【FP直伝!】今さら聞けない「厚生年金」の手厚い保障とは?
ズバリ聞きます!皆さんは「公的年金」に詳しいですか?
「老後の年金は何歳からもらえるか知ってますか?」
「自営業者と会社員で支給額が違うってご存知ですか?」
「老後の年金以外にも年金がもらえることを知っていますか?」
最近、若い人と話していると、公的年金は60歳からもらえるとか、老後の年金以外に公的年金をもらうことはできないなどの認識の人がたまにいて驚きます。そこで今回は、国民年金と厚生年金の違いについて、さらに公的年金はどのようなときに受け取ることができるのか、というテーマで解説していきます。
今さら聞けないという方は、よく読んでください。生命保険や損害保険の保険料削減につながり、家計を見直すきっかけになるかもしれません。
1. 公的年金について
まずはじめにとても基本的なことですが、日本の公的年金は2階建てといわれていて、1階部分はすべての国民が加入する「基礎年金(国民年金)」、2階部分は会社員や公務員が加入する「厚生年金」という給付制度になっています。
また、もらえる年金の種類は3種類あり、老後の生活資金として支給される「老齢年金」、万が一死亡したとき遺族に支給される「遺族年金」、ケガや病気で障害を負ったときに支給される「障害年金」です。
公的年金はこれら3つのリスクから国民を守ってくれているのです。この3種類の年金は、各々2階建てとなっており、老齢年金には「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」、遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」、障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」から構成されています。
このように公的年金制度は、老後の年金だけの制度ではありません。また年金を積み立てるイメージではなく、世代間扶養(世代間の助け合い)で成り立っているのです。
2. 老後にもらえる年金「老齢年金」
一定の年齢(62~65歳)から支給される年金です。国民年金の部分を「老齢基礎年金」といい、厚生年金の部分を「老齢厚生年金」といいます。
「老齢基礎年金」は、20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた場合、65歳から月額6万4,941円(年額77万9,300円)が支給されます。(※) 保険料を納めた期間が40年に満たない場合は、納めていない期間分は減額されることになります。
(※)平成29年度の年金額
会社員や公務員はこの老齢基礎年金に加え、「老齢厚生年金」が支給されます。
支給開始年齢は、老齢基礎年金と違いまだ段階的に引き上げられている途中で、生年月日によって62歳から65歳となります。支給額の計算は少し複雑ですが、厚生労働省が今年発表した標準的なモデル夫婦の場合、月額22万1,277円(年額265万5,324円)となっています。(※)
(※)「平成29年度年金額改定について」厚生労働省平成29年1月発表、夫の平均的収入(平均標準報酬42.8万円)で40年間就業し、妻はすべての期間専業主婦の場合で試算。
上記のように国民年金と厚生年金を夫婦で受け取った場合を比較すると、年間約100万円の差が生じています。厚生年金の方が手厚いことがよく分かりますね。
ご自身の将来の老齢年金額が知りたいときは、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」をご確認ください。ただし50歳未満と50歳以上の方では、表示されている年金額の計算方法が違うのでご注意ください。より詳しい年金額が知りたいという方は、お近くの年金事務所までどうぞ。
3. 万一のとき遺族がもらえる年金「遺族年金」
被保険者が死亡した場合、被保険者によって生計を維持されていた「子のある配偶者」や「子」に支給される年金がこの遺族年金です。国民年金の部分を「遺族基礎年金」といい、厚生年金の部分を「遺族厚生年金」といいます。
ここでポイントとなるのは、子どもの年齢です。老齢基礎年金は子どものいない配偶者には支給されません。子どもとは次のように定義されています。(1)18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、もしくは(2)20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子。
支給額は、老齢基礎年金同様年額77万9,300円です。これに加え(第1子、第2子各22万4,300円、第3子以降各7万4,800円)の子どもの加算があります。
国民年金しか加入できない自営業者の遺族年金は以上の年金だけですが、会社員や公務員が加入している厚生年金はこれにプラスして「遺族厚生年金」が支給されます。また遺族厚生年金は、子どものいない配偶者でも支給されるので、手厚いといえますね。
平成27年度に支給された遺族厚生年金の平均年金額は、月額8万5,200円(年額102万2,400円)となっています。(※)
(※)「平成27年度厚生年金保険国民年金事業の概況」厚生労働省平成29年3月
年間約100万円も多く受給できるので、会社員や公務員が加入する厚生年金の方が手厚い保障だということがよく分かります。
4. 障害を負ったときもらえる年金「障害年金」
ケガや病気で一定以上の障害が残った場合に支給される年金です。国民年金の部分を「障害基礎年金」といい、厚生年金の部分を「障害厚生年金」といいます。
障害状態により1級から2級(障害厚生年金の場合は3級まであります)の認定があり、それぞれ年金の支給額が異なります。さらに子どもや配偶者がいる場合、年金額が加算されます。
ここで皆さんが気になるのは、いくら支給されるかよりも、どういう状態が障害状態を指すのかということではないでしょうか。2つほど事例を出して説明します。
≪事例1≫自営業Jさんの場合(子1人)
Jさんは交通事故で左足を切断、障害2級の認定を受けました。障害2級の障害基礎年金額は、77万9,300円です。18歳未満の子どもがいる場合は、さらに22万4,300円の加算があるので、Jさんの障害基礎年金は100万3,600円が支給されます。
≪事例2≫会社員Sさんの場合(妻、子3人)
Sさんは階段から転落し脊髄を損傷、車椅子の生活を余儀なくされ、障害1級の認定を受けました。障害1級の障害基礎年金額は、97万4,125円です。18歳未満の子どもが3人いる場合は、さらに52万3,400円の加算があるので、障害基礎年金額は、1499万7,525円が支給されます。
会社員の場合これに加え、障害厚生年金(報酬比例部分)から61万6,612円(平均給料30万円の場合)が支給されます。65歳未満の配偶者がいる場合は、さらに22万4,300円の加算があるので、障害厚生年金84万0,912円が支給されます。
よって会社員のSさんは、233万8,437円の障害年金が支給されますので、ここでもやはり厚生年金の方が手厚いことが分かります。
5.まとめ
今までみてきたように、厚生年金は国民年金のプラスアルファとなるので、会社員や公務員は手厚い保障を受けることができます。逆に自営業の人たちは、保障が少ないということになります。
この公的保障をよく理解しておくことで、民間の生命保険や損害保険の過度な加入という事態を防ぐことができるので、家計の節約にもつながります。
これからは漠然と大きな遺族保障や介護保障に加入するのではなく、公的年金のことをよく理解した上で民間の保険を考えるようにしましょう。
遺族年金を把握しているだけでも生命保険の掛け過ぎをなくすことができるので、今まで遺族年金を計算せず生命保険に加入していたという人は、すぐにでも見直してみてください。
逆に自営業の人たちは、この公的年金では少し保障が足りないと思います。世帯主の死亡やケガや病気のリスク、元気で長生きしたときの老後ことなどを総合的に考えて、今後の保険加入や貯蓄計画を検討してください。
いずれにしても公的年金を理解しているかしていないかで、将来の資産形成に必ず差が出てきます。