さらに延長!?教育資金贈与の特例いつまで?どう活用すればお得?
目次
政府・自民党は令和5年度の税制改正大綱で、教育資金の一括贈与の特例を3年間延長するという方針を発表しました。普段、なかなか耳にしない言葉ですが教育資金の一括贈与とはどのような制度なのか?またどのように活用すると良いのかを紹介します。
※2023年2月現在の情報を元にしています。今後の国会審議で最終的な方針が決まるため、変更の可能性があります。
2023年3月に期限を迎える予定だった「教育資金の一括贈与の特例」
父母や祖父母から子供や孫へ、教育のための資金を非課税で贈与できる「教育資金の一括贈与の特例」が、2023年3月に期限を迎えます。平成25年4月からスタートした制度で、現行の特例制度は今年3月に終了予定でしたが、この特例を延長しようという動きが出ています。
そもそも教育資金の一括贈与の特例とは?
「教育資金の一括贈与の特例」は、子供や孫に教育資金を贈与する際、子供や孫一人あたり1500万円までは非課税とする特例です。この特例は上の世代(祖父母・親)から下の世代(子・孫)へ教育資金を非課税で贈与できる制度を導入することで、世代間での資金の移動を促す目的もあります。この特例の主な特徴は下記の通りです。
1.1500万円までの教育資金の一括贈与であれば贈与税がかからない
2.暦年贈与や相続時精算課税制度と併用できる
3.学校以外の習い事などへの支払いは500万円が上限
4.金融機関に専用口座を開設し、資金の出し入れは専用口座を使用する
一括贈与の特例と言う名称ですが、専用口座を通じて行えば、一括ではなく数度に分けて贈与しても大丈夫です。非課税で贈与できる総額が1500万円までとなっており、一度に1500万円でも、最初に300万円、その後300万円を贈与という使い方でも問題ありません。
一括贈与の特例の条件・対象・適用期間は?
一括贈与の特例は平成25年にスタートし、延長を重ねて令和5年(2023年)3月で終了予定でした。今回、改めて適用期間が見直され、令和8年(2026年)3月まで適用される予定です。その他の条件についてまとめます。
その他、受贈者が30歳になった時点で専用口座内に残っていた資金は贈与税の対象になります。また贈与者(祖父母・親)が亡くなった際、教育資金贈与の残額は相続財産として加算され、相続税の対象になります。加えて受贈者(子・孫)が法定相続人でない場合は相続税の2割加算の対象になります。ただし受贈者が23歳未満、在学中、教育訓練受講中の場合、相続税は課税されません。
どのようなケースが適している?
大きな金額を非課税で子や孫に贈与できる「教育資金の一括贈与の特例」ですが、どのようなケースが適しているのでしょうか?
1.まとまった資産を孫に送りたい方
自分の思いをお孫さんに直接届けたい祖父母の方にとって、この特例は非常に有効な手段です。金融機関にお孫さん名義の専用口座を作成し、使用目的も教育および習い事などに限定されているため無駄遣いされることもありません。
教育費は人生の三大支出と呼ばれ、進学先により変わりますが、一般的に子供一人当たり1000万円~1500万円の教育費が必要と言われます。この教育資金の一部でも直接送ることができれば、祖父母にとっては非常に嬉しいことでしょう。「自分が元気なうちに」という方にとっては良い制度だと思います。また親御さんからお子さんの教育資金の贈与について相談を受けられたら、この制度を活用することを考えてみましょう。
2.相続対策として
相続時に発生するのが相続税です。相続税には基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の人数)がありますが、その基礎控除を超える財産を保有していれば相続税が発生します。相続税を減らすためには相続財産を圧縮する必要がありますが、その際の有効な手段のひとつが生前贈与です。教育資金の一括贈与の特例を使うことで、非課税で生前贈与でき、財産を圧縮できるため相続対策にもなります。
教育資金の一括贈与の特例の注意点は?
メリットがたくさんある教育資金の一括贈与の特例ですが、注意が必要な点もあります。
① 一度贈与した資金を返金してもらうことは非常に困難
手元に余裕があるということで贈与したものの、余裕がなくなったため贈与した資金を返金して欲しいという希望を叶えるのは非常に困難です。そのためまとまった金額を贈与する場合、贈与する側に相当の金融資産が残っているかどうか注意しましょう。
② 受贈者の年齢に注意
受贈者が30歳を迎えると特例が終了します。使い切れずに残った資金は贈与税の対象となり、金額によっては多額の納税が必要になることがあります。そのため、子供や孫の年齢、通っている学校の学費などを考慮して贈与金額を考えましょう。
③ 金融機関に専用口座を作る必要がある
教育贈与は、銀行や証券会社に一括贈与用の専用口座を作らなければなりません。この専用口座に贈与者からの資金を入金し、金融機関に教育費の領収書を提出することで専用口座からの払い出しができます。この手続きをすることにより、贈与税がかからなくなります。一般の口座でやりとりすると特例の対象にはならないので注意しましょう。
まとめ
最大1500万円までの教育資金をまとめて贈与できる「教育資金の一括贈与の特例」。金融資産に余裕がある方にとっては良い制度です。またそれほど金額が大きくなくても使い道が教育資金に限定されるので、無駄遣いもなくなります。ただし一度贈与すると、後から返金してもらうことが実質できないなどのデメリットもあります。2026年3月まで申請期間が延長される予定のため、この機会に考えてみるのはいかがでしょう。