地域の中でギャップを探す、新しい仕事「地域文化商社」とは?
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地域の中でギャップを探す、新しい仕事「地域文化商社」とは?

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福岡県八女市にある「うなぎの寝床」は、筑後地方一帯のものづくりを紹介し、販売をするアンテナショップです。さらに2017年には、他の地域のものづくりを紹介するショップとして、近くに「旧寺崎邸」がオープン。日本全国に地域に着目した店はたくさんあるものの、こちらはなんだか佇まいが違っています。その理由を知りたくて、代表の白水高広さんを取材しました。

Q.「うなぎの寝床」が他のアンテナショップと違って見えるのは、なぜでしょうか?

Q.「うなぎの寝床」が他のアンテナショップと違って見えるのは、なぜでしょうか?

それは僕が「店」に興味があって始めたわけではないからかもしれません。もともと建築をやっていたこともあって、コンセプトをしっかり作るということから始めました。

どの地域にも、いろいろな人がいて、資源があって、土地性があるものです。筑後地方はものづくりが盛んなので、アンテナショップは必然的にものづくりを扱うことになりました。それをまとめて見ることができる場所があれば、地域文化が見えやすくなるのではないか?というのが、最初から考えていたことです。そしてこのモデルは、きちんと土地性を把握できれば、他の地域でも可能だと考えています。

またいわゆる「アンテナショップ」には、その地域のものはオールオッケーな雰囲気がありますよね? 僕は、地域のものがすべていいものだという前提条件に立っていません。

伝統工芸って情緒的に語られることが多いのですが、後継者のことも含めてほとんどが経済の問題です。作り手と土地、そして経済がうまく噛み合えば、文化として続けていくことができると考えていて、その可能性があるものをセレクトしています。

Q.そのうまく噛み合った例が「MONPE」なのでしょうか?

知ったのはたまたまでした。物産館にあった久留米絣のもんぺを試着してみたら、すごく着心地がよかったんです。それでいろいろリサーチしてみると、歴史もおもしろいし、意外にカラーバリエーションも豊富。「これはいろんな人が興味を持ってくれるかも」と考えてイベントを開催したら、3日間で1500 人もの人が来てくれ、250万円ほどの売上になりました。一度だけのつもりが、要望に応えるうちに9回を数えました。

さらに型紙を展開したり、細身の現代版もんぺの人気が出たり。そうこうしているうちに、最初は久留米絣の織元さんに発注していたのがキャパシティを超えてきたので、一緒にオリジナル生地を開発して、工場を探して製造をしてもらい、全国に卸していくうちに、もんぺメーカーになりました。

Q.ものを通して、実際に循環が生まれた感じですね

僕は、この会社を「地域文化商社」だと考えています。地域のものを研究して、現代で通用するような方法を探って、経済的な循環を生み出すことが仕事。以前商社論についての本を読んだのですが、それがすごくおもしろくて。「商社の仕事はAとBの差額・ギャップを埋めること」だと書いてありました。

もんぺでは、まさにこの意味での商社の仕事ができました。もともともんぺは6500円くらいで売られていました。実はこれ、労働力と交換価値がちゃんと見合っていない、売ってもだれも幸せになれない価格でした。それが今では1万2000円くらいで売れるように。5年でもんぺのギャップを埋めることができました。適正な交換価値が生まれたのだと思います。

いずれ織元さんたちが直接この価格で売ることができるようになれば、僕たちは要らなくなります。その時は、役割が終わった時。ひとつのことに固執せずに、この「ギャップ」をたくさん探すことが仕事かな?と考えています。

Q.一方、筑後地方以外のものづくりを紹介している「旧寺崎邸」。こちらはどのようなお店ですか?

Q.一方、筑後地方以外のものづくりを紹介している「旧寺崎邸」。こちらはどのようなお店ですか?

「世界・日本のリファレンスショップ」と位置づけています。もちろんものを売る機能もありますが、あまり地元を離れることがない地元の職人さんたちが、他の地域のものづくりを参照し、インスピレーションを感じてもらうという点も大切にしています。人のことを知らなければ、自分たちのことも知ることができませんから。オランダのデザイナーが日本の風呂敷からアイディアを得て作った「フロシキシキ」や、新潟県燕市のカトラリーなど、日本や世界で作られているプロダクトを扱っています。

僕たちがやっているのは、セレクトショップではないなぁと思うことがあります。例えばこの中で売れるカトラリーは3種類くらい。これがあれば店としては成立するのに、うちは乱暴に全種類扱います。ロブスターフォークなんて、まず売れない(笑)。

しかし量を見ないと判断できないことって、けっこうあるんですよね。ものを作っている人たちの「仕事を見せる」という気持ちで置いているので、在庫ではなく、地域の資源や技術の総量として考えているところがある。だから、「博物館に置いてあるものが、全部買える」というのがイメージに近いかもしれませんね。

Q.お金が介在することで、ものは違って見えますか?

これがけっこう重要で、博物館の展示物はそこまで切実に見ることがなくても、ひとたび値段がつくと、自分の生活の延長上に置かれます。値段としてきちんと価値を見えるようにするというのは、「うなぎの寝床」を始めた時から考えていたことでした。

ところが店をやってみて、値段をつけるとみんな「使うもの」としてしか見ないという側面があることも分かってきました。僕たちが産地や作り手のことを知ってほしくて、たくさん説明をつけていても、「これ、どうやって使うんだろう?」と、情報としてではなく、ものとしてしか考えなくなる。

そこで今年新たに「UNAラボラトリーズ」通称”うなラボ”を立ち上げました。こちらは、情報や体感を取り扱う会社にしたいと考えています。研究と出版、ツーリズムなどに取り組んでいく予定です。

Q.さらに地域と別の繋がり方ができるわけですね。白水さんにとって、筑後地方のおもしろさとは?

Q.さらに地域と別の繋がり方ができるわけですね。白水さんにとって、筑後地方のおもしろさとは?

僕はここの土地性が面白いと思っています。9万年前に阿蘇山が大爆発をして、その細かい粒子の火山灰が堆積して遠浅の有明海ができた。海を干拓した後に、畑の塩を抜くために綿が植えられ、それから久留米で織物が栄えたり、竹と和紙が合わさって八女で提灯が作られるようになったり。火山からできた土地が天草陶石という有田焼にも使われる原料になり、八女ではそれが石灯篭となる。筑後川と矢部川が定期的に氾濫するので、土地が豊かになり農業が盛んになる。そしてそれを流通させる、久留米商人の存在がある。

いまこの地域に産業として伝わるものは、土地の理由があって生まれたものが本当に多いことがわかります。どこの土地にも、忘れられている背景があるんです。

この面白いものが、知られずになくなっていくのを避けたいと考えています。知ってもらう環境をつくり、作り手と使い手のマッチングまでが僕の仕事。交流や交易の先に起こることまでは、僕がコントロールする必要はないかな。

うなぎの寝床 白水高広

うなぎの寝床 白水高広

大学で建築を学んだ後、厚生労働省の雇用創出事業「九州ちくご元気計画」で主任推進員として働く。その後2012 年にアンテナショップ「うなぎの寝床」を立ち上げ、現在まで地域文化商社として成長させている。その他地域・他社のコンサルティングや制作、アドバイス、リサーチなども精力的に行っている。

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