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会社辞めずにリスキリング!「教育訓練休暇給付金」でスキルアップ

そなえる

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「リスキリング」をするために休業し教育講座等に通った場合、その間の生活費等の費用が悩みの種となります。そうした不安を解消させるため、2025年10月からスタートするのが「教育訓練休暇給付金」。

この教育訓練休暇給付金はどのような人が対象で、どの程度の額の給付を受けられるのでしょう。本記事では、制度の仕組みを解説します。

20~30代のリスキリングの意識

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「リスキリング(Reskilling)」とは、職業能力の再開発、再教育のことを指します。「学び直し」とも呼ばれ話題になることが増えましたが、実際はどの程度の人がリスキリングに取り組んでいるのでしょう。

若い世代は半数以上が取り組んでいる

日経リサーチは「仕事に対する意識アンケート」と題し、仕事をしている20歳以上の人(日経ID会員、総数1628人)を対象に、リスキリングに対してのアンケート調査を行っています。

この調査結果内で、リスキリングに「現在取り組んでいる」と回答した割合は、20代、30代で57%を占めており、反対に50代は43%、60代は31%と年齢が高くなるにつれてリスキリングに取り組んでいる人の割合は減っていく傾向が見られます。

なお、学習分野については、以下のような結果となっています。

費用は自己負担?会社負担?

同じく日経リサーチの「仕事に対する意識アンケート」では、費用負担の調査も行われています。「リスキリングの費用負担についてあてはまるものを全てお答えください」という質問に対して、「個人で費用負担がある」と答えた人の割合は76%、「勤務先で費用負担がある」という回答は43%となり、費用を個人で負担している人のほうが多い結果となっています。

なお「勤務先での費用負担がある」という回答は、従業員数5000~2万人未満の企業に勤めている人は58%、従業員数が1~50人未満の企業では29%という結果となり、企業規模による格差が生じていることもうかがえます。

教育訓練休暇給付金とは

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教育訓練休暇給付金は、2025年10月1日より施行される新たな教育訓練支援制度です。

リスキリングをする上で、現在の仕事を休業し、教育講座を長期間受講しなければならないケースもあります。しかし受講期間中の生活費を支援できる仕組みが十分ではなかった為、生活費等の不安からリスキリングがしたくてもできない方も少なくありませんでした。

そこで創設されたのが教育訓練休暇給付金であり、生活に困らないだけの給付金を支給することで、不安なく教育訓練に専念できるようにすることを目指しています。

支給される額は?受給日数は?

教育訓練休暇給付金として給付される額は「離職した場合に支給される基本手当(失業手当)の額と同じ」とされています。また受給日数は、雇用保険の被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれかとなります。

受給できる期間は?

教育訓練休暇給付金を受給できる期間は、「原則、教育訓練休暇を開始した日から起算して1年の期間内の教育訓練休暇を取得している日について支給する」とされています。ただし妊娠、出産、育児などの場合、以下の特例も用意されています。

注意!会社の理解が必要

教育訓練休暇給付金を受給するには、教育訓練のため休業することを会社側に認めてもらわなければなりません。現実的に休業を認めてくれる会社というのはなかなか少ないため、誰もが利用できる給付金という訳ではないことを頭に入れておく必要もあります。

自分はもらえる?受給要件や対象者

教育訓練休暇給付金は、誰もが利用できる制度ではなく、一定の条件が設けられています。自分が受給要件を満たしているか理解しておきましょう。

雇用保険の被保険者であること

教育訓練休暇給付金は雇用保険制度の一つであり、「雇用保険の被保険者期間が5年以上」かつ「原則、休暇開始前2年間に被保険者期間が12カ月以上あること」が支給要件とされています。※以下特例あり

そのため、自営業やアルバイトなどで雇用保険に加入していない方、加入期間が足りない方の場合はこの制度の対象から外れます。

教育訓練のための休暇(無給)を取得すること

教育訓練休暇給付金の受給対象となるのは、教育訓練のための休暇(無給)を取得した人です。そのため、以下のような人は受給対象から外れてしまうことがあります。

・休暇を取得せずに教育訓練を受ける人
・休暇の際に給料や手当が発生している人(無給ではない人)
・休暇ではなく、会社を辞めて教育訓練を受ける人
など

なお、教育訓練休暇給付金の手続きについては、本人、事業主、管轄のハローワークの三者で連携しながら進めていくことが想定されています。

教育訓練休暇給付金を活用するメリット・デメリット(注意点)

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最後に、教育訓練休暇給付金を利用した場合のメリット・デメリットについて解説します。

メリット

教育訓練休暇給付金のメリットは、「離職した場合に支給される基本手当(失業手当)の額と同じ金額」を最大150日に渡って受給できることです。なお基本手当は、直前6カ月に毎月決まって支払われた賃金から算出され、50~80%額が目安となります(ただし上限あり)。

​普段の賃金の満額とまではいかないものの、ある程度の金額が国から支給されるため、受給期間中の生活費等の不安を軽減できます。

デメリット

教育訓練休暇給付金のデメリットは、この制度を利用すると「休暇開始前の被保険者であった期間は、基本手当(失業手当)の受給資格決定に用いる期間から除かれることになる」ことです。

例えば被保険者期間が6年ある人が教育訓練休暇給付金を受給したとすると、教育訓練休暇を終了した際に、もともとあった被保険者期間6年は0年にリセットされてしまいます。被保険者期間は、将来会社を退職し基本手当(失業手当)を受給することになった際などに関わってくるため、念頭に置いておきましょう。

教育訓練休暇給付金を活用する際にスムーズに休職するには

教育訓練休暇給付金を利用するために休職する場合は会社との調整が欠かせません。スムーズに休職するための重要なポイントをまとめました。

1. 会社の休職制度を確認する
まず、就業規則や社内規定を確認し、教育訓練を理由とする休職が可能かどうかを把握しましょう。

2. 休職の目的を適切に伝える
会社に申請する際は、「スキルアップやキャリア形成のための訓練」であることを強調すると、理解を得やすくなります。

3. 会社への影響を最小限にする配慮
休職が業務に与える影響を考え、引継ぎや復帰後の業務調整を事前に相談しておきましょう。会社にとってもメリットがある形で話を進めることが大切です。

4. 休職中の待遇や復帰後の条件を確認する
休職中の給与や社会保険の扱い、復職後のポジションや昇進・評価への影響、休職がキャリアに与えるリスクなどを会社としっかり確認し、トラブルを避けるための合意を得ておきましょう。

5. 教育訓練休暇給付金の要件を満たしているか確認する
給付金を受け取るには、対象となる訓練の種類、申請手続き、受給条件などを事前に確認しておきましょう。

6. 会社との誠実なコミュニケーションを心がける
休職に対する会社の懸念(復帰の意思、業務への影響など)を理解し、誠実に対応することで、合意を得やすくなります。

以上、教育訓練休暇給付金について解説しました。この教育訓練休暇給付金が2025年10月からスタートすることで、これまでよりリスキリングにおける経済的不安が解消され、リスキリングがしやすくなると期待されています。条件を満たしている人であれば、この制度を積極的に活用し自分の新たな可能性を広げてみてはいかがでしょう。