くらし

一生の思い出に残る、陸の孤島「マーファ」の旅・番外編。

ふらっと海外女子旅 下川 マイ子

旅行大好き、トリップラバーのみなさん。2018年はどんな旅行を楽しみましたか? 私の今年一番の思い出は、アメリカのMARFA(マーファ)に行けたことでした! めったに行けない場所だし、小さな街の中にセンスとカルチャーと野暮ったさが絶妙に混じり合って、他にはない、ここだけでしか感じられない独特の空気が流れていたのです。

マーファってどんなところ? なにがあるの? という方は旅行記事のバックナンバーをどうぞ!

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今回は番外編として、実際に肌で感じたマーファのリアルな感想、そして珍道中のハイライトを飾ったハプニングを振り返ります。

野暮ったさとオシャレさのコントラスト

前回がっつり紹介していたように、マーファってめちゃくちゃオシャレなお店が多いんです。街自体は田舎なのに、ぽつぽつと至るところに高感度なショップやギャラリーが潜んでいるから面白い!!!


はい、これはマーファの何気ない街の様子です。


ところが路面店に入ったら、こう!!!


道端にはどえらくサビれた車。道路の舗装もされてない…。


けれど一つ先ストリートには、こんなモダンなデザイナーズホテルが!

ゴーストタウンといったら言い過ぎだけど、それくらい静かでぽつ~んとした雰囲気なのですが、一本入った道添いに素敵スポットがある…! そんな驚きがたくさん転がっているので、街全体を“ディグる”楽しさが他のエリアよりうんと大きい。

小さなギャラリーが発信するクリエイティブな世界

世界中からアートファンやクリエーターが観光に訪れるマーファだけあって、ギャラリーの存在も見逃せません。「Chinati Foundation」」や「PRADA MARFA」は有名だけど、他にも小さなギャラリーが点在し、アーティストや学者によるエキシビションが開かれていました。


ここは一軒家のギャラリー「exhibitions 2d」。メガネをかけた男性が主宰者で、11人のアーティストによる作品の展示を継続的に行っているそう。


描画と彫刻のオブジェが飾られていて、建築デザインにも通じる、線の美しさや構築的世界観を感じました。ミニマムでかっこいい空間。


「BALL ROOM」も必ず寄っておきたい場所。


この巨大なオブジェ、実はプラスチックのいくつものカップを並べて、積み上げることで高低差を表現したもの。マーファを囲う地形を象っているのかな。こんな感じでアート作品だけでなく、土地の歴史をひもといたり、ランドスケープを俯瞰視できる展示物を鑑賞することで、マーファへの思い入れが強まる気がします。


ディスプレーされていた地質&天文探知機をまとう老夫婦。マーファではアートと歴史を探りに訪れるシニア観光客も多く見かけ、私もこんな余生を過ごしたいな~とじんわり感じました。

ファッションモデル現る…!!撮影クルーも御用達のマーファ。


街を歩いていたら、荒野に佇むスペーシーなファッションに身を包んだモデルを発見! どうやらファッション誌か広告の撮影をしていたみたい。モデルの目線の先には撮影クルーがわらわらいて、広告業界に身を置く者(私とカメラマンの友人)としては撮影の裏舞台に興味津々。もっとジロジロ見たかった(笑)。


「STARDUST MOTEL」の看板もマーファの有名な撮影スポット。ここでも何かの撮影が行われていました。
レトロな形と色あせた水色のペンキ、ネオンサインの朽ちた雰囲気が、この街を象徴しているように感じます。ここに昔MOTELがあったのかなぁ。帰国して調べてみたものの、はっきりとした資料が見つからず。でもその手つかずな部分もマーファの良さだなとも感じたのでした。

巨大なはく製に、心臓ゾワゾワ……。

街中には、牧場や工場で成り立つマーファらしい日用品のお店がありました。



このサビれ具合がたまらない。大量生産の工業製品ってミニマムデザインでカッコいいですよね。私も大好きなので、ちらりと覗いてみました。


壁にはデッデーンと鹿のはく製が! あまりの迫力に、ちょっと悪寒さえ……。


オーナーは、いかにもアメリカンなおじちゃん。ね、これがリアルなマーファの姿。


鹿の大きさも見ものですが、こんなはく製も……。今にも動き出しそうで、こわい~!

古めかしいテキサス臭に、惚れる。


メキシコの国境にほど近いテキサス州にあるので、民家の佇まいもどこか開放的で、埃っぽい感じがむしろかっこいい。


昔の映画に出てきそうな年代物のビンテージカー。車好き垂涎(すいぜん)の光景。


宿泊したトレーラーハウスのベッドリネンもメキシカンカラーがポイントになってました。


テキサスらしいカウボーイのイラストもあちらこちらに。これを見たあとに、前述のはく製を振り返ると「なるほどな」と感じますよね。


こんな煉瓦造りの建物も多かったな。平屋が多く広大な土地だからか、空が近く感じられて、もくもくした雲も手が届きそうな(わけないけど)気分! 夜空もプラネタリウム並みの星の大きさで本当に感動。

最後は、衝撃ハプニングで〆!

2泊3日のマーファ旅行の大トリを飾る出来事が勃発。
空港に向かう前にスーパーに立ち寄ったら、店内の照明がぷつんと消え、真っ暗に……!


「え?」と友人と顔を見合わせながら窓際のレジに向かうと、どうやら停電したみたい。こんなこともあるんだね~と言いながら、復旧を待ってはみたものの、なかなか復活しません。


まだ夕方前だったので外は明るく、みんなものんびりとしていて、あまり慌てている感じでもない。「じゃあもう私たちは空港最寄りのエル・パソに向かおっか」と車に乗り込み、ガソリンを補充してマーファを発とうとスタンドに寄ったら……。


ここも停電!!!!
まさかの街全体が停電していたのです。もちろんガソリンを入れることもできません。オマガ~!!!

しばらく待ってみたり、復旧の目処を尋ねてみたけど、みんなも「どうだろうね?(両腕をWの字にする仕草)」とまったくわからないよう様子。いきなり旅の最後にピンチ到来、無になる私たち。

マーファからエル・パソまで車で3時間。ここは砂漠の真ん中で、途中にガソリンスタンドなんて一軒もない。車のガソリンの残量は4割程度。停電の復旧は最悪明日になるかも?(ムリムリ、飛行機に乗れなくなるし)
え~、やばいけど、もうとりあえず行くしかない(涙)。暗くなる前の明るいうちに行こうと、とりあえず出発。無駄なブレーキもアクセルも踏まず、エコ運転を心がけ、ヒヤヒヤしながらエル・パソへ。ガソリンの残量メモリが消えるたびに震えあがり、西日が暑かったけどエアコンをOFF、オーディオもOFF(汗)! 


こ~んな荒野で、車も人もほとんど通らない道で停まったら……ガクブル。不安に追い討ちをかけるように、ガソリンスタンドまであと30分のところで、給油ランプが点灯。「ひぃやぁぁぁ~~~~~!!!」。

手に汗を握る思いをここでするとは。“どこにでもあると思うな、ガソリンスタンド”。みなさん、マーファへ行ったらこまめなガソリン補充を心がけましょう。そんなこんなで、邦人女性2人が乗った小型車が、大型貨物トラックに挟まれながらひょろろろ~っとガソリンスタンドへ無事ピットインできたのは奇跡だと思います。そんな珍事を思い出しながら、このマーファ記事を〆ようと思います。


ちなみに、ピンチの序盤に「どうしても!」と途中で車を停めて、アート作品「PRADA MARFA」に寄った私たち。停まることで無駄なブレーキとアクセルを踏むわけですよ。自撮りしてる場合じゃないし! この後、冷や汗が止まらない思いをするとは、このときは思ってもいなかったなぁ……(笑)。

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