趣味人File#04 「レコードに1000万円」
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趣味人File#04 「レコードに1000万円」

趣味とわたしとお金

最初は純粋に「好き」だったから。けれど歩み進めていくうちに、それはいつしか自分の「個性」となり、今では人生にとって欠かせない「宝」に。

今回の趣味人は、福岡市中央区警固で、「MUSIC&PUB FOOLS GOLD」を営む椛島翼さん。イギリスのパブを思わせる店内には、椛島さんがコレクションしてきたレコードがズラリと並びます。

会社員から、福岡の音楽シーンに欠かせないクラブ「keith flack」のディレクター、そしてミュージックパブのオーナーへ。レコードとともに歩んだこれまで、そして今後の夢についても聞いてきました。

今回の趣味人:「MUSIC&PUB FOOLS GOLD」オーナー・椛島翼さん

レコードを集め始めたのは18歳

レコードを集め始めたのは18歳

今、僕は34歳で、一般的には「CD世代」なんです。小学2年生の時、最初に買った音楽メディアもCD。そこから中学・高校も、手持ちのメディアはほとんどがCD。ジャンルは洋楽が中心でした。レコードに興味を持ちはじめたのは高校3年生くらいでしょうか。映画を観て「良い!」と感じた古い音楽をCDで見つけられず、レコードで探すようになって。1960年代のロックや、モータウンなどに代表されるソウルミュージックのレコードを買い集めるようになったんです。

田舎に住んでいたので、レコード探しは街に片道1時間半くらいかけて通っていました。レコード店やリサイクルショップなど、1日に10件近く回ることも。今はネットでサッと購入できますが、当時は足で探す時代。行ってみなければわからないし大変でしたけど、宝探し気分で毎回ワクワクしていました。
18〜25歳までは、とにかくレコードにつぎ込みました。月々の給料から5万円、ボーナスが出たら10万円とか。

手ぶらで帰ることはなかったですね。予算いっぱい使って、自分の好きなアーティストのもの、その関連ミュージシャンのもの、時にジャケットに惹かれたものなど手当たり次第に。事前に雑誌で情報収集して、買えば買うほど世界は広がる。楽しくて仕方なかったですね。

このアーティストに惹かれました

このアーティストに惹かれました

UKロックが好きなんですが、中でも好きなアーティストはポール・ウェラーです。手持ちのレコードの中でも、彼のものが一番多いかもしれません。もともとザ・ジャムというロック・パンクバンドのメンバーで、徐々にソウルフルな音楽もやるようになって、バンドの解散後に組んだ新ユニット、スタイル・カウンシルではジャズやヒップホップ的な音楽も。彼の音楽を追っかけながら、自分の音楽ジャンルもどんどん広がっていきました。

コレクションの中で存在感を光らせる1枚は…

イギリスのバンド、オアシスのレコードです。意外に思われるかもしれませんが、1990年〜2000年代初め頃の、いわゆる「CD全盛期」って、レコードのプレス数が極端に少ないんです。
オアシスも、僕らの世代なら大多数の人が知っているし、CD持ってるよ、と言われるくらいのアーティストなんですが、レコードはかなりレア。1994年にリリースされた「Whatever」というシングル曲のレコード(初版版)を見つけた時は飛び上がりました。ただし、通常シングル曲のレコードの定価が750円〜1500円のところ、プレミアが付いて8000円。それでも迷わず購入しました。今はもっと上がっているかも…。こんな風に価値の上がり下がりがあるところも、コレクターにはたまりません(笑)。

レコード集めが好きすぎて、ちょっと失敗したこと

休みの度にレコードを買い集めていたので、家の中はレコードだらけ。18〜23歳くらいまでは8畳一間の部屋に住んでいて、部屋の中はもちろん、廊下にもレコードが積み上がって、「これは地震が来たらまずい」くらいの状態に。その結果、数回の引越しを余儀なくされました(笑)。店を持ってからは、だいぶこちらに移せたので安心です。

レコードがきっかけで広がった世界

最初は単純に「音楽が好き」というところからスタートしましたが、レコードを集めるうちに世界中の音楽に触れ、様々な時代やジャンルの音楽をつないで「場」を作るDJとしての自分を楽しめるようになりました。福岡で約30年の歴史を持つクラブに転職して、ミュージシャン、ダンサー、アーティスト、集まってくれるお客さん、いろんな人との出会いを得られたことも、僕の財産です。クラブ時代には「踊ってもらえる」ことを前提にした音楽をかけることが中心でしたが、徐々にいい音楽をゆっくり楽しんでもらえる場を作りたいという思いが芽生え、店を持ちました。
こうした自分の人生の流れも、レコードの存在あってのことだなと思います。

レコードに費やしたトータル金額

レコードに費やしたトータル金額

もはやはっきりとした金額はわからないのですが、レコード、CDを合わせて1000万円くらいでしょうか。探しに出かけた交通費なども含めると…大変ですね。でもこれからも、めげずに買い続けます(笑)!

レコード好きのこれから

レコード好きのこれから

18歳でレコードにはまり、25歳でクラブ業界に転職した時点で、将来ずっと音楽と付き合いながら生きていきたいと考えて、それなら自分の店を持つべきだと貯金を始めました。兄と同居して家賃を節約し、食事は気前のいい先輩にご馳走していただきながら(笑)。それで目処が立ったのが30歳。ただ、ディレクションなど責任のある仕事も任せてもらっていたので、きちんと恩返ししたいと思い、そこからさらに2年勤めて独立しました。

店は2019年の6月で2周年です。音楽が好きな人はもちろん、詳しくない方でも楽しめるような店にしたくて、例えばレモンを使ったドリンクを多数用意しています。これは店名が、イギリスのバンド、ザ・ストーン・ローゼズの曲に由来していて、彼らのアルバムジャケットの多くにレモンが登場するから。そこから会話が広がって、「じゃあそのミュージシャンの曲、かけてよ」という流れに持っていけたら嬉しいじゃないですか。

来年は、20歳からの夢だった「イギリス、音楽の街巡礼の旅」を実現しようと思っています。店を持つまで本当に休まず働いたので、やっとです。1週間くらいで、ロンドン、リヴァプール、マンチェスターあたりを回りながら、現地のレコード店なども覗けたら…。レコードにつぎ込む人生は、まだまだ続きそうです(笑)。

MUSIC&PUB FOOLS GOLD

福岡県福岡市中央区中央区警固1丁目1番1号 清賀ビル202
TEL:092-707-1615
営業時間:18:00~翌3:00
定休日:不定休あり
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