世界3周+その他たくさんの旅に1200万円かけた趣味人
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世界3周+その他たくさんの旅に1200万円かけた趣味人

趣味とお金とわたし

目次

「最初で最後」と35歳の時にチャレンジした世界一周の旅。でもそれが、人生に欠かせないライフワークへと繋がっていきます。

今回の趣味人は、福岡市中央区六本松の「蔦屋書店」で「旅のコンシェルジュ」を担う森卓也さん。これまでに世界3周・127ヵ国を旅してきた達人に、そのきっかけ、醍醐味について聞いてきました。

今回の趣味人:旅のコンシェルジュ・森卓也さん

35歳で決意した、世界一周旅行

35歳で決意した、世界一周旅行

はじめての海外は高校の時に修学旅行で訪れた韓国です。その後、大学時代に2ヶ月間、ドイツに短期留学したこともありましたが、あとは国内旅行ばかり。今と違ってLCCもなかったですし、海外イコールお金がかかると思っていましたからね。大学が東京だったので、ヒッチハイクで帰省したり、仲間と青春18きっぷを使って北海道に行ったり、車で東北を一周したりして楽しんでいました。20代の間に、国内は全県制覇したんじゃないかな。

 そんな自分が35歳で世界一周に出ようと思ったのは、大学時代に母、そして30代に入って父・祖母と、身近な人たちを相次いで亡くし、「自分の人生にもいつ、何が起こるかわからない」と感じたから。またこのころは精神的に縮こまっていた時期なので、広い世界に対する欲求もあったんです。

最初の世界一周は、全てが手探り

最初の世界一周は、全てが手探り

準備期間は約半年くらいだったでしょうか。旅の期間は1年間と決め、航空会社の世界一周チケットを買って出かけました。出発までにあらかじめルートを決めておかねばならないチケットだったので計画がちょっと大変でしたけど、香港、東南アジア、インド、ヨーロッパ、アフリカ、中南米、北米というルートで世界一周。この旅では、例えば教科書に掲載されている有名な場所や、好きな小説の舞台になった所など、それまで写真で見たり、聞いたりしたことがあった場所を中心に回りました。知識と体験をつなげたかったんです。

初めてなのでさぞいろんなアクシデントがあるだろうと思いきや、あまりなかったですね(笑)。アクシデントと思わなかっただけかもしれません。というのも、ある程度「こんなことは起こるだろう」ということは予想していて、例えば東南アジアでぼったくりや詐欺に狙われるとか、アフリカでクーデターが起きて進路を変更するとか、ほとんどが予想内。失敗したのは使い捨てのコンタクトレンズを張り切って3年分持って行ったことくらいかな(笑)。今考えるとメガネで十分だし、海外でも購入できるのに、心配しすぎでした。そのうちに、現地調達の楽しさも覚えてどんどん身軽になりました。

【1週目の旅で訪れた、中米・ホンジュラスの町、コパン。マヤ文明の遺跡が残り、世界遺産にも登録されている】

帰国してすぐまた2周目の旅へ

帰国してすぐまた2周目の旅へ

初めての世界一周を終えた時、「全然足りない!」と思ったんです。旅先ではゲストハウスに宿泊し、世界中から集まる旅人たちとの意見交換も楽しみのひとつなのですが、それぞれに旅のスタイルがあり、あそこはこうだった、あっちは…と聞くたび、世界にはまだまだ素敵な場所や体験が待っていると思うと、いても立ってもいられなくなりました。それですぐに二周目の旅に出かけることに決めました。最初が点を置いていく旅だったとしたら、次はその余白を埋めていくような旅。旅にもずいぶん慣れ、とにかく選択の基本が「一番安いもの」とシンプルになっていたので、一周目よりもグッと予算は抑えられたと思います。と同時に、楽しさや充実感は、費やしたお金の大小とは比例しないことを実体験しながら知る毎日でした。

【2週目で訪れた西アフリカのベナン共和国】

世界一周旅行の予算は?

実はちゃんと把握していないんです…。ただ、私がイベントで話す世界一周のモデルでは、バックパッカーならアジアで都市間の移動費込みで1日3000円。ちゃんとお湯が出るなど、ある程度のきちんと感が欲しい方は9000円くらい。ヨーロッパならそれぞれその倍。先進国と途上国を3:7くらいの割合で回るモデルを立てるとすると、一周約200万円で、自分はその後も働きながら年間50万~150万円くらい旅に使っているので、今までのトータルは1200万円くらいでしょうか。ちなみに総務省家計調査によると単身世帯の1年間の平均生活費が204万円。それを踏まえると、世界を一周する1年と、日本国内で生活する1年とは費用的にあまり変わらない。むしろ、使ってないかも?

 旅のお金に関して言えば、自分の場合、できるだけ各国のハレとケを体験するようにしています。基本は安宿に宿泊し、ローカルな食堂で食事をするのですが、国ごとに一度は高級レストランでも食事をするようにしたり。あとヨーロッパでは美術館やオペラ、バレエ、コンサート鑑賞にも積極的に出かけますね。自分が旅に出る理由は、「知らないことを知る、世界最高のものを体験すること」なので、メリハリも大事だと思っています。

【旅先で民族衣装を買い集めるのが趣味。右手のジャケットはタイ北部の民族衣装を、バンコクの古着屋で購入】

「旅のコンシェルジュ」に就任

2回目の世界一周を終えたのが38歳。その時点で人生のファーストプライオリティは「旅」で、友人の店などで短期で働きながら、まとまったお金ができたらまた出かける、みたいな暮らしを3,4年続けていました。そんな時、2回目のインドを旅しました。実は一度目で病院送りになり、二度と行くものかと思っていたのですが、旅の経験を積んだので、もうインドも楽しめるだろうと。リベンジで挑んだんですが、やはりその時も過労で倒れました(笑)。インドの良さ、素晴らしさを体感できる印象深い旅でもあったんですけどね。

そんなこともあって、自分の中で「ちょっと変わり時かもしれない」と感じ、そのことを友人に話していたら、まもなくオープンする六本松の蔦屋書店がスタッフを募集していると。それでプロジェクトの段階から入社しました。現在は社員として旅の書籍の選定、売り場管理、お客様の旅の相談、旅のイベント企画、外部企業とのコラボレーション、雑誌や新聞への書評の提供や、テレビをはじめとするメディアへの露出など、旅に関するすべてのことが業務範囲です。

それでも旅は、やめられない

それでも旅は、やめられない

蔦屋書店のコンシェルジュとなってからは以前ほど長期の旅行は難しくなりましたが、連休が取れたら2日でもアジア、ロシア方面へ。1日でもチャレンジ的にソウルや沖縄に出かけてみるなど旅への意欲は衰えていません。2018年には、三回目の世界1周旅行へも出かけました。この時は「旅のコンシェルジュ」としてお客様によりよい情報を提供するべく、会社の理解をいただいて、訪問しやすい国・エリアを中心に15日間で世界一周してみました。過去の2回と比べて極端に短い世界一周ですが、そのギャップも面白かったですね。イラクのクルド自治区やキプロス共和国、カタール、サン・マリノ共和国など興味のあった地域にも新たに訪問でき、実りあるものになりました。詳しくはぜひ店頭でお話したいと思いますので、旅の話が好きな方は気軽に声をかけてください(笑)。

 今でも年間で約70日、トータル150万円くらいの予算を投入しつつ旅をしているのですが、毎回楽しみなのが、35歳の時、最初に降り立った香港で感じたような「なにもかもが違う」という高揚感を味わう瞬間。そこから始まるいろんな出会いに胸を膨らませる瞬間が好きなんです。あと旅人って、ちょっと特殊な存在で、様々な層の人と触れ合うことができるんですよね。例えば、未だ階層制度が残るインドでは、現地の人たちが層を超えて付き合うことは難しいけれど、旅人だと、どの層の人も意外とすんなり受け入れてくれる。それによって見聞も広がる。そのためにも旅の前にはその地域についての本を読んである程度知識を入れて出かけたり、現地の言葉、簡単な挨拶を覚えたりしています。あとはやっぱり旅は「自由」をくれます。仕事がない自由、何時に起きて何をしてもいい自由、習慣や決まりごとからの自由。自分の中にある偏見からも自由になれる。自分という人間を知るには、旅が一番だと感じています。

【その国にまつわる小説、文化、建築、民俗学の本など、様々なジャンルの本を持ち歩く】

【3周目では、イラクのクルド人自治区へも】

旅に出て変わったこと

旅に出て変わったこと

もともと温厚な方だとは思うのですが(笑)、旅を重ねることにより「許せる範囲」はどんどん広がっているような気がします。旅先では、自分は部外者です。周囲の環境や文化を変えようとしても、できっこない。だからそこをうまく乗り切って先へ進むには、自分を変えるしかないんです。そういった思考の切り替えも、旅で学びました。あとは自分が「幸せを感じること・もの」もはっきりと見えてきたかな。大切なのは時間や人との関わり、物を持つことはあまり自分にとって重要じゃないな、とか。

 旅の相談にいらっしゃる方の中には、旅に出たい気持ちを持つ一方、自分にブレーキをかけている方も意外に多いんです。確かに言葉や文化が違う国ではストレスを感じることも多いし、思い通りにならないこともたくさんあります。でもそこにぶち当たって、折れたり諦めたりしながら得られることもたくさんある。その中で自分の価値観がガラリと変わる瞬間を味わうのも楽しいかもしれませんよ。

これから訪ねたい国は?

世界で一番近くに火山が感じられるという南太平洋のバヌアツ共和国、南米でまだ訪れていないガイアナ三国。以前行きそびれた西アフリカの残りの国、難関な中央アフリカの国々、そのほかの未訪問国、南極、そして宇宙(本気です)…ほかにもまだまだたくさん。行きづらければ行きづらいほど、「実際はどんな場所で、どんな空の色で、どんな人々が暮らしているんだろう」という気持ちを掻き立てられます。

 これからもできる限り、現地に足を運んでいけたら。そうして経験したこと、楽しんだこと、感動したことを、たくさんの人にお伝えできたらと思います。

30代で世界一周の旅を経験し、以降、旅を中心に暮らす。これまでに127ヵ国以上を訪問。2017年より「六本松 蔦屋書店」に「旅のコンシェルジュ」として勤務しながら旅の魅力を伝えている。六本松 蔦屋書店で月に一度の定期イベント「ロクマルトリップ」をはじめ、ジャンルを越えたイベントを開催中。2019年には旅の写真展も開催予定。

HP【六本松 蔦屋書店】
Instagram【旅のコンシェルジュ 森】

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