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学資保険と新NISA、教育資金積み立てるならどっちがおすすめ?

FPにききたいお金のこと 中村 賢司

学資保険と新NISA、教育資金積み立てるならどっちがおすすめ?

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小さなお子さんがいるご家庭において、教育費は関心が高い分野です。今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、30代女性Sさんからの学資保険とNISAを利用した教育費の準備に関する相談です。積み立てるならどっちがいいのか、それぞれのメリットや併用する際のおすすめの方法などについて紹介します。

30代女性Sさんの相談

子どもの学資保険2つとNISAで教育費の準備をしています。しかし今、学資保険を解約してNISAの毎月の積立額を増やすか悩んでいます。ちなみに全部1万円ずつ積み立てています。学資保険は4年目です。

学資保険の特徴

お子さんの教育費、どうやって増やすか悩ましいですよね。まずは学資保険とNISA、それぞれの特徴について考えてみましょう。

学資保険はその名の通り、学資金(教育資金)を準備するための貯蓄型の保険です。毎月一定額の保険料を支払うことで、子どもの成長に合わせた進学準備金や満期学資金を受け取れます。

また契約者である保護者が亡くなった場合は保険料の支払いが免除になり、保険の効果でお子さんの成長にあわせて学資金を受け取ることができるのも大きな特徴です。

教育資金を準備する手段として非常にポピュラーな方法です。ただ残念ながら低金利の影響で積み立てた資金の増え方は芳しくありません。

NISAの特徴

2023年12月末で旧来のNISA制度が終了し、2024年1月から新NISA制度がスタートしました。新NISAの主な特徴は下記の通りです。

・非課税運用期間が無期限
・購入できるのは株式や投資信託など
・一人当たりの非課税枠は全体で1800万円、ただし1年間で購入できるのは株式や投資信託が購入できる成長投資枠が240万円、金融庁の積み立て基準を満たした投資信託の積み立て購入に使えるつみたて投資枠120万円を合算した最大360万円までです。

通常、銀行の利子や株式・投資信託などで得た利益に対しては約20%の税率で課税されますが、NISA口座内の取引などで得た利益については非課税で受け取れます。また新NISAでは非課税運用期間の縛りがなくなり、教育資金や老後資金などを準備しやすくなりました。

学資保険とNISA、メリットとデメリット

AとBの選択
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学資保険とNISA、どちらの方法にもメリットとデメリットがあります。

学資保険

<メリット>
将来の受取金額が保険会社によって保証されている。もし契約者である保護者が亡くなっても、将来の満期額資金の受け取りが可能。

<デメリット>
積み立てた資金があまり大きく増えない。早期解約の場合、支払った保険料を割り込む。

<学資保険が向いている家庭とは?>
運用のリスクを取らず、将来の受取金額が確定していると安心できる、生命保険の機能が付いている方が良いというご家庭。

NISA

<メリット>
投資信託の積み立てを長期で行うことで、学資保険以上の資金を準備することが期待できる。非課税で運用できる。進路が変わって早めに取り崩しが必要なケースでも柔軟に対応しやすい。

<デメリット>
マーケットの状況によっては元本割れする。保険の機能はない。

<NISAが向いている家庭とは?>
長期・分散・積み立てで資金をしっかりと増やしていきたい。子どもへの金銭教育の一環として運用している姿を見せたいというご家庭。

どちらにも良い面と注意すべき面があります。そのため、商品の優劣に目を向けるよりも学資保険とNISAの、どちらが自分たち家族の考え方や目的に合うかだと思います。

学資保険を解約し、NISAを増やすべきか?

学資保険を解約し、NISAの金額を増やすという状況で考えるのは以下のようなことです。
まずは学資保険を解約するにあたっての注意事項です。

1)早期解約になるため解約返戻金が少ない

4年目ということで解約返戻金はかなり少ないと考えられます。

2)受け取る予定であった金額についての約束がなくなる

金額の保証がなくなります。

3)生命保険の機能がなくなる

その他の生命保険で必要保障額が準備されていれば、それほど心配はありません。

4)お子さんの年齢

お子さんの年齢によっては、NISAでの運用期間があまり取れないかもしれません。

 

続いてNISAの積立金額を増やすにあたっての注意事項です。

1)教育資金が全てリスク性資産になる

もし学資保険を2つとも解約し、その分をすべてNISAに回すと、教育資金の準備が全て資産価値が変動するリスク性資産となります。

2)一番必要なタイミングに暴落している可能性もある。

高校入学や大学入学など、一番必要なタイミングにマーケットが暴落し、手元の資産価値が半減するという可能性もあります。

3)あと何年積み立てるか?

学資保険にはお子さんの年齢で10才・15才・17才など払い込み満了のタイミングがあります。何才まで積み立てるかの計画をしておいた方が良いでしょう。

学資保険とNISAを併用する際の最適な積立方法は…

考える男性
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筆者であれば下記のように準備します。

(現在)
学資保険:1万円×2契約、NISAでの積み立て:1万円=合計3万円/月

(提案)
学資保険:1万円×1契約、NISAでの積み立て:2万円=合計3万円/月

筆者であれば学資保険を1契約にして毎月1万円、NISAの積立金額を2万円とします。
理由は以下の通りです。

・学資保険では資金が増えにくい
・学資保険は将来の受取金額が決まっている
・NISAだけだと教育資金としてはリスクが高すぎる
・5年以上の運用期間があれば、学資保険の解約で発生する損をカバーできる可能性が高い
・投資信託は「株式50%:債券50%」のインデックスファンドなどを使い、資産価値の変動幅が大きくなりすぎないようにする
・NISAでの運用であれば、私立中学や私立高校への進学など早期に資金が必要になった場合でも対応しやすい

学資保険・NISAともに良い点と弱点があります。ですので、どちらか一方に絞るのではなく、学資保険とNISAの掛金の割合を変えることを検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

かつての学資保険は、満期になれば支払った保険料の110~120%程度の満期保険金を受け取れるものがありましたが、現在ではほとんど増えないという状況になっています。またNISAなどを使って投資をする人も増え、教育資金の準備に投資信託の積み立てを使っているご家庭も多くなりました。

いずれもメリット・デメリットがありますが、投資信託には大きく値下がりする可能性があります。いざという時に値下がりをしたとしても、それをカバーできる準備も必要でしょう。リスクを分散するため、値下がりの心配がない預貯金や学資保険などを併用することもオススメします。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。