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「お金」について、毎回決まった質問にさまざまな分野で活躍する方々に答えていただくmymoの人気企画「お金にまつわる10の質問」。
第11回目は、福岡でベーカリー「アマムダコタン」、「パスタ食堂 ヒラコンシェ」、「カフェ ヒラコンシェ クラシック」、ドライフラワー専門店「コテ ジャルダン」などを営む平子良太さん。8月中旬には「アマムダコタン」隣にイートインススペースもオープン。今後の展開にもますます意欲を見せる平子さんに、10の質問、投げかけてみました。
①いま一番欲しいものと、その価格、理由を教えてください
「もの」。…う〜ん、「もの」に関しては、今は特にないですね。その代わり、やりたいことならたくさん。例えば将来、海外にも店を出したいのでその資金とか…。出すならイタリアがいいですね。これまでイタリアに日本のお店が進出するとなると、星付きのリストランテとか、ラーメン、うどんなどの業態が多かったように思うんですけど、僕はパスタを主役にしたお店をやってきたので、それが本場のイタリアでどれくらい評価されるのか挑戦してみたいです。でも海外に店を出すとなると、手続きなどもろもろ含めてかなりの額が必要になるでしょうね。単純にお金があればできるという話でもないでしょうし…。なので、現実的にはまず東京に行ってみたいです。
《パスタは、南薬院の「パスタ食堂 ヒラコンシェ」、警固本通りの「カフェ ヒラコンシェ クラシック」で味わえる》
②いまどんなお財布を使っていますか?
東京の「ARTS&SCIENCE」で購入した財布で、3年くらい使っています。価格は5万円くらいだったかな? 豚革の質感が珍しいのと、自然の柄がかわいい。中は蛇腹みたいになっていて、僕は蓋側にお札を入れています。こっちの方が出し入れしやすいんです。モノを買うときは、使いやすさよりデザイン性重視ですね。バッグなんかがディスプレイされてあっても、デザインを見て「あ、かわいい」と思ったバックの機能性しか気にならなくないですか?
③いま1万円渡されたら、何に使いますか?
スタッフへの差し入れですね。今、全部で30人くらいいるんですけど、みんなすごく頑張ってくれているので。となると、1人あたり約300円。コンビニでおやつを買うか、スターバックスでドリンクを買って、足りない分は自分で補填します(笑)。
④これまでに一番有意義だったと思うお金の使い方はなんですか?
28歳で独立して、最初に店を出す時に使ったお金ですね。平尾駅近くのビルの3Fで、内装などは全部自分でやったので70万円くらいしかかからなかったのですが、有意義だったと思います。
《店舗の内装は、今も平子さん自らが手がけることが多い。柱のディテールひとつとってもこだわりが》
⑤反対に、一番失敗したと思うお金の使い方はなんですか?
失敗、しているんでしょうけど、すぐ忘れちゃうんですよ…。店に関することにはきちんと計画を立てて、慎重にお金を使うタイプなので、あまり失敗はないかもしれないけど、個人的には服でも家電でも「欲しい」と思ったらすぐ買っちゃうのでいろいろ失敗しているんでしょうね…でも、思い出せません(笑)。
⑥これまでにした一番高い買い物を教えてください(家・車以外で)
買い物というか、最初の店から次へ移転した時にかけた金額ですかね。1000万円くらい借金をして、自分の貯金が数千円しか残らないくらいまで全部つぎ込みました。最初の店が本当に小さくて、もともと2、3年くらいで移転しようと思っていたんですけど、その時は勝負に出ましたね。移転時は本当にカツカツになりましたけど、店が広くなり、しっかりと世界観が作り込めたことで、今につながっています。
⑦これにはお金を惜しまないというものは何?
アンティークの家具・雑貨とか、その時にしか手に入らないものですね。僕は料理人なんですけど、お客さまにはうちの世界観すべてを感じ取ってもらえたらと思っているんです。それも料理を楽しむためのスパイスというか…。インテリアも食材と同じように、きちんと下ごしらえしなければならないもののひとつ。なので、その世界観を表現してくれると感じるものにはお金を惜しみません。
《キツネの頭はアンティーク。ドライフラワーのネックレスは、平子さんが慕うプラントアーティスト・川本諭さんからのプレゼント》
店づくりで一番影響を受けたのはジブリ作品なんです。「ジブリ飯」ってあるじゃないですか。「天空の城ラピュタ」で、パズーが食べる目玉焼きのトーストがめちゃめちゃ美味しそうに見える、とか。実際はトーストに目玉焼き半分なんですけど(笑)、世界観やストーリーが美味しく見せている。時代背景や衣装とか、すべてがあって美味しく見える。僕もそうした世界観を作ってこそ、自分の料理が生きると思っているんです。
あと僕は高校を卒業して1年間ホテルの厨房で働いて、そこから上京したんですけど、東京では、カフェとかふぐ料理屋さんとか5店くらい転々としたんです。その中で、あまりルートにこだわりすぎず、いろんなジャンルや考え方を取り入れながら完成に向かうことが面白いと思うようになりました。東京から長崎に戻り、姉が営むアンティークショップを手伝って、ヨーロッパに買い付けに行ったりしたことも、 今の自分の世界観を養うのにすごくいいプロセスだったと思います。
⑧自分なりの独自のお金ルールはありますか?
先行投資をすること。僕はお金だけでなく何に関しても、「使わないと返ってこない」と思っているんです。それは決して精神論ではなくて、意味のある使い方をすれば、成果は返って来ると実感しています。あとは本末転倒なことをしない。例えば「節約」って、意外と労力を使いますよね。「この電源、ちゃんと切っておかねば」とか。店を運営していくには大切なことかもしれないけど、個人レベルだと、がんばっても月に数千円とかの節約にしかならない。そこに労力を使うなら、自分で動いて稼いだ方がいいんじゃないかな、と思うんです。
⑨お金は貯める派? 使う派?それはなぜ?
個人的には使う派ですけど、会社の代表としては貯める派ですね。8月にオープンするイートインの店で6店舗目になり、スタッフも40人に。そうなると、それぞれの暮らしも考えなければならないし、今後何が起きるかわからないので。ただ、店のためにいいことであればしっかり使います。例えば「アマムダコタン」では、開店2ヶ月くらいでオーブンを買い換えたんです。火の入り方が良くなくて。工夫次第では何とかなるかもしれなかったし、業者の方にも店が軌道に乗った1、2年後に買い換えてはどうですか?と提案されたんですが、僕は2年間を我慢してやり過ごすより、1日でも早くいいものに切り替えて、お客さんに満足いただいた方が、店にとってもいい結果が得られると思いました。最初のオーブンが400万円。買い換えたものも400万円でしたが、迷いはなかったですね。この辺りはプライベートにも言えるのですが、本当に欲しいものがあって、手元に手に入れられるお金があるなら、先延ばしはせずに手に入れます。そうして幸せな時間を長く過ごした方が絶対に有意義だと思います。
⑩お金はあなたにとってどんな存在ですか?
夢を叶えてくれる存在。ただ持っていても意味がなくて、夢を得るための引換券のようなものだと思います。最近、年金問題とかも報じられて、誰もがお金を使うことに消極的になっていますよね。でもこんな時こそ、みんなが一斉にお金を使って夢を得るようになると、世の中すごく楽しくなるんじゃないかな。ただ、かなり大きな歯車が目に見えるくらい回転し始めないと、怖くて誰も乗っからないかな(笑)。
アマムダコタン 平子良太(ひらこりょうた)
1983年長崎県生まれ。高校卒業後、長崎のホテル厨房に勤務し上京。3年間を過ごし、長崎に戻ってアンティークショップに勤務。その後、福岡の飲食店に入社して1年で料理長に。28歳で「ヒラコンシェ」をオープン。現在は、福岡市内にイタリアン、カフェ、ドライフラワー専門店など6店舗を展開。
アマムダコタン
住所:福岡市中央区六本松3-7-6
TEL:092-738-4666
営業時間:10:00〜19:00
休み:水曜