金利上昇で国債に注目!2025年に知りたい個人向け国債の利回り活用術
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監修・ライター
2025年8月23日付の日本経済新聞によると、財務省は国債の利払い費を計算する際に使う想定金利を2.6%に引き上げる方針で調整を進めています。この背景にあるのが、長期金利の上昇です。
長期金利とは新しく発行される10年物国債の利回りのことで、住宅ローンなど私たちの身近な金利にも影響する重要な指標です。こうした状況を受けて、最近では個人向け国債の利回りが注目を集めています。
そこで、本記事では、個人向け国債の仕組みや利回りの見方、賢い活用方法などについて解説します。
なぜ2025年に国債が注目されているのか
長期金利の上昇により、国債が資産運用の選択肢として再評価されています。そこでまず、国債の基本を押さえた上で、その特徴や、近年注目を集めている理由を見ていきましょう。
国債とは?主な種類と仕組み
国債とは、国が資金を調達するために発行する債券のことです。国債を購入すると、半年ごとに利子を受け取り、満期(償還日)が来ると、元本は全額一括で返済されます。
国債は、国が元本と利息の支払いを保証していることから、非常に安全性が高い資産として位置づけられています。ちなみに、日本で最初に発行された国債は1870年(明治3年)、鉄道建設の資金調達を目的にロンドン市場で募集された9%利付公債でした。
これをきっかけに、日本でも近代的な公債制度が整備され、以後、財政や経済を支える仕組みとして発展してきました。
日本国が発行する国債の種類
現在、日本国が発行する国債にはさまざまな種類がありますが、個人が購入できるのは、基本的に「個人向け国債」のみです。この個人向け国債には、以下の3つがあります。
- 変動10年型・・・市場金利に応じて半年ごとに利率が変わる
- 固定5年型・・・発行時の利率が満期(5年後)まで固定
- 固定3年型・・・発行時の利率が満期(3年後)まで固定
これらの国債は、それぞれ1万円から購入でき、満期まで保有すれば元本と利息が(国が破綻しない限り)確実に戻ってくるため、安定的な投資先として多くの投資家から注目されています。
3つの国債の金利について
3つの個人向け国債の金利は、以下のように定められています。
- 変動10年型・・・基準金利×0.66(半年ごとに見直し)
- 固定5年型・・・基準金利-0.05(満期まで固定)
- 固定3年型・・・基準金利-0.03(満期まで固定)
ちなみに、令和7年8月6日に財務省が発表した資料によると、それぞれの金利は以下のように定められています。
- 変動10年型・・・年率0.97%(半年ごとに見直し)
- 固定5年型・・・年率0.97%(満期まで固定)
- 固定3年型・・・年率0.79%(満期まで固定)
なお、金利は募集時期ごとに変動するため、最新情報は財務省の公式ページ等でご確認ください。
個人向け国債のメリットと利回りの活かし方
国債の仕組みと金利の水準を踏まえた上で、次は投資商品としての特徴について解説します。ここではメリットを整理した上で、その活かし方や長期的な資産形成への効力を見ていきましょう。
国債のメリット
個人向け国債の最大の魅力は、その安全性です。国が元本と利子の支払いを保証しているため、投資初心者でも安心して保有できます。
さらに、最低利率0.05%が保証されているため、どんなに市場金利が下がっても利息がゼロになることはありません。また、利子は年2回、6か月ごとに銀行口座へ振り込まれるため、定期的に収入を得られる点も安心材料と言えるでしょう。
さらに、1万円から購入できる手軽さも、大きなメリットです。少額から始めて、ライフプランに合わせて徐々に買い増しすることも可能なため、「守りの資産」として位置づけられる非常に心強い存在です。
国債のメリットをどう生かすか
国債の持つ安定・安全性の高さを生かせば、生活資金や将来資金の運用に幅が生まれます。例えば、教育費や老後資金といった大切なお金をすべてリスク資産に預けるのは不安ですが、一部を国債に充てれば、元本を守りつつ利息を積み上げられます。
また、預金と組み合わせれば、手元流動性を確保しながら安定した利回りが得られますし、株式や投資信託と併用すれば、リスクを抑えた分散投資が可能です。このように、国債は単独で運用するだけでなく、他の商品と組み合わせることで真価を発揮し、資産運用の土台を強める役割を果たしてくれます。
国債による資産形成は長期的にどう効いてくるのか
国債は、短期間で大きな利益を狙う商品ではありません。しかし、長期的に持つことで、確実に資産を積み上げる効果を発揮します。
また、半年ごとに利子を受け取りつつ、満期時には元本が戻るため、安定的に資産を増やせます。そのため、教育資金や老後資金など、数年から十数年後に必要となる資金の準備には最適な選択肢のひとつと言えるでしょう。
さらに、株式市場が不安定な時でも国債は比較的安定しているため、長期的な資産形成の「守りの柱」として機能します。こうしたことから、時間を味方につけて着実に資産を築きたい人にとって、国債は欠かせない存在といえるでしょう。
個人向け国債を選ぶ際の注意点と2025年の展望
国債は、安全性の高い資産ではありますが、購入や運用にあたって押さえておきたい注意点もあります。ここでは中途換金や金利変動のリスクを整理した上で、2025年の金利環境と今後の展望を見ていきましょう。
中途換金の条件と注意点
個人向け国債は、原則として満期まで保有することを前提とした商品です。発行から1年経過すれば途中解約が可能になりますが、その際には直前2回分の利子が差し引かれるため、予定していた利息が減る点には注意が必要です。
こうしたことから、国債を購入する際には、短期的に使う予定のある資金ではなく、余裕資金を充てるようにしなければなりません。
金利変動リスクと利回りの限界
変動10年型は、金利上昇時には有利に働きますが、金利が下がれば受け取れる利息も減少します。一方で、固定型は利率が変わらないため安定していますが、金利が大幅に上がった際には商品としての魅力が相対的に下がる可能性があります。
また、株式や投資信託のように大きなリターンを狙える商品ではないため、国債に過度なリターンを期待するのは禁物です。あくまで「堅実に守る資産」としての役割を理解した上で活用することが大切です。
2025年の金利環境と今後の展望
2025年は、日銀の政策修正や物価上昇を背景に長期金利が1.5~1.6%台と17年ぶりの高水準となり、国債の利回りも上昇傾向にあります。これにより、個人向け国債は「安全性を保ちながら利回りも期待できる」商品として再び注目を集めています。
ですが、物価や金融政策次第では、金利が大幅に上下動する可能性も否定できません。したがって、購入を検討する際には、財務省が毎月発表する最新の利率を確認し、自分のライフプランや運用目的に合わせて判断しなければなりません。
まとめ
長期金利が1.6%前後と高水準になり、個人向け国債の利回りが再び注目されています。国が元本と利息を保証しているため、投資初心者でも安心して利用でき、最低利率0.05%が保証されている点も心強い特徴と言えます。
また、教育費や老後資金など将来の目的資金の準備にも役立つだけでなく、預金や株式と組み合わせれば、リスクを抑えた分散投資が可能です。こうしたことから、個人向け国債を上手に活用すれば、長期的な資産形成に大きな効果をもたらすでしょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。