始めたアーティスト活動。自由な表現を始めたきっかけは?
初めて「アーティスト」として手がけたのは、イベントでのライヴペインティング。ほら、ライヴペイントって黙々と絵に集中して描くスタイルが多いじゃないですか。けれど僕はペイント中もショー的要素がほしくて、ロックダンスを踊りながら絵を描きました(笑)。
小学生の頃からずっとダンスが好きで、中学三年の時にダンスチームを立ち上げて、そのチーム名が今の会社名の「ランダム」。ダンスイベントのチラシを自分で作ったりもして、これが僕のデザイン業のルーツですね。これまでやってきたことは、すべて今に繋がっていると感じます。
独立後はライヴペインティングのほか、アイデアとして思いついたことを作品にして、SNSで発表するようにしました。そうすることで、思いつきで作った作品が別の形で発展するかもしれない、なんてボンヤリとしたビジョンですが、とにかく頭の中で「面白そう!」と思うものを作り続けることにしたんです。
【写真上】三角コーンの下に回転テーブルを仕掛けた「DISCONE(ディスコーン)」。天井から吊り下げなくてもミラーコーンが回り、携帯も可能。モノクロのイラストは、イベントでビニールテープを使ってライヴペイントした時の作品。
Q. クスッと笑える作品が特徴ですね。岡村さん自身、自分の作風をどう捉えていますか?
自分でデザイン会社を立ち上げるにあたり、社会に少しでもいい影響を与えたいと思いました。極論を言うと「世界平和」。平和って笑顔から生まれるものだから、『デザインで世界を笑顔にする』ことをスローガンにしたんです。その一歩として、まずは目の前の人を笑わせる、心和ませるデザイン制作から始めることにしました。
肩書きは「スマイルクリエーター」。アートを通して誰かの笑顔を作ることを目指しています。
「ハンドスシナー」や「金のOh!No、銀のOh!No マグカップ」など、とっかかりがダジャレの作品も多くて、世の中を少しでも楽しませる作品になればと思って作っています。
あと、作品の材料に、身の回りのものをたくさん使うのには理由があるんです。目にする人たちに「自分にも作れそう!」と感じてもらいたいし、僕も「身近なものでアートって作れるんだよ!」と伝えたい。だって、アートは見るより自分で作る方が断然楽しいですから! 一人でも作り手を増やすきっかけに繋がればうれしい。
まずは「アートっぽいもの」くらいの感覚でもいいんじゃないかな。最初から完璧を求めず、もの作りのワークショップに参加したり、適当に何か作ってみたり、「っぽいこと」から始めてみて。だんだん自分のオリジナリティーやアーティスト性が見えてきて、面白いですよ。
Q. 「おっぱい展」への出品でN.Y.へ進出! どんな経験になりましたか?
2016年に浮き輪の遊具アートを作ったんですが、そこで得たインスピレーションをさらに広げて、2018年に田川市のいいかねPalette・田川市美術館で開催された現代アート展覧会「おっぱい展」に出品。ピンクリボンのテーマカラーを使い、浮き輪を使って巨大なおっぱいを表現しました。
※「おっぱい展」とは、子どもにとって大事な母乳、女性の内面や外見としての象徴である「おっぱい」をアート化し、乳がん予防の啓蒙も発信する、現代アート展覧会。
この展覧会をきっかけに今年3月、「おっぱい展 in Brooklyn, New York」に参加できたんですよ。「思いついたことを形にすることを続けたら、N.Y.まで行けたよ!」と実証できて、自分の中でも実験的な取り組みだった“やりたいことを続けたらどうなるか?”に、いいオチがつきました(笑)。
とりあえずは、無理をしてでも一回世界に飛び出してみるという、この経験をさせてもらえてよかった。N.Y.で生きる人々の自由さを肌で感じて、表現者としての視野と価値観が広がりました。通りすがりに喋りかけてくる人や、一人でラップしながら歩く人など、「自分はこうだ!」という表現力と自由度がすごい。そして、規格外のギャラリーや話題のモニュメント・アートを目の当たりにして、世界に広がる桁違いのマーケットを実感しましたね。
【「自由の女神」が自分の影となるストリートアートを即興で制作】
Q. 「稼ぐための活動」と「アーティストとしての活動」を、どう区別していますか?
アーティストとしての作品は、売ろうと思って作っていないので、稼ぐためのクライアントワークとは制作上の意識がまず異なります。
けれど地道に続けてきたアーティスト活動が、「仕事」として実を結ぶケースが増えてきて、今ではクライアントワークとアーティストワークが一つにまとまりつつあります。例えば、2017年に福津市の盆踊り祭りの先導役に抜擢されたのは、人々を楽しませるダンサーとして注目してもらえたからでしょうし、2018年には、地元・大牟田の物産振興会からイベントを企画してほしいという依頼が。これも僕のアーティスト活動を目にして声をかけてもらったお仕事で、イベント全体のアートディレクターとして、企画から空間演出まですべて担当しました。
大牟田が故郷なので、今後もさまざまな仕掛けに携わっていこうと思っています。8月17日(土)〜9月1日(日)には、三井港倶楽部と三川坑跡で行われる「えんとつ町のプペル展in大牟田」のアートディレクション・運営協力も担当します。詳しくはこちら
大牟田Tシャツ(通称:オムT)のレーベルも、自主的に立ち上げました! 売り上げの10%は大牟田市の活性化の事業に使わせてもらっています。詳しくはこちら
Q. 「思いついたことを形にすることを続けてみたら…」の着地点は?
でっかいパブリックアートを生み出したいです。この前、東京都立川市のパブリックアートアワードの公募に応募したんですが、残念ながら選考に落ちてしまい…。その際、僕が提案したのは、スイッチとスマイルマークを融合させた高さ3〜4メートルの自己史上最大のモニュメント。ああ、作ってみたかったなぁ〜!
「思いついたことを形にすることを続けてみたら…」の実験は、今後も続きます! もしもパブリックアートの野望が叶ったらと思うと、それこそ夢があるし、面白いですよね。自由な表現の可能性が広がって、誰かの創造性の後押しにもなるはず。
Q. 岡村さんにとって、お金はどんな存在ですか? お金や仕事の価値観について教えてください。
子供が生まれてからはお金の価値観が変わり、将来に向けての備えが必要だなと感じています。
一方、事業面のお金の価値観は少し違って、新しいことに挑戦する際に、“お金がないと何も始められない”時代ではなくなった感覚。もちろん、資金となる蓄えがあるに越したことはないのですが、クラウドファンディングでゼロから資金集めができる世の中です。やりたいことが明確にあって、その熱量が高ければ、資金を集める手段はいくらでもあり、行動しやすい時代になっていると感じます。
お金の稼ぎ方も多様化していますよね。僕なんてまさにそうですが、デザインという大きな枠組みの中で、仕事の内容が年々変わるので、その都度自分をアップデートしていかなきゃな、と。「やりたいことを形にし続ける」ライフワークもありますが、家族を養うためにお金になる仕事も必要ですから。AIにはできない、人間だからできる仕事って何だろう?と問いながら、新しい技術を身につけるように努力しないといけませんね。
これからも時代の変化を受け入れて、新しいことを取り入れる生き方をしていきたいなと思っています。