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若年化するフリーランスと経営者、彼らを動かすものは何か

経済とお金のはなし 中新 大地

若年化するフリーランスと経営者、彼らを動かすものは何か

【画像出典元】「Overearth/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

突然ですが、皆さんが「起業した人」と聞いて思い浮かべるのは、どんな人物像でしょうか?フリーランスとして活動し始める前の私であれば「50~60代のおじさん」と答えたことでしょう。
しかし、実際にフリーランスとして働いている今では、そのイメージが間違っていたことに気付きましたし、20~30代のフリーランスや経営者が増えている実感もあります。

今回はそんな若年化するフリーランスや経営者の実態と、彼らがどのような分野・マインドで活躍しているのかをご紹介します。

女性で顕著、起業家年齢は若年化している

働き方の多様性が謳われるようになってから、あるいは企業の年功序列制度の崩壊に伴い、起業してフリーランスや経営者となる人が増えています。

中小企業庁がまとめた『2019年版小規模企業白書』によれば、25歳以下~49歳までの起業家とされる人の割合は、2007年は男性63.1%女性62.3%でしたが、2017年には男性65.9%女性76.2%に増加。
26~29歳代の女性に限って言えば、2007年は31.9%でしたが、2017年には43.4%まで増えています。

サラリーマンとしての若い女性の社会進出にはまだ課題があるように思えますが、起業家においては活躍の場が広がっていることがうかがえます。
私自身もフリーランスのチームで仕事をすることがありますが、かつてイメージしていたよりも若い方や女性と仕事をする機会が多いことに気付きました。彼・彼女らは皆エネルギッシュで、のびのびと働いている印象を受けます。

前述のデータは副業としての起業家は含まれていませんが、ランサーズ社の『【ランサーズ】フリーランス実態調査2021』によれば、「副業系すきまワーカー」は、20~30代が全体の50%を占めているとのこと。やはり、自分自身の力でキャリアを開拓している若い方は、かなり多いようです。

どんなことをやっている?フリーランスの職業

パソコンに向かう男性
【画像出典元】「stock.adobe.com/Svyatoslav Lypynskyy」

ちなみに、フリーランスとして働く人の職業で最も多いのは、ライターで35.3%、デザイン関係(Web、グラフィック、イラストレーター)が13.8%、エンジニア(IT、ゲーム)が6.5%というデータがあります。
一口にライターといっても、担当する仕事内容はさまざまですが、比較的専門スキルがなくても始められることが、3割以上を占めている理由と言えるでしょう。かく言う私も、大学生の頃に未経験でライターデビューしたひとりです。

参考:つなぐマーケティング『フリーランスになったきっかけは?仕事を獲得する方法や苦労したことを232人にアンケート調査』

また、まだ多くはありませんが、インスタグラマーやYouTuberなどのインフルエンサーとされる人たちも、フリーランス、あるいはグループのメンバーを束ねる経営者と呼べるでしょう。
彼らは自分たちで作った映像・音楽作品などに紐づく広告収入、強大な発信力を活かしての企業とのタイアップ企画やイベント出演、自分たちのファンに向けたグッズ販売などから収入を得ています。

事務所などに所属する人もいますが、マネージメントのサポートを受けているだけで、会社員とは一線を画す場合が多いです。

優れたアンテナ力と厳しい社会状況で増えるフリーランスと経営者

増加傾向にある若いフリーランスと経営者。その背景には、情報を適切に選び使うことができるアンテナ力と、フリーランスとならざるを得ないような社会状況があると考えられます。

インターネット上には膨大な情報があります。そこにはフリーランスや経営者になるために必要なスキル、仕事を得るための場所や方法、さらなるスキルアップや満足度向上のための交流の機会に関する情報も。

そうした情報の中には真偽が問われるものもありますが、デジタルネイティブ世代とされる今の20~30代は、それをくまなく調べ、慎重に見極め、自分に合ったものを受け取る力に長けています。

前述の『【ランサーズ】フリーランス実態調査2021』において、仕事を探す経路として挙げられているのは、クラウドソーシングプラットフォームが15%、SNSが16%、エージェントサービスの利用が17%と、オンラインの占める割合が多くなっています。

人脈からの仕事獲得も46%と多くなっていますが、2020年の52%から6%も減少。
やはり、オンラインを軸に、自分に合う方法で情報を手に入れ、活躍する人たちは増えていると言えるでしょう。

「会社よりも合っていそうだから」ネガティブ発進のフリーランス

オフィスで頭を抱える女性
【画像出典元】「stock.adobe.com/milatas」

フリーランスと聞くと、「自由に働ける」というポジティブなイメージがあり、そのためにフリーランスを選ぶ人が多いと考える人もいるかもしれません。しかし、実際はネガティブな事情からフリーランスを選ぶ人もいます。

「会社からもらえる給料に満足できなかった」、「人付き合いが上手くいかず、自分のペースで働きたいと思った」、「心や体を病んでしまい、会社を辞めざるを得なかった」などがそうでしょう。さらに近年は終身雇用制度の崩壊やコロナ禍による不景気や解雇などの問題もあります。

特に日本での収入の伸び悩みは深刻です。
国税庁の民間給与実態統計調査によると、令和元年の平均給与は436万円、平成30年では441万円、平成29年では432万円と近年は横ばい状態が続いています。約10年前の平成22年では412万円なので、伸びていることには伸びているのですが、物価や税金の上昇、解消されない男女の賃金格差等を考えると決して生活が豊かになっているとは言えないでしょう。

しかも、この金額はあくまでも平均ですから、20代に絞って考えるともっと少なくなります。20~24歳だと平均で263.9万円、25~29歳で369.4万円となっており、全体の平均と考えるとやはり少ない印象です。もっとも高額となる50~54歳でも524.5万円ですから、若い人たちが将来を見据えた時に、もらえる給与の額だけを魅力として会社員を続けようと思うケースが減っていることも考えられます。

ただ、フリーランスなら会社員より稼げるのかというと、そういうわけでもありません。
自営業独立系オーナーと呼称されるフリーランスの平均年間報酬額は、2021年(令和3年)の発表で354.8万円、2020年(令和2年)357.7万円となっています。そのため、自分のスキルと行動次第でまだ稼げる可能性があることや、お金ではなく会社員よりも柔軟に働ける環境に身を置くことに魅力を感じている人が、フリーランスを選んでいると考えられます。

私も大学生としてアルバイトをするよりも、短時間で多くの収入を得られることと、時間や場所にとらわれず働けることに魅力を感じてライターとなりました。

「より豊かに、より自分らしく」を求めて

若い人たちは、不安定な社会状況のなかで、より豊かに、より自分らしく働ける方法を模索し続けています。会社に勤める従来の就職も視野に入れながら、その将来性や自分らしく働けるかどうかを見極める中で、フリーランスや経営者という選択肢が当たり前のように加わり、その数が増えていく傾向は今後も増えるのではないでしょうか。

その道は必ずしも安定したものではありません。ただ、会社に勤めることでは得られないメリットや可能性があるのも事実。現状の打破を目指し、お金・時間・場所・働く相手など、さまざまな自由を享受しようと行動を続けています。

私もそんなフリーランスのひとりとして、今一度背筋を伸ばして皆さんのお役に立てる情報を発信していこうと思います。