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日に日に姿・形を変え、育てる楽しさを味わえる植物。最近は珍種を求める人が増え、ペットを飼うような感覚で愛情を注ぐ人も多い。そんなマニアックな植物愛好家から絶大な信頼と人気を誇るラン専門店が福岡市・薬院にある。「これがラン…!?」と驚くような品種がたくさん揃い、さらに佇まいのムードを高めるプロダクトも展開。県外客もわざわざ訪れる「PLACERWORKSHOP(プラセール)」、そこで出会えるランの魅力とはどういったものなのだろう?
さまざまな個性を持つ原生ラン。野性味あふれる姿が魅力!
自然界の植物の約1/4はランが占め、世界に2万種以上の原種が分布していると言われています。日本では開店祝いなどの慶事に贈られる胡蝶ランがメジャーですが、それはラン科の一部の品種。ほとんどは中南米やアジア、アフリカの森の中に生息し、木や岩に根を張って生きています。そんな野生的な原生ラン(原種のラン)を販売し、その生態と面白みを紹介しているのが「PLACERWORKSHOP」。全国の植物好きの間で一目置かれる存在です。
長年原生ランを探究しつづけるオーナーの内田さんは、一人ひとりのライフスタイルやタイプに合わせて、育てやすいランを紹介しています。一人暮らし、専業主婦、子供がいるか、帰宅は遅いか…など、育てる上での生活環境と植物を扱う経験値をヒアリングし、その人と相性がいいランを提案するのです。
スタジオプレパのガラス鉢(ハンギングタイプ)+ラン 4万5000円~
アトリエ兼店舗では150種類ほど取り扱い、原種の株を販売するほか、ガラス製の美しいポットや、オリジナルの真鍮スタンドなど、ランを育てる行為が楽しくなる+αのアイテムも揃えています。
せっかく手に入れたランを少しでも長く保つには、水をさす習慣、愛でる時間そのものを好きになってもらうことが大事だと内田さんは言います。そういう思いからラン以外のものにも力を入れ、最近は長野のガラス作家「STUDIO PREPA(スタジオプレパ)」に依頼して、オリジナルのガラス鉢を展開中。
「STUDIO PREPA」の吹きガラスは、1点1点手作業で丁寧に作られ、高感度な人々に大人気。ぽっこりとした丸いシルエットがかわいらしく、美しいグラデーションの色合いも心を惹きつけます。特別に作られたこのガラス鉢に合わせて、内田さんがランを見立てて植え込んでいるので、まさに「STUDIO PREPA×PLACERWORKSHOP」のコラボ作品。ランとガラスの組み合わせが珍しく、インテリア&植物好き垂涎の一点モノなのです。さらに天井や窓際に吊り下げられるハンギングタイプだから、部屋で存在感を放つこと間違いなし。
「花器でランの表情を豊かにして、お水をさす習慣自体も楽しんでもらいたいですね。値段は高いですが、こういったランの佇まいを好む人が、これから増えるんじゃないかなと思います」
枯らさずに育てられるように、相性のいいランを紹介する。
以前は、コルクやスニーカー、スケートボードに着生(ちゃくせい)させて、独創的でアーティスティックなランの佇まいを発信してきた内田さん。見たことのないマニアックな品種も多数揃えていましたが、この2〜3年で店舗としての考え方やスタンスが少し変わってきたとか。
「日本じゃ滅多に見られない品種や、尖った着生スタイルは多くの人から面白がってもらえました。けれど、安易に手を出して枯らしてしまう初心者の方がたくさんいらっしゃったようです。高価でマニアックな品種ほど、環境の変化に敏感。言葉だけで育て方を教授できるほど簡単ではありません。そういったランを育てるには、お客さんにも知識と経験が必要なんだなと痛感しました」
また、ここ数年で温室維持のランニングコストが高騰し、各農園や店舗の経営難が続いているそう。「そんな状況の中、意地とプライドで運営し続けている農園さんがいらっしゃいます。そこで大事に育てられた貴重なランを、僕たちが枯らすようなことはしたくないと思うんですよ。お客さんにとって育てやすいランを案内して、また育てることが楽しみになるきっかけを提案することが、販売店としての使命なのかも」と内田さん。
「ディネマ属 ポリブルボン」 2000円〜
標高が高いメキシコやブラジルで、岩の上などに着生している小さな品種。寒さに強く、屋外に置いてもわりと平気だそう。ちょっとした環境の変化にも対応できるタフなランなので、育て方のコツを学ぶファーストステップにおすすめ。プランターは、「studioYO(スタヂオ・ヨー)」によるプラセールのオリジナルプロダクト。
「バルボフィラム属 レムニスカトイデス」 4000円〜
根元のぷっくりした部分が幹で、ここから披針形(ひしんけい)の葉っぱが生えます。今はちょうど葉っぱがおちたタイミングですが、20cmほどの茎がひょろりと伸びて花を咲かせています。形が珍しく、妙にかわいげがあって微笑ましい。
「ファレノプシス属 クロバナノコドモ」 3000円〜
これは約10年前に内田さんが台湾で見つけた、ファレノプシスのクロバナを人工交配させて育てた「クロバナノコドモ」。3年の月日を費やして研究と検証を重ねたオリジナルの品種で、胡蝶ランの仲間。葉がピーンと元気なもの、根っこがしっかり張ったものは体力があって強い証拠。選ぶ時には花だけにとらわれず葉っぱや根も見ながら選びたい。
真鍮のスタンド 4万円〜、メキシカンシリンダー(器) 6000円〜
屋外に置ける植物も気になっているという内田さん。「アメリカやメキシコ、オーストラリアなどの海外で見てきた植物の在り方を実践したくて。現地で『この鉢いいね』『これ日本にないけどやったら面白そうだね』と感じた、新鮮で面白い育て方、飾り方を日本でも取り入れてみたいんです」
このスタンドには理にかなう点がいくつもあります。日本特有の肥沃な土地で植物を育てると、若い根っこが大好きなナメクジがたくさん発生し、鉢の下にもカビが生えて、植物を枯らしてしまうことに…。そんな屋外のデメリットをなくすために、内田さんは真鍮のポットスタンドを作りました。
地面と距離を開けることで水はけや通気性を良くし、ナメクジが苦手とする真鍮(銅)を100%使用しています。このスタンドだけで何十個ものジュエリーが作れるほど、真鍮を贅沢に使っているそう…! だからより一層すてきな風合いを醸し出すのですね。
ポットはメキシコの素焼き鉢。この薄く淡いベージュの色味が珍しく、室内外に馴染みやすいテイスト。深さのあるシリンダー型のポットなので、根が長い植物にも対応でき、真鍮との組み合わせも大人っぽくてセンスを感じます。徐々に真鍮の色が濃くなっていく経年変化を愛でられるのも楽しいはず。
・真鍮のスタンド Sサイズ4万円、Mサイズ5万円
・メキシカンシリンダー(器) Sサイズ6000円、Mサイズ1万円
「植物の楽しみ方を僕らの視点で伝えていこうと、鹿児島のAraheam(アラヘアム)と長野の STUDIO PREPA(スタジオプレパ)と一緒に、『Root Bound(ルートバウンド)』という企画イベントを行っています。“植物と多様な素材の調和”をコンセプトに、植物とそれにまつわるアイテムをその都度提案しているんです。GWには鹿児島の『Araheam』で開催し、その後は神戸、愛知、京都とキャラバン風に開催していく予定です」
※本文中の価格はすべて税抜き表示です。