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「お金」について、毎回決まった質問にさまざまな分野で活躍する方々に答えていただくmymoの人気企画「お金にまつわる10の質問」。
第14回目は、福岡・今泉で昼はミュージックスタンドカフェ、夜はバーとして営業する「como es(コモエス)」の代表・西田陽介さん。話を聞けば聞くほど「それって1人の人生ですか?」と返さずにはいられないほど経験豊富。きっとこれからも、その好奇心は止まることのない西田さんに、お金にまつわる10の質問、投げかけてみました。
① いま一番欲しいものと、その価格、理由を教えてください
猫の首輪です。実は2ヵ月くらい前に、店にガリガリの子猫が迷い込んできて、サンマの缶詰をあげたらすっかり懐いてしまい、飼うことになったんです。名前は「さんま」(笑)。首輪はこれまでに4回購入したんですが、近くの林で遊び回るからか、気が付いたら外れていて。首輪を付けていないと野良猫と勘違いされて処分されたりするので、早急に「取れにくい首輪」を手に入れなければと思っています。予算は1000円とか2000円とか? ちなみに店のアカウントとは別に、「さんま」のアカウントでインスタグラムも始めたのですが、「見ました!」とお客さんが遊びに来てくれることが増えて、もしや本物の招き猫かも? 今では「さんま」様様です。店を作った時の廃材でステップ付きの小屋を作ってあげたり、ごはんもグレードアップさせたり、今、一番の投資案件です(笑)。
《上.店の外に作った「さんま」の部屋。/左下.部屋の主人は、気持ち良さそうにお昼寝中でした》
② いまどんなお財布を使っていますか?
友人からもらった革カバーのマネークリップです。でも7,8年ほど使っていたものが2週間くらい前に壊れちゃいまして、次どうしようと考えているところ。正直、財布自体にはあまりこだわりはないのですが、中にいつも、尊敬するチェ・ゲバラの顔が入ったキューバのお札を入れるのがこだわりでしょうか。
31歳から約2年間、50カ国を巡るバックパッカーになったのですが、キューバには必ず行くと決めていて、その目的がこれでした。キューバでは、現地民用のお金と観光者用お金の2種類があって、これは現地民用の3ペソ札。現地の方の間でも今ではほぼ出回っていない貴重なものなんです。首都のハバナではとにかく銀行を回って両替してもらおうと試みたのですが、ほとんどの場所で守衛から「お前もゲバラのお札目当て?」と門前払い。もしくは「もっと田舎に行かないと残っていないよ」と言われて、結局バラコアという一番東の海沿いの街まで行ったんです。でもそこでもダメで…。ついに諦めて、宿の主人が野球をやるというので、僕も小中高と野球をやっていたこともあり、リフレッシュしようと参加したんです。すると思いのほか活躍して、翌日もメンバーに(笑)。そのうち、「何でキューバに来たの?」という話からお札のことを伝えたら、「明日ここへ行きなよ」と紙を渡されて。翌日訪ねると、そこは銀行で、入口の守衛が先日の野球のチームメンバーだったんです。それで中に案内されると、担当の女性から「あんたがイチロー?」と。試合の間、僕、「イチロー」って呼ばれていたんですよね(笑)。それで、「野球で活躍したって聞いたよ。それであなたが探しているのはこれでしょ?」とゲバラのお札を出してくれたんです。しかもピン札を10枚。もう大興奮で、「ぜひ両替して欲しい」と申し出たら、「これは、野球で活躍してくれたお礼で、私たちの気持ち」と、そのまま譲ってくれたんです。以来、財布には1枚必ず入れて、お守り代わりにしています。あと「この人は何か革命を起こしてくれそう」と思える人に出会った時は、エールを送る思いを込めて1枚渡すようにしているので、残りは5枚くらいかな。
③ いま1万円渡されたら、何に使いますか?
最近、ものすごく手羽先が食べたいので、その1万円でめいっぱい食べたいですね。タイプは、甘くてジューシー系ではなくて、塩味で皮がパリッと系。昔、母親がよく作ってくれていたんですけど、ふと思い出して。おすすめの店があれば、ぜひ教えてください(笑)。
④ これまでに一番有意義だったと思うお金の使い方はなんですか?
旅ですね。僕は29歳までレコード屋をやっていたのですが、同時にイベントを仕掛けたり、ラジオパーソナリティーも7年ほど務めさせてもらっていて、ちょっと“やりきった感”があったんです。それで、一度福岡から出てみようと考えたんですが、東京じゃないなと。じゃあどこだろうと思っていた時に、たまたま世界一周をしている方のブログを見てしまって。それで、31歳から2年間、世界50カ国を巡る旅に出ることにしました。
30代なので、旅のスタイルもメリハリのあるものにしようと500万円を用意しましたが、結局使ったのは300万円くらいですね。僕は、小さい頃から親が驚くほど貯金上手だったのですが、この時のお金も「いつか何かをする時のために」とコツコツと貯めていたものでした。世界一周、最高でしたよ。若い頃の旅とはまた違って、吸収できることも違うと思いましたし。この2年間で一生分のネタも作れました。例えば…最後に訪れたラスベガスでは、勝ったらニューヨークに行こうと臨み、残金20万円を全て賭けたら見事2倍に!とか(笑)。おかげで本場のブルーノートでライヴも鑑賞できて、いいフィナーレが飾れました。
《上.旅の間は、カメラを3台抱えながら、さまざまな風景や人物を撮影。キラキラした眼差しが印象的だったインド・バラナシで出会った女の子/右下.モロッコのマラケシュで宿泊した宿の鍵に付いていたチャームに惹かれ、オーナーに取扱店を聞いて同じものを購入》
⑤ 反対に、一番失敗したと思うお金の使い方はなんですか?
18歳くらいの時に英語を学びたいと思っていたら、偶然書店で、英会話教室の方がキャンペーンをしていたんですね。普段なら、一度持ち帰って検討するのになぜかその時は、その場で30万円くらいの契約をしてしまったんです。しかも入校して結局行ったのは3日くらい。以来、「学校で英語を習うのは向いてない」と思ったんですが、世界一周の旅の前に挑戦したセブ島留学はものすごく自分にマッチしていて、クラスでも成績の伸び率が一番だったんです。ちなみにセブでもたくさんのいい出会いがありました。もし18の時に入校した学校で成績が伸びていたらセブに行くことはなかったでしょうから、結果オーライですね(笑)。
⑥ これまでの人生で一番高い買い物を教えてください(家・車以外で)
オーディオ機器ですね。スピーカーもそうですけど、僕は曲作りもするので、MTR(マルチ・トラック・レコーダー)やMPC2000というサンプラーなど。どちらも20代の頃に買ったものですが、MPCには一番いいカスタムを施したので当時で40万くらいしました。合わせて60万円くらいでしょうか。今はそれらがまた進化したMACHINEというものを使っています。これはMPCとはまた違う音源や音色が入っていたり、パソコンに繋いで使うこともできるハイテク機器ですね。
⑦ これにはお金を惜しまないというのは何?
これからの話なんですが、山登りをしたいので、ギアにしっかり投資したいと思っているところです。昔、アウトドアショップで働いたこともあって、九州の主要な山にはほぼ登っているのですが、久しぶりに自分の中にその波が来ていまして。次は雪山をソロで登るのが目標。
店ができてからは、ここにいるといろんな人が来てくれるし楽しいんですけど、たまには1人で雪山に登り、朝からゆっくりコーヒーを挽いて飲むのもいいなと。ちょっと余裕ができたのかな? とにかく、その山系のアイテムにはいいモノを揃えたいところです。
《「como es」は西田さんと、建築士の近藤さんの共同経営。「古い建物に自分たちで手を入れ、店にすることができたのも、経験と共感する気持ちを持つ仲間がいたからこそ」と西田さん》
⑧ 自分なりの独自のお金ルールはありますか?
親の方針が「まず、一番良いものを見ること」だったんです。例えばコンサートに行く時も、席はA席ではなくてS席を取れよ、とか。食事に行く時にも、まずはそのジャンルの中で一番評判がいいところで食べてみるとか。そうじゃないと基準がわからないからと。その考えは僕もしっかり引き継いでいるかもしれません。
⑨ お金は貯める派? 使う派?それはなぜ?
貯めて使う派ですね。目の前に何かチャンスがきた時に逃したくないので。例えば誰かのお祝い事が東京であるとして、ちょっとしか会えないとわかっていても、そこには交通費云々を考えずに行きたい派です。貯金のコツは…なんでしょう。ちゃんと働いて無駄遣いをしなければ貯まりませんか? ちなみに僕は、高校を卒業してすぐにホテルのバンケットサービスで働いて、DJをやってレコード屋をやって…という感じでしたけど、常に楽しく働いて節約した感じもない中で、すぐにではないにせよ、世界一周に行ける貯金は作ることができました。人によって感覚が違うので、こればっかりはコツを伝えるのが難しいですね(笑)。
⑩ お金はあなたにとってどんな存在ですか?
自分の人生を満たしてくれるもの。うちは父が自営業で、決して裕福な方ではなかったと思うんですが「今日は中華に行くぞ」となったら、奮発して連れて行ってくれたり、夏休みになるとお給料をそっくりそのまま下ろして来て、車で日本一周旅行に出かけたりするような家だったんです。常に「今、手元にあるお金を最高に楽しく使うコツ」をわきまえた大人がそばにいたおかげで、小さい頃からお金に良いイメージをもたせてもらえたことは、本当に良かったなと思いますね。自分も同じように、自分がやりたいことをやるためのツールとしてお金を上手に使っていけたらと思っています。
como es(コモエス)西田陽介
1976年福岡市生まれ。高校卒業後、ホテルのバンケットスタッフ、クラブスタッフ、アウトドアショップスタッフ、レコード店オーナー、バックパッカー、音響スタッフなど様々なプロセスを経て、2018年12月1日にミュージックスタンドカフェ&バー「Como es」をオープン。毎週日・月曜日には、2Fギャラリースペースにて映画を上映する「Como es cinema」を開催中。
como es
住所:福岡市中央区今泉2-1-75
TEL:092-516-3996
営業時間:11:00〜23:30(日、月曜は〜18:00、シネマ20:00〜)
休み:火曜