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「とりあえず」はダメ?独身女性の老後資金戦略とは【家計簿診断】

うちの家計簿 世継 祐子

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FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は充実したシングルライフを継続していきたいという41歳女性、一人暮らしの家計簿です。

41歳独身Mさんの相談内容

現在シングルで、これから結婚する予定はありません。退職後、年金生活になってもできるだけ充実したシングルライフを送りたいと考えています。今は個人年金保険に加入していますが、新たに年金保険への加入を検討しています。老後資金の準備は年金保険へ加入しておけば大丈夫でしょうか。

Mさんの家計簿は…?

手取り額は28万5320円です。手取りの約14%の4万円を毎月貯金しています。年金保険に2件加入しており、合計保険料1万7000円と毎月の貯金額4万円を合わせると手取りの約20%を貯めることができています。

「年金保険」のメリット・デメリット

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年金保険とは、一般的には60歳以降の将来、年金のように定期的にお金を受け取ることができる保険です。老後の生活資金の備えを目的として加入します。年金保険には、将来の年金の受取額が決まっている元本確保型の「定額タイプ」と投資型の「変額タイプ」があります。

年金保険のメリット

・老後の資金になる
 公的年金だけでは不安な人にとって、上乗せの収入になる

・計画的に貯金できる
 毎月決まった金額を支払っていくので自然に貯めることができる

・死亡時に死亡保険金が支払われる
 自分が死亡した際の死亡保険金の受取人を指定し、お金を残すことができる

・節税効果あり
 個人年金保険料控除が使えるプランであれば、所得税・住民税が安くなる

年金保険のデメリット

・柔軟性が低い 
 途中で解約すると解約控除の費用がかかる場合や、元本が割れる場合もある

・利率が低いことも
 利率が低ければ預金と変わらない効果しか得られないこともある

・保険料支払い期間が長期になる
 数十年続けるプランも多く、途中でライフプランの変更等があった場合に対応しづらい

Mさんが加入している年金保険は

Mさんが加入している年金保険は、2件とも払込期間が60歳で終了し、60歳から10年間年金が支払われるタイプの定額保険。「個人年金保険料控除」の対象となっています。

「定額タイプ」と「変額タイプ」の違い

定額タイプは契約時に将来の年金額が分かり、払込期間終了まで支払えば保険料支払総額よりも受け取る年金額の方が多くなります。注意点としては、加入した時期により積立利率が異なり、利率が低いときに加入すれば受取額があまり増えないこともあります。

変額タイプは保険会社が設定した投資信託などの特別勘定で運用する仕組みになっており、将来もらえる年金額は運用次第で変わります。元本の保証はありません。運用の成果次第では、将来受け取れる年金額が増加する可能性もあります。

加入する目的を明確に しよう

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老後資金を貯めるには「年金保険」に加入すればいいのでは…と考える方も多いと思います。
特にシングルだと一人で生計を立てる必要があるため、「定年などで働けなくなった時の老後資金として、公的年金の上乗せができる仕組みを今から作っておきたい」と「年金保険」への加入を検討する方もいらっしゃいます。

保険を含め、預貯金や投資信託などの金融商品にはそれぞれの特徴があります。商品を選択する前に、何のためにその商品を選択したいのか、目的を明確にすることがとても大切です。

老後資金を準備することが目的であれば「いつまでにいくら貯めたいか」をまず考えてみましょう。その上で目的に合う商品を調べ、自分に合った商品を選択することが大切です。

ステップ1:まず「いくら必要なのか」を知る

老後はどこで生活したいか、最低限どのくらいの生活費が必要なのか、現在の生活費を参考に老後の生活費を試算してみましょう。

老後は通勤が不要となり、郊外への転居等で家賃を安く抑えることが可能となります。またシングルの方は実家へ戻ることを希望されている場合もあり、家賃等の住居費の負担が減るなど、食費、交際費を含めお金の使い方が変化する可能性があります。老後の生活費を具体的に想像し自分の老後資金を算出してみましょう。

次に公的年金の受給額を確認します。日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、将来受け取れる年金額を確認しましょう。

公的年金額が分かったらMさんがすでに加入している年金保険についても年金の受け取り期間や年金額を確認し、合計の受取額を計算しておくことが大切です。

老後に必要な生活費から、公的年金と私的に準備した年金額を差し引いた金額が、これから自分で準備する必要がある老後資金の目安となります。

ステップ2:「いつまでに」「どうやって」貯めるか

必要な金額が分かったら「いつまでに」「どうやって」貯めるかを考えます。まずは定年退職までの期間を計算し、貯蓄できる期間を明確にします。Mさんは現在41歳。65歳が定年で65歳まで働くことを希望されているため、65歳までの24年間はお金を貯められる期間とします。

次は毎月の貯蓄目標額を決めていきます。

金利が0%のものなら、毎月約7万円貯めていけば目標額の2000万円を貯めることができます。

ステップ3:金融商品の特徴を知る

老後資金の準備として検討できる金融商品には以下のようなものがあります。

・預貯金
最も基本的な方法で、安全性は高いですが、金利は低い傾向にあります。 

・NISAのつみたて投資枠
少額からの積立投資ができ、運用益が非課税になる制度です。リスクを抑えながら長期の資産形成が可能で、投資初心者にも始めやすい制度です。 

・iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛金を拠出し、運用方法を選んで積み立てる制度です。掛金が所得控除の対象になるなどの税制優遇があります。原則として60歳まで引き出せませんが、老後資金を着実に準備できます。

・生命保険(養老保険、個人年金保険など)
 保障を準備しながら満期時に保険金や年金を受け取れる保険です。「定額タイプ」「変額タイプ」の商品があります。

リスクを分散することが大切

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老後のためにお金を準備する際には、リスクを分散することが大切です。
現在Mさんが老後資金準備のために加入している個人年金保険は定額プランなので、これから物価が上昇し続けても、個人年金保険で受け取る年金額は当初決められた年金額のまま変動することはありません。

今後物価の上昇にも備えたいと考えるのであれば、同じ「定額タイプ」の年金保険ではなく、「変額タイプ」の年金保険や「がん」など三大疾病に罹患した際などに保険料が免除されるタイプの保険、NISA、iDeCoなどを利用することも有効だと思います。

自分にあった金融商品を選ぶには、資産形成のための基礎知識を身につけて検討することが大切です。それぞれの商品のメリット、デメリットの説明を十分聞いて選択していきましょう。

家計管理についてのアドバイス

企業型DC(企業型確定拠出年金)についても確認を

Mさんの給与明細を確認したところ、企業型確定拠出年金の掛け金が天引きされていました。
こちらも老後資金として活用できる資金です。毎月積み立てている金額と運用の中身を確認し運用実績を確認しておきましょう。

企業型DCで積み立ててきた年金資産は、60歳以降、一時金か年金どちらかの形式で受け取ることができますが、どちらも税制優遇を受けられます。一時金であれば「退職所得控除」、年金であれば「公的年金等控除」を受けられ、税を軽減することができます。

アドバイスを受けたMさん談

今までは漠然と、老後のために「とりあえず」年金保険に加入していました。何か老後のために加入していればいいか…と考えていましたが、違ったのですね。

これからの生活を具体的に考えて将来必要な金額を導き出し、そこから毎月いくら積み立てられるのかを考えなければ目標にはたどり着けないのだと分かりました。NISAやiDeCoも実は気になってはいたのですがそのままにしていました。

私が65歳の時には今よりももっと物価が上がっていると思うので、物価上昇に対応できるような金融商品も検討していきたいと思います。年金保険も「変額タイプ」のものがあることを今回初めて知りました。あわせて検討してみたいと思っています。

家計簿診断を終えて

シングルの場合、家計を一人で担っていかなければなりません。自分の収入が減ると、世帯の収入もそのままダイレクトに減少します。65歳まで安定した収入があれば、積極的に貯蓄や資産形成に励むことができますが、重い病気やケガで働けなくなり収入減少などがあると将来の老後資金にも大きな影響を与えます。就業不能時の保障も検討しておくことをお勧めします。

公的年金でも障害年金などが準備されています。病気やケガで体が不自由になって働けなくなったりして、今までのように仕事をするのが難しくなった時にもらえる年金です。「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。老後の年金とあわせて内容を確認しておきましょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。