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見落としはない?身近なお金の制度改正2022【仕事・年金編】

そなえる 権藤 知弘

見落としはない?身近なお金の制度改正2022【仕事・年金編】

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お金に関連する制度は毎年のように変更されます。今回は2022年に改正されたお金に関連する制度のうち、私たちの生活に身近な、給与の手取りや老後に関わる制度の変更点を改めて振り返ってみます。見落としがないか確認してみましょう。

雇用保険料の引き上げ

仕事を辞めた時の「失業手当」や、出産後の育児で仕事を休むときに受け取れる「育児休業給付金」など、会社員にはさまざまな手当があります。この制度は「雇用保険法」という法律に基づいて運営され、会社員は毎月の給与から雇用保険料という名目で保険料を徴収されています。

この保険料が新型コロナウイルスの影響で2022年4月と10月の2回、引き上げられました。4月の引き上げは事業主分だけでしたが、10月の引き上げは労働者分も含みます。2022年9月までの労働者負担分は保険料の1000分の3でしたが、10月以降は1000分の5となりました。月収25万円の労働者であれば、毎月750円の負担増です。

厚生年金加入対象者拡大(年金改正法)

社会保険の扶養の範囲内で働いているパート・アルバイトの人に、非常に大きな影響を及ぼした変更が10月からの厚生年金加入対象者の拡大でした。これまでは一部の大企業を除き、年収で130万円を超えなければ配偶者の社会保険上の扶養に入ることができ、国民年金保険料や国民健康保険の保険料を自分で払う必要はありませんでした。

2022年10月の改正によって「従業員が101名以上いる企業で働いている労働者が106万円以上の年収を得た場合、社会保険料を支払わなければならない」ということになりました。給与が同じ106万円でも、社会保険料の対象でない場合の手取り金額は約105万円ですが、社会保険が適用されると手取り金額は約90万円になり、1年間の手取り額が15万円程度減ってしまいます。

将来の年金額が増えたり、傷病手当金の対象になったりと良い面もありますが、企業の規模により、給与が同じでも手取り金額が大きく変わります。パート・アルバイトとして働いている人にとっては大きな影響がある制度変更でした。なお、改正によって社会保険が適用される条件は下記の通りになりました。

上記の条件を満たす人は社会保険の対象者になります。また2024年10月からは、従業員101名以上の企業から51名以上の企業へと、さらに対象者が拡大されます。

iDeCo/企業型DC改正

iDeCo
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節税しながら老後資金を準備できるiDeCo(個人型確定拠出年金)や、企業DC(企業型確定拠出年金)にも制度変更がありました。大きな変更点は以下の通りです。

これまでは、企業DCに加入している人のほとんどが、iDeCoを活用できませんでした。今回の制度改正で実質的に会社員の人が全員iDeCoを活用できるようになり、節税効果を最大限活用しながら老後資金を準備しやすくなりました。なお掛金の上限は、企業DCとiDeCoを合わせて月額5万5000円以内です。

在職老齢年金改正・公的年金繰り下げ年齢延長

60才以降に厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金といいます。この在職老齢年金には働き過ぎると年金が減ったり、停止されたりする仕組みがあります。2022年の改正で60才以上65才未満の人の在職老齢年金について、年金の支給が停止される基準が見直されました。また公的年金の繰り下げも、これまでの70才から75才へと繰り下げ期間が延長されました。

傷病手当金制度見直し

傷病手当金
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病気やケガで仕事を連続して3日間休み、4日目以降も休んでいるときに受け取ることができる傷病手当金。この傷病手当金の支給期間が「支給開始日から通算して1年6カ月に達するまで」と変更されました。これまでは通算ではなく、支給開始日から1年6カ月とされていたため、がんのように出勤と休みを交互に繰り返しながら治療を続けるような病気の場合、経済的に困窮するケースが目立ちました。このようなケースを少しでも解消するために、支給期間を支給開始日から通算1年6カ月というように実質的に延長されました。

退職金の税制改正

退職金には退職所得控除という大きな控除があり、控除後の金額をさらに2分の1にした金額に課税されます。この制度が変更され、勤続5年以内の退職金について、退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分について2分の1課税が廃止されました。勤続5年を経過せずに退職金が300万円以上というケースは少ないと思いますが、対象になれば退職金への課税額が増えます。

まとめ

2022年の変更で、最も大きな影響を及ぼすのは社会保険料の対象者の拡大でしょう。対象企業で勤務している人が年収106万円を超えると、手取り額は年間で15万円程度減少します。その他では企業DCの加入者が積極的にiDeCoを使えるようになりました。節税効果もあり、こちらは歓迎される変更でしたね。お金の制度は毎年何かしら変更されます。年に一度は身近なところの変更がないかをチェックすることをおすすめします。