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自営業者の老後資金、国民年金基金はメリットある?損益分岐点はいつ?

そなえる 中村 賢司

自営業者の老後資金、国民年金基金はメリットある?損益分岐点はいつ?

日本の公的年金制度は、2階建てといわれています。1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金。国民年金の加入者は、自営業者やフリーランス、学生で(第1号被保険者)、厚生年金は会社員や公務員です(第2号被保険者)。年金が2階建ての会社員や公務員は老後の年金を手厚くもらえますが、1階部分しかない自営業者やフリーランスは老後の年金が手薄なので将来が少し不安です。

そんな自営業者やフリーランスにとって強い味方となるのが「国民年金基金」。2階部分のない自営業者が自助努力で2階建て部分を作ることができる年金制度です。国民年金基金の給付種類は、いろいろなタイプがあり、少し分かりにくい制度なので敬遠されがちですが、税制優遇などもあるのでり自営業者の老後資金づくりのための制度としてはとても魅力的な制度です。

1.国民年金基金とは

老夫婦
【画像出典元】「 Monthira/Shutterstock.com」

国民年金基金は、第1号被保険者である自営業者やフリーランスが加入できる制度です。掛金は国民年金と同様に60歳まで支払い、年金給付は65歳から受け取ることができます。

加入条件は、20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生などの第1号被保険者および60歳以上65歳未満の国民年金の任意加入者です。会社員や公務員に扶養されている専業主婦(第3号被保険者)は加入することができません。また国民年金の保険料を免除されている方も加入することはできません。

国民年金基金には、「地域型」と「職域型」の2種類があります。地域型とは全国47都道府県で加入できる制度で、職域型とは医師や弁護士・税理士・社会保険労務士など専門職の人たちが加入できる制度です(職域型は現在25職種あります)。

2.給付の種類や毎月の掛金額は?

国民年金基金の加入は口数制で、毎月の掛金や受け取る年金額、給付の種類については加入者が任意で選択します。すなわち何口加入するかによって将来受け取る年金額も変わってきます。給付の種類は、終身年金と確定年金の2種類があり、確定年金には5年、10年、15年の3タイプがあります。

1口目は必ず終身年金を選択しなければいけません。その終身年金にはA型(15年間保証期間付)とB型(保証期間なし)の2種類のタイプがあります。

加入する年齢にもよって掛金や年金額は変わりますが、30歳でB型(保証期間なし)に加入した場合、毎月の掛金は8,990円、65歳から受け取れる年金は毎月2万円です。40歳で加入した場合は、毎月の掛金が1万1,040円で、65歳から受け取れる年金が毎月1万5,000円です。

3.2口目からは「終身」か「確定」を選べる

1口目は終身年金しか選べませんが、2口目からは終身年金か確定年金を選択することができます。

・A型:終身年金(15年保証)
・B型:終身年金(保証期間なし)
・Ⅰ型:65歳支給開始15年確定年金(15年保証)
・Ⅱ型:65歳支給開始10年確定年金(10年保証)
・Ⅲ型:60歳支給開始15年確定年金(15年保証)
・Ⅳ型:60歳支給開始10年確定年金(10年保証)
・Ⅴ型:60歳支給開始5年確定年金(5年保証)

長生きすることに自信がある方は、1口目と同じように終身年金A型もしくはB型を選択すると良いでしょう。確実に年金を受け取りたいという方は、確定年金の選択をお薦めします。

例えば30歳の方がⅠ型に加入した場合、毎月の掛金は1口3,635円、65歳から受け取れる年金は毎月1万円となります。

4.30歳から加入した場合の損益分岐点は?

レジでの支払い
【画像出典元】「 Pixel-Shot/Shutterstock.com」

それでは実際に60歳まで払う掛金の累計額と、65歳から受け取る年金額を比較してどれぐらいお得かを試算してみます。

例)30歳男性の場合

・1口目(終身年金B型)

【掛金の累計額】毎月8,990円を30年間支払う
8,990円 × 12カ月 × 30年間 = 323万6,400円

【受け取る年金】毎月2万円の年金を65歳から14年間受け取った場合
2万円 × 12カ月 × 14年間 = 336万円

上記のように65歳から受け取りはじめて79歳で支払った掛金の元が取れます。それ以降は、長生きすればするほどお得ということです。

仮に90歳まで生きた場合、受け取る年金の累計額は600万円となり、支払った掛金の約2倍の年金を受け取ることができます。

・2口目(確定年金Ⅰ型に1口加入)

【掛金の累計額】1口の掛金3,635円を30年間支払う
3,635円 × 12カ月 × 30年間 = 130万8,600円

【受け取る年金】1口あたり毎月1万円の年金を15年間受け取る
1万円 × 12カ月 × 15年間 = 180万円

15年確定年金なので80歳までしかもらえませんが、支払った掛金の約1.4倍にあたる年金を受け取ることができます。

1.4倍増えるといわれるとすごくお得感がありますが、これを年利率に換算すると「約0.9%」となります。たったの0.9%です。今の低金利時代にはとても魅力的な年利率ですが、30歳の人が今から50年後の80歳まで0.9%で金利が固定されることは、今後金利上昇があると仮定すると、それを享受できないことは少し損をした気分になりますね。

5.国民年金基金のメリット、デメリット

通帳と現金
【画像出典元】「candy candy/Shutterstock.com」

国民年金基金の最大のメリットは、掛金の所得控除です。生命保険会社が販売する個人年金保険とは違い、掛金が全額所得控除になるわけですから節税効果は絶大です。ただし加入限度額があり、毎月6万8,000円までしか加入することができません。それでも年間最大81万6,000円を所得から控除できるので、所得税・住民税を併せて20%課税されている方の場合、ナント年間16万3,200円の節税効果があります。

この節税効果分を加味した場合、終身年金B型の損益分岐点は、受け取り始めて約11年後の76歳となります。やはり国民年金基金の魅力は、この終身年金かもしれません。

逆に注意すべき点は、掛金を支払っている期間中や年金を受け取っている間の死亡一時金です。終身年金A型や確定年金には死亡一時金がありますが、終身年金B型には死亡一時金がありません(正確には1万円あります)。ということは早く亡くなるととても損をするということです。よって、終身年金を選択する際にもA型かB型かをよく検討して加入された方が良いでしょう(掛金はA型の方が割高です)。

また、今後の金利上昇やインフレを心配されている方は、国民年金基金だけではなく、物価上昇や金利上昇もキャッチアップできる個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)も併せて検討されると良いでしょう。但し、掛金は国民年金基金と個人型確定拠出年金を合算して最大6万8,000円/月となっていますので注意が必要です。


加入を検討される際は、各都道府県にある国民年金基金の事務所か一部の金融機関で受け付けています。ご自身のライフプランと今後の経済状況をよく考えた上で加入をご検討ください。