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知っているようで知らない「株式投資」のメリットとデメリット

お金をとことん増やしたい人のための 「資産運用」超入門 泉 正人

知っているようで知らない「株式投資」のメリットとデメリット

そろそろ資産運用を始めてみたいと思っているみなさん。ようこそ、泉先生の「資産運用 超入門」講座へ。

この講座は、「お金をとことん増やしたい!」と考えてはいるものの、「まだ何もはじめていない」、「何からはじめていいかわからない……」という人に、自分に合った資産運用法を見つけ、実際に行動に移せる力を身につけてもらう講座です。

資産運用の方法をマスターできれば、夢や目標をかなえたり、老後にゆとりを持って暮らしたりするための資産を自分でつくることができるように。さぁ、心もお金も豊かに、自分らしいライフスタイルを楽しめる人生をここから手に入れましょう!

そもそも、「株式」って一体どんなもの?

前回までの講座では、資産運用をはじめる前に最低限、おさえておきたいことを説明してきたけれど、ここからはさらに深掘りして、各金融商品の知識を身につけていこう。

待ってました!どんな風に学んでいくんですか?

それぞれの金融商品や資産運用法、つまり投資法にはどのようなリスクとリターン、ボラティリティの度合いがあるのか、資産運用の仕組みから、それぞれにかかるコスト、資産運用で目指せる目標などについて学んでいこう。

お願いします! 

最初に紹介する金融商品は「株式」。早速、Kくんに質問なんだけど、会社は事業資金を必要とする場合、どんな手段に出ると思う?

銀行から融資を受ける、ですか?

そうだね。でもそれだけで資金がまかなえるとは限らない。そこで広く、一般の会社や投資家から資金を調達するために発行するのが株式なんだ。

なるほど。会社が発行した株式を投資家が購入することで、会社には資金が入りますね。

一方、投資家側は発行した株式を購入することで、株主となり、その会社の所有者の1人となる。

会社の所有者の1人に! へぇ~!

「株式投資」とは、上場会社が発行した株式を、証券会社などを通じて売買することを言うんだよ。

先生、あえて「上場会社」と言われているのは?

証券取引所で売買される株式のことを「上場株式」、株式を証券取引所に上場している会社を「上場会社」という。これからこの講座で解説する「株式投資」とは、証券取引所に上場している会社の株式を売買することがメインになるんだけど、上場していない株式の売買も存在するよ。ただしこれはまた別の機会に。

なるほど、わかりました。

さて、株式投資の基本的な仕組みとしては、株式を買った価格より高値で売却できれば利益となり、買った価格より安値で売却となれば損失となる。そして、株式を購入した投資家には、株主としての権利が与えられるんだ。その権利の代表的なものは、配当金、株主総会での議決権などで、その会社の所有者の1人として意見も言えるようになるため、株式投資は「株式会社の一部分を買う行為」ともいえる。

すごいことですよね。でもさすがに、かなりの株数を持っている人のみに与えられる特権なんじゃ…。

それが、1株でも購入すれば、その会社の株主になるんだ。法律上、会社の持ち主は株主なので、株の所有率に応じた会社の共同オーナー・部分オーナーになるともいえるよ。

1株でも会社の共同オーナーか…!

そして、株式投資で利益を出す方法は、大きく2つある。1つは配当金を積み重ねていく方法の「インカムゲイン」で、もう1つは株式の売買で売却益を出していく方法の「キャピタルゲイン」。株式の売買で売却益を出していく方法についてもう少しくわしく解説していくね。

さっき、株式投資の基本は「安く買って高く売ること」って言っていましたよね。

そう。これはすべての投資の基本でもある。そして株式を安く購入するうえで最も重要なポイントは、「業績がよくて、割安な株を、値上がりする前のタイミングで購入する」ということなんだ。

値上がりする株を安く買うための秘訣

・企業の売上高と利益が順調に拡大していることで「業績」を確認し、

・株価が、発行している1株あたりの利益に対してどのくらいの値段になっているかで「割安性」を判断し、

・株価の値動きの方向性(チャート)が低い位置にある「タイミング」を見極める

企業の業績って、見ることができるんですね。

上場している会社は、決算の内容などを、決算説明会や有価証券報告書などで開示する義務があるんだ。そのため投資家は、会社の財務状況や業績などを見るファンダメンタルズ分析や、過去の値動きからトレンドやパターンなどを把握して、今後の株価動向を予想するテクニカル分析を駆使することで、投資する企業や買い時・売り時といったタイミングを見極め、より高い利益を出すことが可能となるんだよ。

「安く買う」を叶えるためには、さまざまなことを知ることが大切なんですね。

そうだね。さらにもう1つおさえておかなければいけない大事なことがあって、それは、経済の動きを知るということ。

企業研究だけしていてもダメなんですね。

いかに業績が良い会社に投資したとしても、業界全体に影響するような悪いニュースが報道されたり、日本の上場企業の株価が大きく値下がりする日などは、投資している会社の株価も短期的には影響を受けることが多々あるからね。

確かに、リーマンショックやコロナ禍みたいに、総じて不景気!みたいなことも起こりえますもんね…。

一企業の株価は、その会社の業績のみならず、経済や政治の動き、景気、金利、為替にも左右されるので、投資する会社だけではなく、株式市場、ひいては日々のニュースにもアンテナを張るようにしよう!

株式投資のコストって??

さて、次はコストについて。株式投資を行うには、大きく分けて2種類のコストが発生するんだ。

え、株価通りに株を購入すればOK、じゃないんですね?

株式投資を行うには、証券会社に支払う各種手数料、そして税金と言うコストがかかってくる。株式投資で得られる利益は、これらのコストを差し引いた金額なんだよ。

それぞれ、詳しく知りたいです。

まず「証券会社の手数料」について。証券会社に支払う手数料の1つには、「売買手数料」ともいわれる「売買委託手数料」というものがある。実際の株式の取引は、証券取引所で行われるんだけど、その証券取引所と一般の投資家が直接取引することはできず、その売買を証券会社に委託する形になるので、その委託手数料として発生するんだ。なお売買委託手数料は、買ったとき、売ったときの両方にかかってくることを覚えておいてね。

両方にかかるのか…。ちなみにいくら位なんですか?

一昔前であれば、この売買手数料はどの証券会社でも同じ金額だったけど、今は手数料が自由化されて、証券会社の数だけ料金体系が存在するんだ。

特にネット証券は店舗を持たないぶん、手数料を引き下げやすく、店頭で行う対面取引と比べ10分の1程度の水準となっているよ。

売買委託手数料の例

・ネット証券A社:200円(1回の売買につき)

・対面取引店舗証券B社:2500円(1回の売買につき)

随分違うんですね!

そうだね。このあたりも自分で調べてみるといいよ。さて、そしてコストその2は税金。株式投資にかかる税金には、大きく分けて「キャピタルゲイン課税」と「配当課税」の2種類がある。「キャピタルゲイン課税」は、株式を売買して売却益を得た時にかかる税金のこと。その年の1月1日から12月31日までに発生した売却益から、売買手数料などを差し引いた金額に対して約20%かかってくる。「配当課税」は、企業から配当金を受けとったときにかかる税金のことで、こちらも約20%がかかるよ。

20%って、なかなかですね。これはしっかり利益を出さねば。

ちなみに税金に関しては、毎年120万円分の取引を上限とした「少額投資非課税制度」(NISA)があるので、有効に活用することをおすすめするよ。

NISA(ニーサ)、最近よく聞きます。詳しく知りたいです!

NISAとは国が定めた制度で、「NISA口座」内で毎年120万円まで購入した金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり税金がかからなくなる制度なんだ。

利用するためにはどうすればいいんでしょうか?

株式投資を行うためには証券会社で口座を開設することが必要なんだけど、その口座ができれば、同じ証券口座内にNISA口座を開設できるよ。1つの証券会社で2つの口座を持ち、取引を分けて管理することで、NISA口座内での取引における利益のみ非課税にすることができるんだ。

そんなにお得なら、いろんな証券会社に口座を作ってそれぞれでNISA口座を作ればいいのか…。

残念ながら、NISA口座は1人につき1つの証券会社でしか開設することができないんだ。証券会社の口座は複数開設することができるんだけどね。

そうなんですね~!残念!

株式投資のメリットとデメリット

Kくん、株式投資のメリットって、何があると思う?

それはもちろん、キャピタルゲイン、インカムゲインじゃないですか?

お、すごい! しっかり資産運用用語が自分のものになってるね。そう、株式投資のメリットは、株式の売買で利益を得るキャピタルゲインと会社が得た利益を還元されるインカムゲイン、つまりは、「値上がり益」と「配当金」が得られること。配当金に関しては、0円の会社もあるけどね。

メリットはそのほかにもあるんですか?

扱っていないところもあるけれど、会社が株主にモノやサービスを贈呈する株主優待というものもあるよ。

そうでした!株主優待。食事券とかQUOカードとかがもらえるんですよね。友だちは優待目的で株を買ったって言ってました。

あとは、会社の経営に参加することができたり、株式投資をすることで経済や社会の動きについて敏感になれるという利点もあるよ。Kくんは普段何気なく、会社の同僚や友人との会話のなかで「この店が美味しい」「あの店は安いけどイマイチ」など話したりしてない?

そうですね。しょっちゅうします。

そうした内容にアンテナを張ることで、美味しい食品、流行りの飲食店、化粧品、洋服などの情報を、いち消費者としてではなく、投資家としての視点でとらえることもできるということだよ。

え、僕らは日々、投資家的な話をしてたってことですか?

そうだね。そうした会話の中に出てきた商品をどの会社が販売しているのか、親会社はどこかといったことを少しチェックしてみるだけで、今後株価が値上がりしそうな会社を発見できるかもしれないよ。

あ~、早く投資家視点で雑談したい!(笑)

では次に、株式投資のデメリットについて考えてみようか。Kくんはわかるかな?

やっぱり、価格が上下するところとか?

そうだね。まずは株価変動リスク。証券取引所が開いている時間帯は、つねに株価が変動し、うまく売買できれば売却益が期待できるけれど、株式投資は元本が保証されるものではなく、購入時の株価よりも値下がりすると、損失を出す可能性もある。売却益が期待できる一方で、株価が値下がりして損失を出す可能性もあることを理解しておかなければならない。

ほかにもあるんですか?リスク。

「信用リスク」だね。株式投資でいえば、投資した会社が倒産するリスク。会社が倒産すると、株式に投資したお金を取り戻せなくなり、投資資金を失うことになるかもしれない。

それは確かにありそう。

でもここではあえて「リターン」に関しても触れておこうか。仮に、100万円分の株式を購入したとするよね。この場合、会社が倒産したときに被る最大リスクは100万円の損失。一方、もしも値上がりして株価が10倍になったらどう? 

1000万円!

そう。こんな風に、「リスクは有限、リターンは無限」ということも覚えておこう。

これは前向きになれます! えっと、リスクは以上2つですか?

あとは「流動性リスク」。これは売買が減って取引が成立せず、株式を売りたいときに売れない可能性があることをいうよ。上場会社の株式が、証券会社を通じていつでも取引できるといっても、その取引の量には会社ごとに大きな差があるんだ。買いたい時も同じ。株式を買えるということは、見知らぬ誰かが株式を売らなければできないこと。つまり、売りと買いが一致したときに初めて、売買という取引が成立するんだ。

株なんて、欲しい時にはいつでも買えると思ってました。

取引の量が、一日に1万件の取引のある会社の株を売りたいときは、すぐに買い手が見つかって売却することができるけれど、一日に10件しかない会社の株を売りたいときは、すぐに買い手が見つかるとは限らず、何分も何時間も待たなくてはいけないこともある。こんなふうに、すぐに買い手が見つからず取引が成立しないリスクを「流動性リスク」といい、できるだけ取引の多い会社の株式を選択することでそのリスクは軽減される。なお、その取引の量は「出来高」といって公表されているので、誰でも調べることが可能だよ。

まずは、今日聞いたことを改めて復習して始めようと思うのですが、基本的な資産運用法と目指せる成果をまとめるとどんな感じになりますか?

人によって目指す目標が異なるので、ここではあくまでも初心者がまず目指したい運用方法と成果について伝えるね。まずは、「3~5銘柄くらいを保有し、数ヶ月に1度程度の売買を繰り返しながら、年間利回り10%以上を目指す」を最初の目標としよう。

先生、「銘柄」とは?

証券会社を通じて、売買取引の対象となる株式、つまり有価証券の名称のこと。株式や債券、商品などの取引で使用される言葉だよ。今後も何度か出てくるワードなので覚えておいてね。

ではついでに「利回り」とは?

投資した金額に対する収益割合を、1年あたりの平均に直した数字だよ。株式投資で100万円を投資するとした場合の最初の目標は、1年間で10万円増やすことを目指しましょう、ということ。

1年間で10万円。できるかなぁ…。

まずは値上がりしそうな銘柄を探し、いくつか分散して購入。リスクをできるかぎり減らしながらも、売買を繰り返すことで、期待した利回りが得られるようになると思うよ。実は、株式の銘柄のなかには、2倍以上株価が値上がりするものもたくさん。年間利回りとして、20%以上をキープすることも十分可能な運用方法なんだよ。

夢が広がる~!挑戦してみます!

まとめ

「株式」とは、一般の会社や投資家から資金を調達するために発行するもので、購入すると株主となり、その会社の所有者の1人に。良い銘柄を選ぶことができれば、保持しているときは配当金や株主優待を、売却する時はキャピタルゲインを得ることができます。ただし、売買手数料や税金も発生することをお忘れなく。

売買のコツは、「業績がよくて、割安な株を、値上がりする前のタイミングで購入する」ということ。ただしそれを知るためには、投資する企業や、買い時・売り時といったタイミングを見極めることが大切です。

リスクについても十分理解しながら、複数の銘柄を分散して所有するなど、できるかぎりリスクを減らして少しずつ売買を繰り返し、期待した利回りを得ることを目指しましょう!

次回は、「債券」について学んでいきます。お楽しみに!