失業保険を貰いながら扶養内パートで働きたいけど、手当は年収に含まれる?
「FPに聞きたいお金のこと」、今回は失業保険(失業手当)を受給しながら、夫の扶養から外れないように扶養内パートで働きたいと考えている30代女性からのご相談です。
30代女性の相談内容
今年7月に退職しました。前職がパートで雇用保険に入っていたため、ただいま失業保険受給前です。基本手当日額3309円で基準以下だったため、夫の扶養に入りながら、失業保険を受給しようと思っています。パートでも働きたいのですが、失業手当は夫の扶養から外れるラインである年収130万円の中に含まれますか?また、パートで働く場合、失業手当の満額分を130万円から引いた残額の範囲に1年間のバイト収入を抑えれば、扶養から外れないと考えて良いのでしょうか。
扶養とは?
配偶者の扶養に入れるか否かは誰しも興味があるところです。まずは扶養に入ることがどういうことかを考えてみましょう。
扶養とは経済的に自立していない親族を経済的に養うことで、扶養に入るということは配偶者や親から経済的な支えを受けていることを言います。一般的に「扶養に入る」という場合、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つを指します。
扶養には「税法上」と「社会保険上」の2種類ある
税法上の扶養
働いて得る所得や事業の所得など、一定の収入があると、所得税と住民税を納めなければなりません。この時、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
よく言われるのは扶養家族の給与年収が103万円以下の場合などに入ることができる扶養のことです。税法上の扶養に入れば所得税や住民税の負担が軽減されます。もし本人の年収が103万円を超えると扶養を外れることになり、規定通りの税金を納める必要があります。
社会保険上の扶養
社会保険は病気やケガをしたときの公的医療保険や、老後の年金に代表される年金保険などの制度を言います。この社会保険の保険料は一定の収入があれば自分で支払う必要がありますが、配偶者の扶養に入れば社会保険に関する保険料を支払う必要がありません。この社会保険上の扶養について、収入の目安の一つが130万円です。
年収130万円の中に失業保険は含まれるのか?
さて、質問にあった「失業手当は年収130万円の中に含まれるのか?」という部分ですが、結論から言うと含まれます。失業手当は、税法上は非課税となるため税金上の扶養判定には影響ありません。ただし社会保険上の扶養を判定するときの収入にはカウントされる仕組みになっています。
また「失業手当の満額分を130万円から引いた残数の中で、1年間のバイト収入を抑えれば扶養から外れないと考えて良いか?」という点については、7月までの収入も含まれるので注意が必要です。「7月までの収入+失業手当の受給分+パート収入」の合計額が130万円よりも小さくならないと扶養を外れてしまいます。
パート先の選択に注意が必要です
ご質問に130万円という金額がありましたが、今後はさらに注意が必要です。これまでは被扶養配偶者の年収が130万円を超えると、国民年金や国民健康保険に加入する必要がありました。また従業員数501名以上のいわゆる大企業では、年収106万円を超えて各種の要件を満たすと、厚生年金や健康保険などの社会保険料を負担していました。
しかし2022年10月からは、社会保険加入が106万円の基準になる企業が拡大されました。従業員数101名以上の企業で勤務し、下記の1~4を満たすと社会保険の加入対象です。さらに2024年10月からは従業員数51名以上の企業に対象が拡大されます。
1. 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
2. 月額賃金が8.8万円以上 (年収で106万円)
3. 2カ月を超える雇用の見込みがある
4. 学生ではない
このように社会保険適用範囲が拡大されているので、配偶者の扶養の範囲で働きたい方は注意が必要です。
まとめ
配偶者の扶養範囲内で働きたいという方にとって、年収の違いは気になるところです。特に社会保険上の扶養から外れると、年金や健康保険などの保険料を自己負担する必要があるため、場合によっては手取りの年収に大きな違いが出てきます。
また2022年10月からは社会保険の加入企業が拡大されていますので、勤務先を選ぶ際に注意することが必要です。社会保険に入れば年金の増加や傷病手当金など、扶養の範囲内よりも保障などが手厚くなりますが、働き方によっては手取り収入が減るということもあります。どのように働くか?をより考える必要がありそうです。