アビスパ福岡サポーター活動に、5年で500万円かけた趣味人
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アビスパ福岡サポーター活動に、5年で500万円かけた趣味人

趣味とわたしとお金

お金は、あればあるだけよく、貯めれば貯めるほどよいというものではない。やはり使いみちがあってこそ、本領を発揮するものだ。趣味の世界に、情熱と時間と、そしてお金を費やしている人たちがいる。その幸せなお金の使いみちを聞いてみた。

今回の趣味人:アビスパ福岡 サポーター 工藤慎也

野球少年だったはずなのに

野球少年だったはずなのに

アビスパファンになったのは、小学2年生の頃、いとこにスタジアムに連れて行ってもらったのがきっかけです。僕は小中高と野球をやっていたんですけど、それ以来、観るのはサッカーが好きになって。実家もスタジアムの近くだったので、高校生くらいになると1人でもよく観に行っていました。

サポーターになったのは大学3年生の夏です。友人と自由席で観戦していたら、サポーターチームの「ウルトラオブリ」の人に「今日、一緒に応援せん?」と誘われて。正直最初は、「一緒に応援することに、意味ある?」と思っていたんですが、ゴールした時に一緒に盛り上がったり、応援歌を歌ったりするうちに楽しくなってきて。試合後に「また今度ね!」みたいな感じで連絡先を交換して、そのうち横断幕を張るのを手伝うようになったりして、少しずつ飲み会や忘年会、次シーズンの打ち合わせにも参加するようになり…。気がつけばキックオフの3時間前からスタジオ入りするような完全なるサポーターになっていました(笑)。

《「一緒に応援しよう」と最初に話しかけられた日。試合に勝ち、びっくりするくらい盛り上がったそう。工藤さんは後列中央》

ホームは皆勤賞。アウェイ遠征もできるだけ

「ウルトラオブリ」には、下は中学生、上は50代くらいまで、総勢70名くらいのメンバーがいるのですが、その中に僕たちみたいな20代を中心にした若手チームみたいなのものがあるんです。アウェイ(県外)の応援には、その仲間たちとよく行きますね。岐阜や山梨、千葉、群馬、埼玉などの関東圏へも車で。幕や太鼓も一緒に運ぶので、車の方が楽なんです。大概、夜に出て朝着いて、試合を見てまた夜に帰るという強行スケジュール。観光する時間はほぼないのですが、ご当地グルメを味わうくらいのオプションは楽しんでいます。ちなみにホーム(レベルファイブスタジアム)での試合に関しては、僕は今年、皆勤賞です。九州内での試合も必ず行きます。広島くらいまではもはやホームの感覚なんです。

《これまで行ったことのある場所を、仲間から教えてもらった「制県伝説」というアプリで可視化》

アビスパに費やしたお金

「ウルトラオブリ」に入って今年で5年目。試合は年間に42くらいあって、半分がホーム、半分がアウェイ。ホームはシーズンチケットを利用しているのでそこまでお金がかからないのですが、遠征が増えると交通費がかかって大変ですね。時々ユニフォームやウェアも買いますし、サポーター活動全体として考えると、なんやかんやで年間100万円くらいは使っているかも…。毎月、給料が入ったら、翌月のアウェイの日程を見て予算をとって残りを使うみたいな習慣がすっかり身につきました。100万×5年だとしてこれまでに500万円! でも、金額以上に得るものがたくさんあるので、後悔は全くないです。

《「ウルトラオブリ」の代表がデザインをしたMA-1は2017年に購入。胸元のステッカーは若手チームでカスタマイズ。「1着1万円くらい。普通に着られるデザインですし、暖かいのでプライベートでも重宝しています」》

クラウドファンディングにも挑戦

クラウドファンディングにも挑戦

昨年、クラウドファンディングに挑戦しました。観戦席を埋め尽くす15×90mくらいのサイズのビッグフラッグというのがあるんですけど、1枚200万円くらいするので自分たちで準備するのが難しくて。発起人はリーダーなのですが、僕は実行委員として、企画書を作ったり、スタジアムでビラ配りをしたりして広報活動を行い、結果、240万円を集めることができました。フラッグは中国の会社に発注して作ってもらったんですが、完成後、手元に届いた時は感無量でしたね。ちなみにクラウドファンディングの協力者へは、Tシャツやステッカー、ビッグフラッグへの名入れをリターンとさせて頂いたのですが、みなさんに喜んでもらえたみたいでひと安心です。

《セランテス選手のユニフォームは、サポーター仲間と彼への横断幕(「今は厳しい状況にあるけど、一緒にがんばって乗り越えようぜ、俺たちは味方だよ!」のメッセージ入り)を掲げていたところ、その存在に気がついたセランテス選手から感謝の気持ちとしてプレゼントされたもの。代表して工藤さんが保管している。ちなみにその時の横断幕は、ホームセンターで1ロール2000円くらいの養生シートを購入し、スプレーでペインティングしたそう》

アビスパ・サポーターの魅力

何でしょうね。とにかく「来て体感してくれ」としか言えないです(笑)。例えば年に数回、スタジアムがひとつになる日があるんですよ。選手がすごく熱いプレーをしてくれた日とか。それをまず体感して欲しいですね。あとはやっぱり仲間が増えることがサポーターであることの最大の魅力かもしれません。今では試合の時だけでなく、プライベートでもサポーター仲間と遊ぶことが多くなりました。いろんな世代、いろんな趣味を持っている人がいるので、BBQやサッカー、ソフトボール、ゴルフなんかのスポーツも一緒に楽しんでいます。熊本地震の際は、皆でボランティアに行かせてもらいました。

他のチームとの交流もありますよ。以前、試合後に、皆で近所のスーパー銭湯に行き、湯船で「今日の試合は良かった」なんて話をしていたら、後から入ってきた人から「ウルトラオブリのメンバー?」と尋ねられて。聞けば、彼らは東京ヴェルディのサポーターだったんです。対戦相手でしたし、初めは距離を取っていたのですが、彼らも車で遠征していると聞いて一気に距離が縮まりました(笑)。それから東京遠征の際は、彼らと飲むのも楽しみのひとつになりました。

サポーターとして気をつけていること

これはあくまで僕個人の思いなのですが、「仕事」じゃないところが難しいですね。例えば、皆で試合のためにある準備をしよう、となって、仕事ならやって当たり前だと思うんですけど、サポーターの活動って、皆、好きでやっている「遊び」の部分だと思うので、それが負担になりすぎてもいけない。僕自身は、動くのが大好きなので苦にならないのですが、全員がそうではないと思うので、人を巻き込む際は、その辺り気を付けようと思っています。

《試合当日に横断幕を作ることも多々。工藤さんはイラストやデザインも得意で、制作を担当することも多いとか》

サポーターとしてのこれから

サポーターとしてのこれから

今後もアビスパ福岡というチームがある限り、サポーターを続けて行きたいですね。目標は、やっぱりJ1優勝の場面に立ち会うこと! 仲間みんなで、自分たちの子供を連れて、アジア大会に行くのも夢です。

アビスパ福岡 サポーター 工藤慎也

1994年、福岡市生まれ。小学校から高校まで野球に親しんできたが、その一方でサッカー観戦も楽しみ、中村学園大学在学中に、「アビスパ福岡」のサポーターチーム「ウルトラオブリ」の一員に。社会人になった現在も、平日夜や土日を利用して活動している。