目次
- Q. まずは、中村さんの華々しいキャリアを教えてください。
- Q. 東京の第一線で働いていた頃に、ターニングポイントを迎えたそうですね?
- Q. そんな失意のどん底から、どうやって這い上がったんですか…!?
- Q. U・Iターン志望者への転職支援を事業に。その道を選んだ理由は?
- Q. 地元・福岡で働きだしてどうですか? 東京との違いはありますか?
- Q.「働く環境やプロセスを大事にしたい」。その言葉に懸ける想いとは?
- Q. 他社にはない、「株式会社YOUTURN」の魅力とは何でしょうか?
- Q. お金の価値観について、自分の中での変化はありましたか?
- Q. 福岡から地方創生を掲げていますが、今後の展望は?
- 株式会社YOUTURN 代表取締役 中村義之
「住みたい街」として常に上位にランクインする福岡。東京でスキルを積んだ人が、福岡にU・I ターンを志望するケースも年々増加傾向にあります。そんな中、移住者と福岡の企業をマッチングするサービスを“専門”で行い、地域を盛り上げようとする一人の経営者にフォーカス! 「株式会社 YOUTURN」代表取締役の中村義之さんに、自身の経験を踏まえた働き方のアドバイスと、地方創生への思いを伺いました。
Q. まずは、中村さんの華々しいキャリアを教えてください。
新卒でIT企業の株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社しました。そこから分社化するかたちで、ITのベンチャー企業の設立に参画し、26歳で取締役に就任しました。結婚式場の口コミサイトの運営でしたが、経営について教えてくれる上司も教科書もない状態でしたので、すべて自分で決断する毎日。不安もありましたが、ワクワクした気持ちが大きかったです。
創業当時は10人ほどだった小さな会社が3年半で東証マザーズに上場し、社員120人ほどを抱える企業へと成長。会社の立ち上げから経営、上場するまでのプロセスを若くして経験できたことは、いろんな意味で感慨深い出来事でしたね。
【29歳の頃、経営するIT企業が東証マザーズに上場】
Q. 東京の第一線で働いていた頃に、ターニングポイントを迎えたそうですね?
経営する会社が東証マザーズに上場。順風満帆に見えますが、上場がゴールじゃないんですよね。マネジメントの課題は山積みだし、目標売上高も倍増していく。これらを達成するために「もっと働かないと!」と、自分にプレッシャーをかけて追い込んでいました。
寝る時間を惜しんで働いていましたが、その結果体を壊し、不眠症になってメンタル疾患に…。パソコンを開くだけで頭痛、スマホを見るだけで目眩。壮絶でしたね…。会社に行ける状態じゃなくなってしまい、2014年秋に取締役を退任しました。
それから療養生活がスタート。「俺はこの3年半の間、何をやってきたんだ」「上場させたけど、果たして幸せだったのか」と自問自答。「これまでベンチャー企業の『成長』に固執して働いてきたけど、その価値観って正しかったのだろうか」と自己否定。絶望感に打ちひしがれていました。
Q. そんな失意のどん底から、どうやって這い上がったんですか…!?
とりあえず、日々ゆっくり過ごすことを優先しました。食生活や睡眠時間を改善し、たまに療養目的で旅行に出かけたりも。そこで訪れたハワイで、気持ちが吹っ切れましたね。ハワイの大海原をボ〜ッと眺めていたら、「俺はなんてちっぽけなことに身を削っていたんだろう」と、病気になってまで取り組むことではなかったなと思いました。
そして規則正しい生活を続けて、少しずつ元気を取り戻していきました。ある時、仕事での楽しかった思い出がふいに頭に浮かんだ瞬間があって、そこで改めて、「あぁ、俺は仕事が好きだったんだ。キツかったけれど、それ以上に楽しかった」と思えたんですよね。1年半ぶりに「仕事をしたい」という感情が芽生え、社会復帰に向けて動き始めました。
次に何をしようかなと考える過程で、「やりたいこと」と「やりたくないこと」をノートに書き出しました。
「やりたくないこと」の第一位は、「病気には絶対になりたくない!」ということ(笑)。療養中に旅先で、「自然豊かな場所で働けば、病気にならずに済みそうだ」と思ったことを思い出しました。IT業界なら場所を問わずに仕事ができるから、環境のいい場所で働けます。そして、地元・福岡に戻って起業することを想像した時に、めっちゃワクワクしたんです。仕事への前向きな感覚を、久々に味わった瞬間でした!
Q. U・Iターン志望者への転職支援を事業に。その道を選んだ理由は?
福岡では街全体でスタートアップを盛り上げているけれど、「(創業メンバー以外の)有能な人材が不足している」「採用が課題だ」と、みんな口を揃えて言っています。社員を募集してもなかなか集まらないから、経営者や人事担当者が個人のTwitterやFacebookで拡散して、直接会いに行って、口説いて……と、採用活動に苦労しています。面白い事業を起こそうとしても、人材獲得でつまずくのは、スタートアップの落とし穴ですよね…。
一方で、僕が東京で出会った人たちは「いつか地元・福岡に帰りたい」「福岡で暮らしてみたい」と口にする人がたくさん。だったら、そんな有能な人たちと、経験豊富な人材を求めている企業を繋げられたら、この街の社会に貢献できるんじゃないかと思いました。
つい最近思い出したのですが、そもそもキャリアを積んだ人を福岡に誘致することは、僕個人の願いでした。起業しようと動き出した2016〜2017年頃の手帳に、「仲間が欲しい」「優秀な人材が欲しい」と書いていたんです(笑)。同じように願う経営者がいっぱいいるから、移住×転職支援サービスは、ビジネスとして成立すると改めて確信しましたね。
Q. 地元・福岡で働きだしてどうですか? 東京との違いはありますか?
個人的な感覚ですが、福岡空港に降り立った瞬間、肩の力が抜けるんですよ。博多弁も心が和みます。その瞬間、東京ではずっとファイティングポーズを取って戦っていたことに気づかされます。
福岡にいるとリラックスできて、のびのびと素でいられますが、「この緩みがビジネスではデメリットとなるか?」と聞かれたら、答えは「NO!」ですね。刺激が足りないなら自分で作ればいいという考えですし、ファイティングポーズを取らなくても事業はうまく動かせるはず。活動の中身さえしっかりしていれば。
Q.「働く環境やプロセスを大事にしたい」。その言葉に懸ける想いとは?
以前は、誰かと比べて自己否定したり、上場しないと失敗だなんて思っていましたが、挫折を味わったことで、人生観や仕事の向き合い方が変わりました。
人には、「状態ゴール」と「獲得ゴール」という2種類の目標があると思うんです。
「状態ゴール」は“どうあるか”を指し、例えば「毎日ハッピーでいたい」など理想の状態のこと。「獲得ゴール」は“何を叶えるか”を指し、例えば「年収1000万円以上稼ぐ」など成し得たい物事のこと。
この2つを比べた時に、状態ゴールの方が実現しやすいし、人として幸福感を得やすいのではないかと思いました。だったら僕自身も、まずは状態ゴールを満たしていこうと思いました。
僕が毎日ハッピーでいられる状態ゴールは、
①自然に囲まれた場所で暮らしたい、②環境ストレスが低い、③食べ物がおいしい、④交通アクセスがいい、⑤近くに温泉がたくさんある…というもの。
それが福岡なら低コストで達成できます。この状態ゴールが満たされたうえで、何かを獲得できたら尚よし! でも、何も獲得できなかったとしても、状態ゴールが満たされているから基本的にハッピーだし、悔いはありません。人生への満足感も高いはず。
もちろん、獲得ゴールを重視した取り組みも素晴らしいと思います。ただ、「それが全てではないんだよ」「ビジネス業界の論理に縛られなくてもいいんだよ」と伝えたい。働き方や生き方の選択肢を、自分の経験を踏まえて発信できたらなと思います。
Q. 他社にはない、「株式会社YOUTURN」の魅力とは何でしょうか?
U・Iターン移住者への転職サービスに特化していることです。大手の転職エージェントでもUターン、Iターン向けの転職サービスは展開されていますが、僕らは専門でやっているので丁寧なキャリアコンサルタントができますし、一人ひとりに合わせた求人開拓もより深く訴求できます。移住×転職という人生を大きく変える節目になるので、専門会社として親身に相談に乗り、あらゆる手を尽くしています。
また企業に対しても、さまざまな経営課題の解決に結びつく人材を採用してほしいので、双方のマッチングに全身全霊をかけて取り組んでいます。
昨年、「100人福岡に移住させます!」と宣言しました。達成までまだまだ道のりは遠いですが、確実に一歩一歩近づいている感覚です。事業を始めた当初は新規登録者が月に5〜6名程度でしたが、今は多い月で130名増加することも。累計1400名の登録者がいるので、企業側が求める人材をリアルタイムに繋げられる状態になってきました。
【福岡への移住とキャリアを活かした転職を実現。体験者からの喜びの声が続々と届いている】
Q. お金の価値観について、自分の中での変化はありましたか?
手元にあるお金が、使えるお金のMAXではないと思っています。クラウドファンディングをしたり、株主から借り入れするなど、資金調達する手段もいろいろありますよね。
けれど以前は、株主から出資してもらうことが正直怖かったです。人様からお金を預かることへの緊張感と、絶対に返還しないといけないというヒリヒリしたプレッシャーも嫌で…。あと何より、資金がない(=お金がない)自分が惨めだと自己否定していたから。
けれど今は、ありのままの自分の状況を受け入れて、肯定できるようになりました。これからもっと、移住×転職支援の業績を伸ばしていきたいし、しっかり継続させたい。自分の心に嘘偽りなく取り組めているから、何かあったときには周りの人に「助けてほしい」と素直に言えるようになりました。出資していただくことも、ポジティブに捉えられるようになりましたね。
Q. 福岡から地方創生を掲げていますが、今後の展望は?
今は東京から福岡への移住×転職支援に特化していますが、このサービスを福岡以外の九州他県、そして全国の地方に広げていきたいです! いろんな地域で「人が足りない!」と声が上がっているんですよ。東北や沖縄の経営者の方からも引き合いがあるので、福岡で十分なモデルロールを築いて、他の地域にも貢献できるようにしていきたいですね。
株式会社YOUTURN 代表取締役 中村義之
福岡県福岡市生まれ。26歳で取締役としてベンチャー企業の設立に参画し、会社設立から3年半で上場を果たすも、病気のため退任。1年半の療養後、地元・福岡に株式会社YOUTURNを設立。地方から未来の日本をつくる事業や人材を応援する活動を開始。