お金

あなたの「お金と生き方」をアップデートするときがきた

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

あなたの「お金と生き方」をアップデートするときがきた

「新しい生活様式」はマスクだけの問題ではない

5月25日、新型コロナウイルスの影響に伴う緊急事態宣言が全国で解除されました。まだ予断を許さないとはいえ、G7各国との比較、また国別人口を考慮して考えてみると、日本の感染者数はある程度抑え込みに成功したといえそうです。

しかし、まだ安心はできません。効果的な治療薬やワクチンの開発はこれからですし、より効果的な感染防止策がエビデンスを積み重ねて明らかになるのもまたこれからです。

私たちは「密」を避けつつ少しずつ日常生活を取り戻していく「新しい生活様式」をこれから考えていくステージにあります。それはあなたのお金の問題でも同様だと思います。

いってみれば「新しい“お金”の生活様式」です。

今回、思いも寄らないお金の不安がいくつか明らかになりました。そのいくつかは私たちのお金の常識に見直しを迫るものとなっています。今までの常識を少しアップデートして「新しい生活様式」と向き合っていくように、お金についてもいくつかのルールをアップデートしていく必要があります。

今回はそんな変化の兆しについて考えてみたいと思います。

「生き方」を一度考え直してみよう

私たちは、今自分の生き方を見つめ直すときに来ています。生き方、人とのつながり、仕事……考えることはたくさんありそうです。

これからの人生をどう過ごすか、向き合うとき

平時にはなんとなく過ごしていた人も、こうした大変な時期を過ごすことで、自分の人生を考えるきっかけになったかもしれません。

たとえば、結婚を視野に交際相手がいた人はこの機に結婚を決断するに至ったかもしれません。不安の大きいとき、誰かと支え合い共に暮らすことが落ち着きになることを確認できたなら、それは人生にとって、とても幸せな財産だと思います。

別居している親をなかなか見舞いに行くことができず、健康不安を心配した人もいるでしょう。ある親子は今までほとんど会話もなかったけれど、LINEで毎日ちょっとした雑談をするようになりました。こうした時期がむしろ親子のコミュニケーションを深めるきっかけになることもあります。それは将来の介護の問題と向き合うスタートラインになるかもしれません。

おひとりさまでいる人が、自分の暮らし方を見直した、ということもあります。あまり健康管理をせずに暮らしていた人が、ひとりで病気になったときのことを考え、ジョギングやウォーキングに励むようになったり、カロリーコントロールを真剣にするようになった、なんて話もあります。

あるいは、友人や地域との関係をもう一度考え直したという人もいるでしょう。ダラダラと職場で飲み会をするより、本当に話をしたい人とzoomでオンライン飲み会のほうが楽しいことに気づいた人もたくさんいます。また、地域とのつながりを改めて考え直した人もいるでしょう。

今回の“StayHome”がもし、これからの生き方や暮らし方について、少し立ち止まって考えてみるきっかけになったのであれば、それは有意義です。

そして、いずれも、お金の問題やリスク管理の問題と結びついています。自分の向き合うライフスタイルを確立したり、幸せを求める中で、お金の問題ともしっかり向き合ってみてください。

働き方、会社との関係をしっかり見つめ直すとき

生き方を見つめる、といえば、仕事や働き方について、自分を見つめ直している人もいるでしょう。

今回、いきなり仕事がなくなった人、残業制限などで月収が下がった人、むしろ忙しくなった人がいます。

医療関係者、スーパーマーケットや流通で働く人たちは“StayHome“の厳しい時期に、社会を支える大きな役割を果たされました。そうした方々には敬意の念を表したいと思います。

一方で、仕事が減ってしまったため、いきなり無収入になってしまった人もいます。特に多いのはバイトやパートの形で働いていた人たちです。アルバイトやパートは、働いた時間に比例して時給換算で給料を得ています。これは自由なシフトで働きやすい一方、シフトに入ることができなければ無収入になる、ということです。お店が閉店しているあいだ、ずっと無収入だったという人は経済的に大きな不安を抱えることになったはずです。

派遣社員も契約によっては「1日いくら」の働き方をしているので、派遣先が業務をストップすれば、給料ががくんと下がったということもあるでしょう。

体力のある会社は、バイトやパートの休業日についてもお給料を支払った例もありますが、多くではありません。正社員でない働き方にはリスクのあることは、この機に真剣に見直してみたいところです。

あなたが長く働くことを考えれば、雇用や給与が約束されているだけでなく、正社員のほうが人生において何千万円も有利になります。税金や社会保険料を引かれるから、一見すると得ではないように思いますが、雇用の安定、昇格昇給のチャンス、退職金の権利がつくのは一般的に正社員だけなのです。

正社員もうかうかしていられません。テレワークの普及に伴い、人事評価制度は「職場にいるかいないか」ではなく「仕事をやったかどうか」をチェックするようになるからです。先進的な会社ほどその変化は早いでしょうし、多くの会社にその流れは普及することになるでしょう。

なんとなく会社にいてがんばっているフリをすること、また上司と愛想良く会話できることはテレワークでは何の役にも立ちません。中間管理職も部下に声をかけて回るような仕事では価値がなくなります。

あなたはそのとき「自分の何を『価値』に変えて会社に提供できるか」が問われるようになります。しかし、終電まで毎日忙しく仕事に追われるときには、そういうことを考える余裕がありませんでした。今こそ、自分のこれからの働き方について考え直すチャンスなのです。

自分がどんな働き方をして60歳代までお金を稼ぐのか、仕事の内容も含めて、少し時間のあるときにこそ考えてみてください。

「お金」との付き合い方を考え直してみよう

もうひとつ考えていきたいのは、お金とどう向き合うかということです。時代が変化したとき、お金の問題とも向き合っていく必要があります。

収入が下がったとき、節約スキルを本気で身につける

収入減少の危機に直面して、本気で節約と向き合っている人もいるでしょう。今は苦しい日々だと思いますが、ぜひここをなんとか乗り越えていきましょう。

仕事に出られなくなって収入が大幅減となっている場合、給付金等のチャンスがあるかもしれませんので、市区町村あるいは相談センターなどに相談してみてください。たとえば家賃補助の制度(住宅確保給付金)が受けられたり、社会保険料の免除が受けられれば、生活を立て直す余裕が手に入ります。

残業ができなくなったなど、毎月数万円程度の減収の場合でも、もともと家計がトントンだった場合、赤字に転落します。ここは借金に頼らず、なんとか節約で乗り切りたいところです。いつもの買い物を見直し、「買いすぎはしない」「できる限り安く買う」を心がけてみましょう。

時間的余裕があれば固定出費、つまり光熱費や通信費など自動引き落としされているものにもメスを入れてみてください。クレジットカードの明細と銀行預金通帳をチェックし「利用していないサービスは解約」し「より安いサービスがあれば乗り換え」をします。

たとえば、家族全員で格安スマホ会社に乗り換えるだけで、月数万円の節約になることもあります。苦しい家計を一気に好転させることができるかもしれません。通信速度もギガ容量も大手と遜色ないことがあります。

大変な時期は本気で節約に取り組むため、私たちは節約のノウハウを一気に身につけることができます。それはあなたの一生の財産になるかもしれません。

これからの人生、軽い気持ちでの借金はしない

「コロナ以降」私たちがお金の問題で学ばなければいけないことのひとつは、「借金は簡単にしてはいけない」ということです。

例えば、軽い気持ちでキャッシング等の借り入れをしていた人は、収入減少時の返済に苦労します。分割払いやリボ払いでクレジットカードを利用していた人もその利息が重くのしかかってきます。

住宅ローンも年収がアップすることを前提に考えていたりボーナス払いを大きく設定していた場合、年収減、ボーナス減少時代には苦労することになります。
(こちらは銀行で相談をして、返済計画を見直すことができます。高金利の借金を新たにして住宅ローンの返済資金に回さないようにしましょう)

借金は「今お金がないのに買い物をする手段」です。貯金をしておけば、その利息を払うことなく買い物ができます。お金を貸してもらえることと、お金を借りてもいいことは同じではないのです。

少しの貯金があれば、不安は小さくなる

今、貯金があれば借金をしなくて買い物ができるといいましたが、貯金にはそれ以上の役割があります。貯金があれば今のような経済的な不安を乗り越える力にもなるからです。

今、苦しい時期でありながらそれでも落ち着いている人は、乗り越えるだけの貯金を持っている人です。あなたがもし「次の危機」には同じ苦労をしたくないのであれば、貯金をしなければいけません。

たとえば、10万円の貯金があればとにかく1カ月がしのげるでしょう。30~50万円なら数カ月もちます。アラサー世代の場合、できれば100万円くらいの余裕を作っておきたいものです。

こうしたお金は積立定期預金などで毎月少しずつ貯めたり、ボーナスからまとまった定期預金をして確保していきます。メインバンクに定期預金をしておくと、クレジットカードの引き落としミスがあっても一時的にマイナスにしてくれるような効果もあります(定期預金の残高の一定割合を当座貸越してくれる)。

今すぐ、というわけではありません。落ち着いて余裕を取り戻したときにはぜひ、積立定期預金を始めてみましょう。

大変なときこそ、自分を見つめ直すチャンスに変えたい

今は過去にあまり例のない、大変なときです。健康の不安を覚えたり、経済的不安を抱えてもなお、私たちは生き抜いていかなければなりません。

しかし、いつかは大変な時期を乗り越えることができます。治療薬やワクチンが開発されるまでもう少しです。また、感染拡大抑止策についても効果的な方法(あるいは、効果的ではないのでやらなくてもいい方法)が研究によりはっきりとしてくるでしょう。そうすれば、安心して生活できるようになります。

閉まっていたお店がオープンすれば、そのお店の人も売り上げが立ちますし、街は賑わいを取り戻し始めます。工場も再稼働すれば世界中で新しい商品も出回り始め、私たちを楽しませてくれるはずです。世界はまた明るさを取り戻していくことになるでしょう。

私たちはこの時期をただうつむくだけで終わらせず、自分の人生とお金について振り返る機会としたいものです。

「新しいお金の生活様式」を身につけて、これからを過ごしていくことができれば、それはあなたの未来を確かに輝かせてくれることになるはずです。