日本生まれのハーブ「よもぎ」の魅力を、世界の人とシェアしたい。
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日本生まれのハーブ「よもぎ」の魅力を、世界の人とシェアしたい。

my story

獣医師として活躍した後、 アメリカ・カリフォルニアでスタートアップの立ち上げを経験。そこから「ここに住みたい!」という直感で福岡・糸島に移住し、現在は薬草ハーバリストとして、よもぎをメインにした野草茶を製造、世に送り出している加藤美帆さん。様々な世界を見てきた加藤さんが、今、ここで見つけたものとは?

Q. 薬草ハーバリストとして活動するようになったきっかけは?

Q. 薬草ハーバリストとして活動するようになったきっかけは?

6年前にカリフォルニアから糸島に移住し、3年前に犬を飼い始めて毎日自然の中を歩くようになったんです。そこで、今まであまり目を向けていなかった植物の魅力に気づかされて。それまでも風景として美しさを感じることはありましたが、植物1つ1つにフォーカスして、じっくり見ることはあまりなかったと思うんですね。けれど毎日、歩いているうちに、朝と夕で植物の表情が全然違ったり、成長があったり。その小さな移ろいにものすごく感動し、もっと知ってみたいと思うようになったんです。

Q.これまで、どんな環境で育ってこられたのですか?

Q.これまで、どんな環境で育ってこられたのですか?

東京で生まれ、12歳から17歳までN.Yで過ごしました。その後再び東京に戻ったので、都会でばかり過ごしたようなイメージですが、母が山菜好きで、幼い頃は多摩川の河原で桑の実を摘んだり山中湖にウドを採りに行ったり、かなり自然派だったんです。当時は、「わが家はワイルドなレジャーばかり。テーマパークに連れて行って!」って思うこともありましたけど…。今考えると、私の中にはその頃の記憶が原風景として残っていて、数十年ぶりに出会い、再び恋をしてしまった感じです。ちなみに、祖父も畑仕事を好み、庭を果樹園のようにしていましたし、聞くところによると、曽祖母は当時では珍しい「女庭師」だったとか。植物に触れると安心するのは家系なのでしょうか。

Q.様々な草花の中から、特によもぎに着目したのはなぜですか?

Q.様々な草花の中から、特によもぎに着目したのはなぜですか?

野草はとても奥の深いものなので、まずはよもぎや、せり・なずななどの春の七草といった確実に触れたことのあるものから摘んで食卓に取り入れるようにしたんです。その度に色々調べていたのですが、特によもぎは鉄分やポリフェノールを豊富に含み、婦人科系の薬として長い歴史を持つものであること。また傷みをとり、止血や浄血ができるものでもあること。さらにノンカフェインかつ安全性も高いので、幅広い方に楽しんでもらえるものであると。もともと都内の大学で6年間、獣医学を専攻していたので、その間に学んだ自然科学や薬学の知識もかなり役に立ちましたね。薬草に関するデータが少ない部分は海外の論文も参考にしました。それで知れば知るほど、魅力のある薬草だと感じたんです。

Q.そして、よもぎ茶が生まれたのですね?

Q.そして、よもぎ茶が生まれたのですね?

初めは本当に気軽な気持ちで、「煎じて飲んでみよう」と。実はこれまで、よもぎと言えばお餅に使うもの。お茶にするならドクダミのイメージが強かったんです。でもある日、何の気なしによもぎをお茶にしてみたらすごく美味しくて、「どうして皆、こんなに美味しいお茶を楽しまないの?」と。それで自分で飲んだり、ヨガ仲間にふるまったりしているうちに、少しずつ「分けて欲しい」という声をいただくようになり、本格的にお茶づくりに取り組むことに。試行錯誤を経て、よもぎの新芽と若葉にほんの少しだけ西洋のハーブをブレンドし、特殊な方法で焙煎をかけて加工することで、オリジナルのよもぎ茶「-suu-(スー)」を生み出す事ができました。

「-suu-(スー)」には、“すっと沁み込む、すみわたる。素のじぶんに、還るお茶”という思いを込めました。現在は天然月桃や有機生姜を配合した「香りひろがる 月のよもぎ茶」、オーガニックレモングラスや天然赤紫蘇を配合した「澄みわたる 星のよもぎ茶」、そして天然よもぎに有機スパイスを配合した「ほろりほどける よもぎチャイ」などをリリースしています。

パッケージは、日本の伝統性や精神性、日本の赤である朱色や、ご縁や人との繋がりの掬び(結び)をキーワードに、日本の誇るべき素晴らしいものをお届けするのにふさわしい品格を感じていただけるものをと自ら考案しました。ロゴは、「seed of life(命の種)」という意味の神聖幾何学模様。受精卵の分裂シーンでもあり、「どんな命も皆この流れから生まれる」というところに惹かれて。実は自分で消しゴムを掘ってハンコを作り、ひとつひとつ手押ししているんです。

ちなみに自分自身で「0から1」を作る事が好きなので、はじめの頃はよもぎも自ら摘んでいたのですが、新芽と若葉の時期がとても限られているので、今は九州各地で昔から薬草を摘まれている方々の協力を得ながらお茶を作っています。

Q.ボトル入りのよもぎ茶「掬び月」はどういうきっかけで生まれたのですか?

東京で開催されたイベントによもぎ茶を出品した時に、近々オープン予定だった銀座のホテル関係者の方から「ホテルで扱うボトルドティーを作ってみませんか?」とお話をいただいたんです。製造はどこかにお任せすることが必要でしたし、かなり大型の投資が必要になるので迷ったのですが、こんな面白いものを作れるチャンスはないだろうと挑戦することにしました。でもそこからが大変。自分で製造発注先を探し、茶師の方にご協力いただきながら、香りを壊さないための抽出やブレンドアレンジを繰り返す日々。2017年11月上旬にお話をいただき、リリースしたのが2018年3月の春分の日。全力で駆け抜けた4ヶ月でした。

今ではバーやレストランのカフェで、ワインやシャンパンのように楽しめるソフトドリンクとして好評をいただいています。ワイングラスに注ぐと、甘い香りがふわっと開いて、ものすごく華やかなんです。「お茶は淹れたてが一番美味しいのでは?」と尋ねられることもありますが、忙しい現場で毎回ベストな抽出ができるとは限らないので、よもぎの一番繊細で香り高い部分を閉じ込めることができたボトルドティーを作って本当に良かったと思っています。

季節ごとのよもぎを使って春分、夏至、秋分、冬至ごろの年4回だけ作っていて、数量限定にはなりますが、次は10月頭頃に「-suu-」のウェブサイトで販売する予定です。

Q.薬草ハーバリストとして活動するようになって、自身の中に変化はありましたか?

Q.薬草ハーバリストとして活動するようになって、自身の中に変化はありましたか?

ハーバリストとして活動を始める前は、人生の中で考えなければいけないことも多く、正直、体調も心も決してベストコンディションではなかったんです。でもそんな時でも心を動かしてくれたのが植物でした。私は幼少期から動物が大好きで、自然科学や医療にも興味があったことから獣医となり、その後は縁あってIT業界に飛び込むなど、経歴の多い人生を送ってきましたが、今思い返す と、その時々で感じたこと、得たことがあったからこそ、必要なものに気づくことができ、今、ここに辿り着いたのだと思っています。

活動を始めるまでも、例えば環境に優しい洗剤を使うとか、できるだけ手作りのものを食べるなどの暮らしを心がけてはいましたが、どこかで「自分と自然」「自分と環境」「自分と地球」という風に、自分とそれらを切り離して考えていたように思うんです。それが今、自然の中にあるものをいただくようになり、暦を意識するようになって、人は自然のリズムの中で生き、最後は自然の中に帰っていくもの。人は地球の一部なのだと感じられるようになったんです。

だからなのか、とても充実していますね。「日が昇った」「きれい!」「お昼ご飯を食べる」「おいしい!」「海に入る」「気持ちいい!」「いい汗かいた」「寝よう!」という感じで、毎日を一生懸命に生きている感じ。ある意味、将来について深く考えなくなりました。それがすごく心地いいんです。

それにハーバリストとして動き始めてから日本全国に薬草仲間ができ、沖縄、飛騨、東京、北海道などを訪ねる「薬草遠征」に出かける機会が増えました。山や畑に行き、仲間たちと延々植物を観察するのですが、そこでまた自然のパワーを感じ、師匠的な方々に野草についてのお話を伺う。その度に新しい知識を得て、ますますこの仕事にのめり込んでいます。

Q.これから、どんな活動を続けていきたいですか?

Q.これから、どんな活動を続けていきたいですか?

ありがたいことに、よもぎ茶が“ジャパニーズハーブティ”として海外の方にも喜ばれていて、アメリカ東海岸ではセレクトショップ、台北では2軒のカフェで取り扱っていただき、ヨーロッパやN.Y.などへのギフトとしてもよく使っていただいています。ここ数年で感じていることなのですが、日本の伝統や暦などに改めて注目が集まっているような気がしますね。原点回帰の時なのでしょうか。私も刻一刻と移り変わる四季の中で様々な植物に触れ、その素晴らしさをお伝えできたら嬉しい。「モノを売る」ではなく、「いいモノをシェアする」思いを胸に、これからもチャレンジし続けたいと思っています。

薬草ハーバリスト 加藤美帆

薬草ハーバリスト 加藤美帆

東京都出身。中学生からN.Y.で過ごし、東京の大学を卒業後、獣医師に。その後、栄養学を学ぶため移住したカリフォルニアで縁あって、スタートアップに携わる。2013年に糸島へ移住。2017年より薬草茶ブランド「suu」を立ち上げ、薬草ハーバリストとして、企業、カフェやサロンなどのドリンクプロデュースなども手がけている。

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