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2024年の住宅ローン、金利が上昇すると返済額はいくら変わる?

かりる 権藤 知弘

2024年の住宅ローン、金利が上昇すると返済額はいくら変わる?

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マイホーム購入を検討する上で頭を悩ませるものとして「住宅ローンはどうするか」という問題があります。欧米では利上げが盛んに行われ、日本でも「いよいよ金利が上がるかも」という声も聞こえています。2024年、住宅ローンや家選びをどうするべきか考えてみましょう。

住宅ローンの3要素

住宅を購入する際に利用するのが住宅ローンです。借り入れた金額を長期にわたって返済していくため、金利や返済期間などによって返済額に大きな違いが出ます。借入額や金利、返済期間の違いで、総返済額や毎月の返済額がどれくらいの違いになるかを試算してみました。(※ボーナス追加返済は適用しない)

借入額

借入額が少なければ返済額は少なくなり、多くなれば返済額も多くなります。

例1)金利1%、返済年数:35年(返済月数420カ月)

<借入金額:3000万円・4000万円・5000万円で比較>

返済金利

金利が高ければ返済額は多くなり、低ければ返済額は少なくなります。

例2)借入金額:3000万円、返済年数:35年返済(返済月数420カ月)

<金利:0.5%・1.0%・1.5%で比較>

返済年数

返済年数が短ければ総返済額は少なくなりますが、一回あたりの返済額が多くなります。返済年数が長ければ、一回あたりの返済額は少なくなりますが、総返済額は多くなります。

例3)借入金額:3000万円、金利:1%

<返済年数を25年・30年・35年で比較>

いかがでしょうか?借入額・金利・返済年数の組み合わせにより、毎月の返済額や総返済額がどう変わるのかお分かりいただけたと思います。

住宅ローンの金利の種類

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住宅ローンを検討するときに一番気になるのは返済金利だと思います。そもそも論になりますが、金利や利息とはなんでしょうか?

金利や利息は、お金を借りたり貸したりするときに出てくる言葉です。「利息」とは、お金を借りた人が貸した人に対して支払う一種の料金で、借りた金額に応じて支払う割合が変わります。そして、その支払いの割合を示すのが「金利」で、これは通常「パーセント(%)」で表現されます。金利が高いほど、追加で支払うお金も多くなります。簡単に言えば、お金を借りたときに発生する追加のお金のことを「利息」、その割合を示すのが「金利」です。

住宅ローンは「元金と利息」を合算した金額を返済していきます。金利が高ければ利息も多くなり、毎月の返済額や総返済額が膨らみます。そのため基本的には金利が低い方が望ましいと言えます。そこで気になるのが住宅ローンの金利のパターンです。

現在、住宅ローン市場で取り扱いがある金利のパターンは大きく3つに分かれます。

1)    変動金利型

返済期間中の金利が半年ごとに見直されます。一般的なメリットは、同じ時期の固定金利型よりも返済開始時の金利が低くなること、返済額が少なくなることです。デメリットは途中で金利が変動し、金利が上昇した場合に返済額が増加してしまうことや、借入れ後に金利が急上昇した場合、未払利息が発生する可能生があることです。

2)    全期間固定型

よく知られている「フラット35」に代表されるローンが全期間固定型です。返済開始から返済終了までの期間、金利が変動せずに同じ金利・同じ返済額が続きます。最大のメリットは返済額が全期間で変わらないことで、返済計画が立てやすいことや途中で市場の金利が上昇したとしても返済額に影響がないことです。一方、現在の金利水準から比較すると金利が高めになっていることや、市場の金利が下落したとしても返済額が変わらずその恩恵を受けられないことなどがデメリットと言えるでしょう。

3)    固定金利期間選択型

返済開始から任意の期間、金利が固定されており、固定期間終了後に返済方法を再度選択するという金利のパターンです。メリットは返済開始から最初の固定期間の金利が低めに設定してあり、固定金利と変動金利の良いところ取りをしたいといったニーズに対応しています。なお固定期間は5年や10年を選択する人が多いようです。

どの金利タイプにも特徴があり、最終的には住宅ローンに対する考え方や生活スタイルによって選ばれているようです。

固定金利上昇とその背景

フラット35などに代表される固定金利型の住宅ローンの金利は、「長期金利」の変動に影響を受けます。この「長期金利」は、主に債券市場の相場によって決定され、その中でも国が発行する「10年国債の利回り」が代表的な指標となっています。

10年国債を簡単に表現すると、国が発行している10年間のお金の借り入れ契約のことです。10年経つと、最初に借りたお金(元本)が返されるだけでなく、その間には発行時に約束された金利で、一定期間ごとにお金(利子)ももらえます。国債は、発行されると、債券市場と呼ばれる場所で売買できます。したがって、人々が欲しいと思えば価格が上がり、需要が少なければ価格が下がります。この取引によって、国債の利回りも変化します。

2023年4月に日本銀行の総裁が代わり、金融緩和政策の修正がありました。その結果、マイナス金利の影響で長らく低い水準になっていた長期金利が、少しずつではありますが上昇しています。その影響で、フラット35などの固定金利型の住宅ローンも上昇したのが2023年の傾向でした。この傾向は2024年も続くと考えられており、固定金利の住宅ローンの返済金利も上昇する可能性があると思います。

変動金利の動向とその背景または理由

固定金利型の住宅ローンが上昇した2023年でしたが、変動金利型の住宅ローンの金利は極めて低い水準で推移しました。特に目立つのはネット銀行が提供する変動型の住宅ローンで、一部の金融機関では0.3%を切るような商品も提供されています。

変動金利型の住宅ローンの金利水準は、「短期プライムレート」という指標をもとに決められています。この短期プライムレートは1990年代半ばから変わっていません。この短期プライムレートが変わらなければ、変動金利型の住宅ローンの金利水準も大きく変わることはないと考えられています。また現在の住宅ローンは、変動金利型を選択している人が7割程度と言われているため、住宅ローンの金利が上昇すると多くの人に影響が及ぶと予測されています。加えて金融機関同士の競合も激しく、顧客獲得のためのサービス合戦になっているマーケットの状況を考えると、2024年以降も変動金利の水準は現状を継続するのではないかと考えられています。

返済中に金利が上昇すると、返済額はどれくらい変わる?

ローン返済
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変動金利型の住宅ローンで、返済中に金利が上昇するとどれくらいの影響があるのでしょうか?ここでは3つのパターンを比較してみます。

借入金額を3000万円に設定、返済期間を35年、変動金利型、返済開始時の金利を0.5%とし、金利が維持される場合と途中で金利が上昇する2パターンで比較してみましょう。

①    借入金額:3000万円、返済期間:35年、変動金利:0.5%が返済終了まで継続
②    借入金額:3000万円、返済期間:35年、変動金利:0.5%で返済開始、10年ごとに0.5%上昇
③    借入金額:3000万円、返済期間:35年、変動金利:0.5%で返済開始、5年ごとに0.5%上昇

筆者作成

いかがでしょうか?最初の5年は同じ返済額でスタートしていますが、途中から大きな差ができています。毎月の返済額もさることながら、総返済額も大幅に異なります。今後、もし変動金利の返済金利が上昇することがあれば、大きな影響が出ることは避けられないでしょう。

返済期間中に変動金利が上昇…対策は?

変動金利で借りている場合、返済期間中に変動金利が上昇する局面があったとして、有効な対策はあるのでしょうか?正直に申し上げれば、繰り上げ返済以外にできることはありません。

繰り上げ返済とは、月々の返済とは別にまとまった額を返済する方法です。利息は返済する元金に対して発生するので、繰り上げ返済を行って元金を減らし、毎月の返済額もしくは総返済額を減らす効果を狙います。

借り入れ前の段階であれば、考えていた金利と上昇した金利で試算を行い、返済に問題がないかを確認しましょう。もし支障があるようであれば、住宅の予算を減らしたり、時期をずらしたりするなどを検討する必要があるでしょう。

住宅ローンを選ぶときの判断基準・ポイント

住宅ローンを選ぶための基準はいろいろありますが、筆者は以下の点に注目しています。

1.毎月・毎年の維持費を含め、そもそも家の購入費は適正か?

住宅ローンの選択の前に、維持費を含めた住宅にかかる費用が適正かどうかを考えましょう。近年は不動産価格が上昇し、家の取得金額が上がっています。また不動産を所有すると、固定資産税・修繕費・管理費などの維持費が必要です。「毎月の家賃と同じ金額でマンションが買えます」といった広告を目にすることもありますが、返済以外の維持費を考えると難しいのではないでしょうか?

想定する価格と維持費がどれくらいなのかを計算し、まずはフラット35などの固定金利で返済していけるかを判断しましょう。その際は子どもの教育費が準備できるか、貯金ができるかも合わせて考えましょう。

2.変動金利と固定金利、どっちを選ぶ?

どちらにもメリットとデメリットがあるので、まずは維持費を含めた住宅の総予算が一番重要だと思います。その上で返済金額が変わらないことがメリットと判断すれば固定金利、金利が変わるリスクを負うが返済金額がとりあえず少ない方が良ければ変動金利になるでしょう。

固定金利と変動金利、どちらを選ぶかは借りる人がコントロールできます。一方で、返済している住宅ローンの金利をコントロールすることはできません。このリスクをどう考えるかは、あなた次第です。

住宅ローン控除の適用条件に注意

住宅ローンと言えば、住宅ローン控除は切っても切れない関係です。2023年12月25日現在、この住宅ローン控除適用条件が2024年から厳しくなる予定です(子育て世帯向けの優遇措置あり)。条件が厳しくなるのは新築住宅で、どのような家なのかによって控除額が変わります。

引用:国土交通省HPより一部抜粋

新築住宅では戸建て・マンションを問わず、最低でも省エネ基準に適合していなければ、2024年以降は住宅ローン控除を受けることができません。なお中古住宅は、2023年と変わらず従来通りになっています。

まとめ

おさらいになりますが、金利の選択の前に、まずは維持費を含めた住居の予算を決めましょう。住宅に使える費用が仮に10万円だったとして、固定資産税や管理費、修繕積立金、火災保険の費用などの維持費を月割りにして毎月3万円かかるのであれば、返済に回せる費用は7万円になります。維持費を含めて考えることが重要です。

固定金利型

固定金利型は返済開始時に設定された金利がその後一切変動しないため、将来の支払総額が確定します。支払総額が事前に確定するため、将来にわたって明確な返済計画を立てることができます。将来の支払いに計画性を持ちたい方には、固定金利がおすすめです。

変動金利型

変動金利型は、余裕のある方やリスクをとれる方に適していますが、金利急騰には注意が必要です。一部の期間では固定金利よりも低い金利となり、お得になることもありますが、逆に金利が上昇する期間も考えられます。その際は金利支払いが増える可能性もあるので、変動金利型を選択する際は金利の動向に敏感になりましょう。

なお「最初は変動金利を選び、金利が上昇傾向になったら固定金利に切り替える」という声を聞くことがありますが、この方法は大きなリスクを伴います。なぜなら、変動金利が上がる前に、固定金利が先に上昇する傾向があるためです。

もしも金利がわずかでも上昇すると生活が厳しくなるということであれば、予算を見直したり、余裕資金が準備できるまで住宅の購入を控えたりするなどの対策が必要です。今後のライフプランを考え、固定金利や変動金利の特徴や違いがどのようなものかを理解して、どちらの住宅ローンが良いかを判断しましょう。

住宅ローンに関するQ&A

Q:ネット銀行の住宅ローンはおすすめですか?

A:ネットでの取引に抵抗がなく、建売住宅やマンションなどであれば金利の低いネット銀行はおすすめです。対面でじっくり相談して決めたいという人には向いていませんが、最近ではオンラインで相談できるネット銀行も出てきました。ネット銀行を利用する際に活用してみましょう。

Q:今後住宅ローンの金利は上昇しますか?

A:分かりません。一例になりますが、2023年12月発表の大手銀行4行における10年固定の住宅ローンは3行が引き下げ、1行が引き上げを行いました。金融機関の中でも判断が分かれていることを示しています。なお各銀行とも、短期金利と連動する変動型の住宅ローン金利は据え置いています。このことから金融機関も難しい判断を迫られているように感じます。