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今話題の「静かな退職」社員達、あなたは何のために働いているの?

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

今話題の「静かな退職」社員達、あなたは何のために働いているの?

15%の社員は「静かな退職」状態で働いている?

新聞記事を見ていて、ちょっとびっくりするニュースを見かけました。会社員のうち15%は、働いているものの「静かな退職」の状態にある、というものです。

ここでいう「静かな退職」が指しているのは、会社員として普通に働いているものの、言われた仕事だけを淡々とこなしており、成長意欲は低めで、昇格昇給などにはあまり興味がないような人たちのことです。

ちょっと前でいえば、定年退職が来年に控えているような引退直前世代のイメージでしょうか。「あと1年で定年だからね…」とやる気のない社員というのは会社にとっては困ったものです。今では、そういうマインドの人が若い世代にも増えているのだとか。

15%といえば、あなたの職場で、30人くらいのチームがあれば4人ないし5人が該当すると考えられます。与えられた仕事はちゃんとこなしている、といえば必ずしも悪いわけではありませんが、自分や会社の成長に興味のない人がたくさんいるというのはちょっと気になります。

今回は、ライフプラン3.0世代の視点で、「静かな退職」問題を考えてみたいと思います。

働きがいは会社が与えるものなのか、自分で見つけるものなのか

「静かな退職」問題、企業経営者にとっては大きな難問となっています。なんとなくホワイト企業にして人材を集めたとしても、社員が会社を成長させる力となってくれないのでは困ります。

かといって、「残業当たり前!」「徹夜して企画書を書いてこそ一人前!」「土日も当然出社(もちろん無給)!」としていてはやはりダメです。こうした会社は、ブラックだと言われて転職されてしまいます。

社員のやる気を引き出したり、仕事の楽しさを感じてもらえるよう、色々な会社が工夫をしています。少しずつ負荷を高めて仕事でできる範囲を広げていくようなジョブトレーニングも会社がうまくアレンジしているところのようです。

社員として働く皆さんは、こうした会社の取り組みをしっかり把握し、自分に意義のあるところは積極的に受け入れてみてください。

また、会社は社員ひとりひとりとのコミュニケーションを重視するようになってきています。上司と業務に関する定期的な面談を行ったり、ハラスメント等の社内問題についてグループディスカッションをして改善を図ったり、あるいは通報する仕組みを設けるなどして、社員の声を拾い上げようと努めています。

これらもうまく活用し、自分自身が今の会社で成長し、それが会社にとってもプラスになるような道筋を描けないかどうか、考えてみください。

淡々と働くのもアリだが、20歳代ならまだ決めつけるのは早いかも?

自分の仕事や働き方について、いろんな検討をしたうえで、あえて「静かな退職」モードに入って働く、というのはあってもいいと思います。

仕事は本質的にはお金を稼ぐ「手段」であって、人生の「主目的」ではありません。自分自身が幸せな人生を感じられるようにお金をどう稼ぎ、使うかを考えればいいからです。

仕事のストレスでメンタルを崩すくらいなら、無理のない範囲で業務をし、過度な関わりをもたずに、日々の生活に困らない範囲の稼ぎだけを確保していくのも、働き方のひとつです。

いろいろ考えたうえで、「そこそこ稼げているし、その範囲内で十分にプライベートも幸せを確保しているので、これでいい」という結論に至るなら、それはそれでアリです。

とはいえ、「働きがい」という幸せも少なからず存在します。たとえば、

・自分の会社の商品が誰かの笑顔をもたらす感覚
・自分の仕事を通じて取引先に喜んでもらえた実感
・職場でチームとして何かを成し遂げる達成感
・課題を達成したときに上司に褒められたり同僚にねぎらわれたときの幸福感
・自分自身が仕事を通じて成長したことの実感

などなど、「働きがい」は私たちの幸せのパーツの一部です。「…感」の文字が多くなっている通り、働きがいの多くはあなた自身が感じるところにあります。

20歳から30歳代はまだ伸び代が多く残されています。異動があったり、上司やクライアントとの接点が変わったりしたら、いきなり働きがいが高まったり、自分自身の成長曲線が見えてくることがあります。

私も20歳から30歳代にかけて何度か仕事で煮詰まり、つまらなくなったことがあります。そのとき、仕事相手に支えられたり、仕事そのものを通じた自分の成長を感じることで何度か壁を乗り越えてきたと思います。違う仕事に手を広げたことが自分の世界を広げてくれたこともありました。

「私の働き方は『静かな退職』でいいんだ」、と決めつけるのは早すぎます。自分自身が幸せになるために「働く意味」を見つけてみてはいかがでしょうか。

会社よりあなたの意識が高いなら独立する道もある

「静かな退職」問題、実はもうひとつパターンが考えられます。

むしろ自分のやりたいことがあって、「独立して社会のために起業をしたい」とか「転職をしてもっと大きなビジネスと関わってみたい」というようなケースです。この場合、「静かな退職」が意味するのは、仕事への無関心ではなく、次のジャンプアップのための雌伏の時期ということになります。

あなたの希望するキャリアアップを会社が叶えてくれないと感じたら、飛び出してみるのもアリです。転職活動が結果として「働きがいアップ×年収アップ」となることもありますし、「働きがいアップ×年収維持」であれば、これは意義のある転職ということになります。

転職未経験者はついつい、今の会社だけが世界の全てだと思ってしまいがちですが、今の仕事内容に不満があるなら転職に挑戦してみてもいいでしょう。

違う会社に移るのではなく、自分の会社を興す、というのも働きがいとしては大きな選択肢です。起業のチャレンジ、私は止めませんしむしろ歓迎します。ただし、成功のためのハードルが高いことは覚悟しておく必要があります。また、準備も入念に行わなければなりません。

・やりたい仕事に関する専門知識があるか
・事業計画は立てられるか
・起業に関する基本的知識があるか(支援制度など)
・税金や社会保険などの負担・手続きを理解しているか

などなど、起業を本格的に考えるとやるべきことは山積みです。起業については外部のサポートもたくさんありますので、こうした力も借りながらあなたの考えるビジネスを形にしてみてください。

実は、転職や起業を意識すると、今の会社の仕事への関心が高まることもあったりします。今まで無関心だった会社の新年度事業計画発表会も、自分ごととして考えると血肉となる知識の宝庫です。

気がつけばいつの間にか「静かな退職」を抜け出して、働きがいのある社員に変化していることもあるかもしれませんね。