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2025年5月からより厳しく?エコカー減税の変更点は

そなえる 中村 賢司

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排出ガスを出さない、または少ない電気自動車やハイブリッド車などが普及してきました。これらの車のさらなる普及を後押しするために、日本ではエコカー減税という制度が導入されています。このエコカー減税制度は、近年段階的に内容が変更されています。2025年5月から燃費基準が引き上げられ、一部車種が対象外になる可能性があります。本記事では、2025年5月からの変更点4つについて解説していきます。

エコカー減税とは?

エコカー減税は、地球温暖化対策の一環として、環境性能に優れた自動車の普及を促進するために設けられた制度です。環境性能が優れた対象車は自動車重量税が軽減(または免税)され、新車購入時や車検時の費用負担が軽くなります。エコカー減税制度は2009年4月からスタートし、令和5年度の税制改正で、適用期間が2026年4月30日までに延長されました。ただし制度が延長された一方で、2024年1月1日と2025年5月1日から、燃費基準などが段階的に引き上げられることが決定しており、軽減対象となる車や減税内容が変わります。

2025年5月からこう変わる!エコカー減税の4つのポイント 

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それでは2025年5月以降、どのように変更されるのかを確認していきましょう。

1)燃費基準がより厳しく!75%達成がボーダーラインに

エコカー減税に求められている環境基準は「燃費」と「排出ガス」について定められており、その基準をクリアする必要があります。ベースとなる燃費基準は「2030年度燃費基準」です。これまでは2030年度基準の70~120%を達成すると自動車重量税が軽減されていました。2025年5月1日以降は2030年度燃費基準の75~125%を達成していないと、エコカー減税の対象に含まれなくなります。なお乗用車における排出ガス基準は、これまでと同様に平成30年の排出ガス規制の50%低減が継続されます。

2)減税率の変更に要注意

燃費基準が厳しくなることで、これまで免税(100%減税)対象であった一部の車種が、免税ではなく減税対象(50%または25%減税)になったり、減税対象外になったりする可能性があります。

<2024年1月1日~2025年4月30日に新車新規登録した場合>

<2025年5月1日~2026年4月30日に新車新規登録した場合>

3)減税額は変化、税額は変わらず

減税率の見直しはありますが、自家用乗用車の新車新規登録時の税額や車検時の税額そのものには変更ありません。車両の重量に応じて、以下のような税額が発生します。

<3年新車登録時の重量税>

図:国土交通省「2023年5月1日からの自動車重量税の税額表」を参照し筆者作成

<2年自家用乗用車の車検時(継続検査時)の重量税額>

図:国土交通省「2023年5月1日からの自動車重量税の税額表」を参照し筆者作成

4)対象車種の範囲

エコカー減税の対象となる車種はこれまで通り電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)、天然ガス自動車(NGV)といった次世代自動車に加え、燃費基準を満たすガソリン車やハイブリッド車、クリーンディーゼル車も対象となっています。

また新車だけでなく、基準を満たしている中古車もエコカー減税の対象になります。ただし燃費基準に対する目標値がこれまでよりも高くなっており、車検時に減税が適用される中古車の台数は減少する見込みです。

2026年以降のエコカー減税はどうなる?

2026年4月30日以降のエコカー減税がどうなるかは現時点では不透明ですが、政府の2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの中でエコカーの普及は重要なポイントです。

そのため環境性能の高い自動車の普及を促進する流れは、今後も続くと考えられます。制度が再延長されるか新たな税制措置が導入される可能性が高い一方で、段階的な縮小やEV・PHV(PHEV)などへの重点化といった方向性も考えられるでしょう。

エコカー購入前に確認すべき5つのポイント 

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エコカー減税の対象車を購入する際の注意点をいくつか挙げます。
1)最新の適用基準を確認すること
2)対象車種であるか確認すること
3)国や地方自治体の補助金制度を活用できるか確認すること
4)自分のライフスタイルに合った車種を選ぶこと
5)減税額だけでなく総費用についても検討すること

エコカー減税は時期によって適用される内容が変化しており、同じ車でも購入や登録時期によって適用される税率などが異なることがあります。まずは最新の基準に基づいて、エコカー減税の対象車種なのかを確認しましょう。

またエコカーは国や自治体などが購入時の補助金を出していることもあります。利用できればさらにメリットがあるでしょう。

ただしエコカー減税だけに気を取られて、ライフスタイルに合っていなかったり、取得時の費用が高額になったりする可能性もあります。この点は特に注意が必要でしょう。

FPが回答!車購入前のお金のよくある疑問

車を購入する際には自動車本体の費用の他にも、自動車税や登録のための費用が必要です。また維持費として自動車保険(任意保険)や駐車場代、毎年の自動車税などが発生します。

Q:任意の自動車保険には加入が必要でしょうか?

A:厳しい言い方ですが、任意保険の保険料を払えない人は、自動車を所有する資格がないと言っても過言ではありません。強制保険として自賠責保険の加入が義務づけられていますが、自賠責保険で補償される金額はわずかです。第三者に対する補償として、対人・対物無制限の自動車保険に加入するべきでしょう。

Q:車の購入を検討していますが、維持費がどのくらいかかるか見当がつきません。

A:主な維持費としては、①自動車税(排気量によって年間約3万円~)②自動車保険(年間約5万~15万円)③車検費用(2年ごとに約10万~15万円)④ガソリン代(月間約0.5万~2万円)⑤駐車場代(都市部なら月2万~3万円)⑥メンテナンス費用などがあります。

自動車保険の保険料は若い人や契約年数が短い人は高額になる傾向があり、駐車場代は都心部に近いほど高くなります。そのため所有者の年齢や地域によっては所有する車がコンパクトカーであっても、年間で30万~40万円程度の維持費が必要なことがあります。駐車場代や保険料などのランニングコストがどれくらい必要なのかを購入前に見積もることが重要です。

まとめ

エコカー減税は、地球環境に配慮した自動車の普及を後押しするための重要な制度で、対象車の自動車重量税が免税や軽減されます。

現行制度は2026年4月末まで延長されていますが、2025年5月から燃費基準が引き上げられ、これまで対象だった車種でも減税率が変更されたり、対象外となったりする可能性がある点に特に注意が必要です。政府は2050年のカーボンニュートラル実現を目指しており、今後も環境性能の高い車を優遇する流れは続くと考えられますが、制度内容の見直しは適宜行われるでしょう。

なおエコカーを選ぶ際には、最新の減税適用基準や対象車種を必ず確認しましょう。また、国や自治体が提供する補助金制度も活用できるか確認することをおすすめします。

ただし、最も大事なことは減税メリットだけでなく、車両価格や保険料、駐車場代などの維持費を含めた総費用と、ご自身の使い方やライフスタイルにその車が本当に合っているかを総合的に検討することです。購入後の維持費も念頭に置き、計画的に車選びを進めましょう。