35歳女性のSNS投資詐欺被害…失った貯金額を取り戻す家計改善法は
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は35歳女性Iさん、一人暮らしの家計簿です。
1年前から一人暮らしを始めたIさんは、それまで実家暮らしで家計管理に不慣れでした。貯金していたお金を投資詐欺で失い、将来への不安を抱えています。近年増えている投資関連の詐欺被害にあわないための対策法と共に、今後の計画的な貯金を増やしていくための家計管理のポイントを紹介します。
35歳女性Iさんのご相談内容
ずっと実家暮らしでしたが、1年前から一人暮らしを始めました。実家にいた時は家にお金を入れることもなく暮らしており、お金に困ることもなくなんとなくお金を使ってきていました。それなりにお金が貯まっていたのですが、一人暮らしをする必要が出てきて急に将来が不安になり、SNSをきっかけに投資の勉強会、セミナーに参加し「確実に利益が出る」と言われてよく分からないままお金を振り込み、詐欺にあってしまいました。
貯まっていたお金もなんとなく貯まっていたお金なので、使い方をしっかり考えることもなく振り込んでしまったことを後悔しています。これからちゃんとお金を貯めていこうと思っています。現在の家計のどこから手をつけたらいいでしょうか。
Iさんの家計簿は…?
手取り額が21万8000円です。収入から毎月使った残りの金額を貯金に回しており、月々の定額の貯金はしていません。今月は手取りの約8%の1万6820円を貯金することができました。
投資トラブルの相談が9.6倍に
近年、SNSをきっかけに投資を勧められ、お金を振り込んだら相手と連絡が取れなくなるなどの投資トラブルが増えています。国民生活センターの調査によると、2023年度の相談件数は2022年度と比べて約9.6倍に増加しました。
また、詐欺の相談に関する金融商品の平均契約購入金額も大幅に増えています。2022年度は234万円だったのに対し、2023年度は687万円と約2.9倍の金額となりました。このデータからも、被害が深刻化していることが分かります。
※1)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等を オンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベース
※2)消費生活センター等から の経由相談は含まれていない。本資料の相談件数等は2021年度受付分から2024年4月30日までのPIO-NET 登録分 (n=1,935)
「確実に利益が出る」「絶対に儲かる」には要注意!
SNSで勧誘を受けた場合には、まず疑うようにしましょう!「確実に」「絶対に」利益が出ると言われたら疑うことを忘れないでください。まず以下の3点をチェックします。
・必ず利益がでる商品だと説明がある
・勧められた商品のリスクについて具体的な説明がない
・資金の振込先が個人名義
最初は少額な振込から始まり、確実に利益が出ているような案内があるケースが多く見られます。利益としてお金を振り込まれると相手を信用してしまい、次は大きな利益を期待して自分から多額のお金を振り込んでしまうような例もあります。
お金を振り込む際には、相手が必ず金融庁が認可している金融機関かどうか確認をとることが大切です。一旦振り込んでしまうと被害にあったお金を回収することは困難です。認可を受けていない相手は詐欺だと考え、振り込むことは避けましょう。
金融庁の認可を受けているか確認する
日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業や暗号資産交換業を行う事業者は、金融商品取引法または資金決済法に基づき、必ず登録を受ける必要があります。
もし投資商品の勧誘を受けた際は、まず金融庁ホームページで登録の有無を確認することが非常に重要です。銀行などの金融機関、電子決済等代行業者や金融商品取引業者、保険会社など登録の有無を確認しましょう。
参考:金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」
金融庁は、無登録で金融商品取引業を行っている事業者に対して、警告書を発出した事業者の名称等を公表しています。下記のHPで掲載されていますので、併せて確認しましょう。
ただし、掲載されている無登録業者は警告書が発出された時点で無登録営業を行っていることが確認できた者に限られています。そのため、掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為をしていることがありますのでご注意ください。
参考:金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
「特別」「限定」「あなただけ」の言葉は注意のサイン
「一般の方は知らない、特別な方だけの商品のため多くの方には公表していません」「秘密の情報をあなただけに特別にお知らせします」「限定ですので早くお申し込みください」と申し込みの期限を切られると、早く決断しないとチャンスを逃してしまう!と思うかもしれませんが、金融庁へ届け出をしていない業者の商品には決して手を出さないようにしましょう。
家計管理についてのアドバイス~先に貯めて、残ったお金で生活する~
Iさんは収入から生活費で使った残りを貯金するようにしています。このお金の管理方法だと「貯金」が後回しにされるため、お金を貯めることが難しくなります。使った後に「貯金」するのではなく、先にお金を貯め、残りのお金で生活するようにしましょう。これがお金を貯める基本のルールです。この仕組みを作ることで、計画的に貯金をできるようになります。
目標:手取りの17%程度のお金を貯める
一般的に手取りの17~18%が継続しやすい貯金額といわれています。Iさんの場合、手取りの18%は3万9240円。毎月4万円貯金することを考えると、今月の貯金額にプラス2万3000円程度を貯金に追加する必要があります。
お小遣い制にする
生活する上で必須な費用と、そうでない費用を自分で見直してみましょう。支出には個々の価値観と事情が反映されます。どうしても譲れない支出があれば、それが無理なく継続できるように優先順位の低い支出から削るようにしましょう。
またIさんは現在、衣服費や交際費に支出の上限を設けていないとのことです。これらの支出に「お小遣い制」を導入し、設定した予算の中から支出するようにすることを考えてみてください。
現在、衣服費と交際費の合計額が5万2000円ですが、例えばお小遣いを3万円に決めて、その中で衣服費や交際費をやりくりするようにすれば毎月2万2000円を貯金に回せます。
大切なことは自分で支出の優先順位を見極めること
まず1カ月分のレシートやクレジットカード明細を確認し、譲れない支出と、使わなくてもいい支出を一つ一つ見極めてみましょう。無駄だと思える支出は、思い切って貯金に回してみましょう。
支出の優先順位は他人には見極められないこともあります。Iさんがおっしゃっていたように、楽になんとなく貯まったお金は使う時にためらいを感じることが少ないかもしれません。反対に考え抜いて自分で工夫して貯めたお金は、大切なお金として大事に使うようになると思います。
今回お金を失ってしまった経験を、これからの家計管理に活かしていくことをどうぞお考えください。
アドバイスを受けたIさん談
「預けてもらったら必ずお金が増える」と言われて欲が出てしまいました。恥ずかしいのと情けないのとで後悔ばかりしていました。しかし、金融庁に届け出をしているかを確認することや、後で相談するのではなく事前に相談すれば詐欺にあうことも防げると思いました。
家計も今まではまず使いたいように使い、余ったら貯めようと思っていましたが、一人暮らしをきっかけにお金が貯まる家計にしていきたいと思います。仕組みを作ることですね。まずは失ったお金の金額を目標に貯めていきます。
家計簿診断を終えて
将来のお金に不安を感じたり、メディア等で投資のニュースを見て「自分も何か始めなきゃ…」という焦りや不安を感じたりしているところに、SNSなどで著名人などの名前を出して巧みに勧誘されると誰でも心が揺れてしまうかもしれません。
「自分だけは大丈夫」とは思わず、少しでも不安に感じることがあれば消費者ホットライン「188(いやや!)」番にご相談ください。最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。
大切なお金だからこそ、相談することを忘れないようにしてください。