「不動産」で投資しようとしたら、コストはどうなる!?
監修・ライター
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そもそも、「不動産」とは?
今日は「不動産」について学んでいくよ。「不動産」といえば、土地、マンション、アパート、駐車場…そしてもちろんマイホームもその一種で、文字どおり動かすことができない不動の財産のこと。株式や債券に比べると、イメージしやすいよね?
そうですね。つまり「不動産投資」って、投資家がマンションやアパート、オフィスビル、駐車場などの不動産を購入して賃料収益を得たり、売却して売買益を得たりすることですよね。
そのとおり。ちなみにアパートやマンションの一室または一区画を所有することを「区分所有」。アパートやマンション一棟を丸ごと所有することを文字どおり「一棟所有」というから覚えておいてね。
はい。でも先生、不動産はさすがに専門的で難しそうだし、何より初期費用が高額なんじゃないですか?
確かに、そうした先入観やハードルの高さを感じてためらう人も少なくない。でも不動産投資は、「賃料収入」という安定的なリターンが大きく、ほかの金融商品にはない魅力を備えた資産形成の手段。上手に運用できれば大きな利益や定期的な収入を得ることができて、余裕ある生活を送れるようになるんだよ。
本当ですか!?
ではまず図に沿って、不動産投資の一般的なお金の流れを解説しよう。
■不動産投資の一般的なお金の流れ
①金融機関からお金を借りる(不動産は、数百万円から数億円という非常に高額な資金を必要とするため、投資家は金融機関からお金を借りて[ローンを組んで]不動産を購入することが一般的)。
②金融機関から借りた資金と少しの自己資金で、対象となる不動産を購入する。
③投資家は、対象不動産の入居者から家賃収入を得る。
④家賃収入から、金融機関に借りた元本や利子を返済したり、リフォームなどを含めて不動産を維持・修繕したり、管理会社に入居者の連絡窓口になってもらう場合など、さまざまなコストを支払う。
⑤ ③から④を差し引いた金額が、投資家の手元に入る保有期間中の利益となる。
おぉ!図で見ると、わかりやすいですね!
不動産投資、購入時の諸費用は?
では次に、コストについて話していこう。不動産投資で資産運用を行う場合には、購入時、保有時、売却時にそれぞれ諸費用が発生するよ。それぞれのケースで説明していこう。まず購入時の諸費用としては、「仲介手数料」、「印紙税」、「登録諸費用」、「融資諸費用」、「不動産取得税」の5つがある。
早速、いろいろ出てきたぞ…。
「仲介手数料」とは、不動産の購入時に不動産仲介業者に支払う手数料のこと。一般的に購入金額の約3%だよ。そして「印紙税」は、不動産を購入する売買契約書を交わす際に発生する税金であり、売買金額によって納税額が変わる。これが数千円~数万円ほど。
「登録諸費用」は、不動産を購入した際に発生する税金の1つで、不動産を登記する、つまり権利者を移転することによって課税される費用。一般的に購入金額の2~3%程度がかかる。司法書士に依頼するのが一般的なので、これは登録免許税と司法書士手数料の合計金額。
「融資諸費用」は、融資を利用する際にかかる費用で、金融機関によって異なってくる。そして「不動産取得税」は、不動産を取得したときに支払う税金で、購入した不動産の固定資産税評価額に対して4%程度の税率が課せられるんだ。
これだけでもなかなかのコストですね。
そうだね。これらのコストをすべて合算すると、物件価格に対して10%前後のコストとなることが一般的。なので、全額融資を利用する場合でも、購入時の諸費用は自己資金が必要となる場合が多くなるよ。
例えば、一棟1億円のアパートを購入しようとした場合は、1000万円以上の諸費用が自己資金として発生するということですね!
その通り!
不動産投資、保有時の諸費用は?
では次に、保有時の諸費用について。ここでは「返済利子」、「維持・修繕費用」、「賃貸委託管理費」、「固定資産税、都市計画税」、「その他諸費用」が発生するよ。
お~、また続々と!
まず「返済利子」は、金融機関からお金を借りることにより、毎月の返済時に支払う利子のことだよ。次に「維持・修繕費用」。マンション管理費、修繕積立金といった方がわかりやすいかな? メンテナンスや修繕も管理組合が行うことになるけれど、一般的に実際の作業はマンションの管理会社に委託して実施する。このための費用が「マンション管理費」、将来の修繕のために管理組合で定期的にお金を積み立てる費用が「修繕積立金」だ。
「マンション管理費」、「修繕積立金」は一戸建ての場合にも必要なんですか?
一戸建ての場合は必要ない。これらは主に、区分マンションを保有している場合に支払うものだよ。区分マンションの場合、共用部の修繕が必要になると、この修繕積立金から支払うことが一般的だ。一棟アパートの場合は毎月定期的な費用は発生しないけど、修繕が発生した場合にその都度修繕費用が発生するよ。
わかりました!
「賃貸委託管理費」は、入居者の募集、家賃の集金、滞納者への督促、入居者からの要望への対応などの「賃貸管理」をしてもらうために、管理会社に支払う費用のこと。マンション管理費は、マンション全体の管理をしてもらうためにマンションの管理組合に納めるものだけど、この賃貸委託管理費は、賃貸入居者を管理するためにオーナー自身が管理会社と契約して支払うんだ。
そして「固定資産税」「都市計画税」。これは不動産を所有している人に対し、不動産の所在地を管轄する市区町村が課税する税金。そのほか、火災保険や入居者が退去した際のリフォーム費用、その他の修繕が発生した際の費用として「その他諸費用」も必要かな。
これらを合計すると…?
家賃収入に対して10~30%くらいかかることが一般的かな。規模が大きい不動産ほど収入に対する経費割合は少なく、規模が小さいほど経費割合が大きくなる傾向があるよ。1億円の一棟アパートで年間家賃収入が1000万円くらい見込める場合は、100万~300万円くらいの諸費用が発生すると考えておこう。
だんだんイメージしやすくなってきました。
あと所得税・住民税も忘れないようにしよう。株式や債券の場合には、年間利益に対して約20%を支払うだけというシンプルな税金の支払い方(分離課税)だったけど、不動産の場合は、少しだけ複雑なので注意しよう。
どんなふうにですか?
1年間の家賃収入から、1年間にかかった経費を引いた額が不動産所得、つまり利益となって、その不動産所得と本業などから得られる給与所得を合算し、税率と税額が決まる方式(総合課税)なんだ。
日本の所得税の仕組みは、所得が高いほど税率が高まるから、高所得者のほうが所得税コストは増加する。ただ、高所得者のほうが融資の利息、つまり返済利子が低くなるので、必ずしも高所得者のほうが支出が増えるとは限らないんだ。
なるほど。
それから「返済元金」についても話しておくね。これは借りているお金を返すだけなので諸費用、つまり経費ではないけれど、毎月支払いが発生するお金ではある。融資の借り入れ条件、特に返済期間によって金額が大きく変わるので一概にいくらとはいえないけれど、望ましいのは家賃収入に対して50%以下にすること。
ここでいったん、さっき図で示した不動産投資のお金の流れに合わせて整理してみてもいいですか?
もちろん! もしも年間家賃収入が1000万円見込める1億円のアパートを購入する場合、こんなイメージを持つことができるよ。
①1億円を金融機関から融資を受けて借りて、
②1000万円の自己資金で購入時の諸費用を支払って、対象となる不動産を購入し、
③入居者からの家賃収入として、毎年1000万円を得て、
④毎年かかる諸費用として300万円、元本返済として500万円、そこからさらに所得税などを支払い、
⑤ ③から④を差し引いた200万円が、毎年投資家の手元に利益として残る
この場合、最初に1000万円を支払っているので、毎年200万円の利益が発生するのなら、5年間で投資資金を回収できるということになるね。
5年で回収!それはすごいなぁ。
まとめ
「不動産投資」とは、投資家が、マンションやアパート、オフィスビル、駐車場などの不動産を購入して、賃料収益を得たり、売却して売買益を得たりすること。
「専門的で難しそう…」という先入観を持つ人も多いのですが、仕組みを理解できれば難しいことはありません。むしろ、数ある資産運用のなかでも、最も古くから存在する方法であり、これから先、数十年というスパンで、安定した運用で大きな資産を築きたい人に、おすすめの資産運用法なのです。
まずは、購入時、保有時の諸費用についてしっかりと学び、不動産投資の一歩を踏み出しましょう!
次回は、「売却時の諸費用や、メリット・デメリット」について学んでいきます。お楽しみに!