2026年から「独身税」開始?「子育て支援金」に批判が集まるワケ
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監修・ライター
「2026年から"独身税"が始まるって、本当なの?」最近、この話題を耳にして不安になっている方も多いのではないでしょうか。正式には「子ども・子育て支援金制度」という名前で、独身者だけが対象ではありません。でも、実際には子どもがいない人にとって「これって実質的な独身税じゃない?」と感じてしまう制度になっています。制度の詳細や具体的な負担額について、分かりやすく整理してみました。
「独身税」の正体は子育て支援のための新制度
2026年4月からスタートする「子ども・子育て支援金制度」。これが世間で「独身税」と呼ばれている制度の正体です。
実は、この制度は独身者だけが対象ではありません。健康保険に加入しているすべての人が負担する仕組みです。でも、なぜ「独身税」と言われるのでしょうか。
答えは簡単で、制度の恩恵を受けるのは主に子育て世帯だからです。子どもがいる家庭は支援を受ける側に回る一方で、独身者や子育てを終えた世帯は負担だけして、メリットはほとんどないという構図になっています。
「これって、実質的に独身税と同じじゃない?」という声が、特に独身の方や子どもを持たない共働き世帯(DINKs)から上がっているのは、こうした理由からです。
制度の特徴は保険料から天引き
「子ども・子育て支援金制度」の大きな特徴は、新しい税として徴収されるのではなく、医療保険料に上乗せされる形で集められることです。
つまり、毎月の給与から天引きされる健康保険料が少し高くなる、という仕組みです。税金という言葉を使わないことで、増税というイメージを和らげる狙いがあるのかもしれません。
3.6兆円規模の少子化対策予算のうち、1兆円程度を子ども・子育て支援金制度で確保し、以下のような用途に使われます。
児童手当の拡充
- 支給対象を高校生まで拡大
- 所得制限の撤廃
- 第3子以降は3万円に増額
新しい給付制度の創設
- 妊婦への支援給付(妊娠・出産時に各5万円)
- 出産後の休業支援給付(手取り10割相当の保障/最大28日間)
- 子育て中の時短勤務支援(子が2歳未満までの時短勤務の場合、時短勤務時の賃金の10%相当を支給)
これらの支援は確かに子育て世帯にとってはありがたいものです。でも、恩恵を受けない人にとっては「なぜ自分が負担しなければならないのか」という疑問が生まれるのも当然でしょう。
気になる負担額、年収別にチェック
最も気になるのは、実際にどれくらいの負担になるのかという点です。
制度開始の2026年度は月額平均250円からスタートし、段階的に増額されて最終的に2028年度は月額平均450円になる予定です。ただし、実際の負担額は年収によって大きく異なります。
2028年時点での年収別負担額(月額)
会社員・公務員の場合
自営業者・フリーランス(国民健康保険)の場合
なお、会社員の場合は本人負担に加えて企業も同額を負担しているため、本人負担額の約2倍が社会全体の負担となります。
制度への複雑な思いと求められる透明性
この制度について、子育てをしている私も複雑な思いを抱いています。
確かに、少子化は深刻な社会問題です。政府が「若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と位置づけているのも理解できます。
しかし、「全世代で子育てを支える」という理念は分かるものの、実際には負担だけが増える人たちの気持ちを考えると、手放しで賛成できない部分もあります。
政府は「歳出改革や賃上げとセットで考えれば、実質的な負担増はない」と説明していますが、実際に給料から天引きが始まったら、そう感じる人がどれだけいるでしょうか。
この制度が成功するためには、何よりも透明性が重要だと思います。
・支援金の使い道を"見える化"する
集められたお金が本当に効果的に使われているのか、定期的に成果を公表することが大切です。
・負担と効果のバランスを検証する
年間1兆円を投じて、どれだけの効果があったのか。出生率の改善に繋がっているのか。継続的な検証が必要です。
・制度の公平性を見直す
本当に「全世代が支える」制度なのか、それとも特定の世代だけが負担している制度なのか。客観的な評価が求められます。
2026年4月まで、残り1年
「独身税」とも呼ばれる「子ども・子育て支援金制度」の開始まで、あと1年を切りました。
この制度が本当に少子化問題の解決に役立つのか、それとも負担だけが増えて終わるのか。実際に始まってみないと分からない部分も多いでしょう。
でも、はっきり言えるのは、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち続けることの大切さです。「独身税」という言葉に込められた違和感を軽く見ることなく、制度の透明性を求めながら、本当に効果のある少子化対策を一緒に考えていく。
そんな姿勢が、これからの社会には必要なのではないでしょうか。