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そもそもお金って何なの?~電子マネーと仮想通貨と銀行預金の違い~

松田 学のみらいのお金と経済 松田 学

そもそもお金って何なの?~電子マネーと仮想通貨と銀行預金の違い~

目次

 10月1日に消費税率が8%から10%に引き上げられたのと同時に「ポイント還元」が始まりました。現金で買い物をしても、これでおトクになることはありません。クレジットカードや電子マネーなど、「キャッシュレス決済」への関心が急速に高まっています。
私、松田 学は、お金を扱う役所である財務省に長年勤めたあと、衆議院議員として国政に参画し、その後、東京大学で情報技術に関する政策の研究をしていました。こうした経験も活かしながら、現在は「未来社会プロデューサー」を名乗り、ブロックチェーンなども含めた最先端技術を活用して次の社会を切り拓く活動をしています。
これに関するいくつかの著作もありますが、2019年春に出版した「いま知っておきたい『みらいのお金』の話」(アスコム)では、いまはビットコインで知られる仮想通貨(暗号資産)が、技術革新でより信頼できるお金へと進化していくことで、ひとり一人が希望を持てる世の中が実現することを訴えています。
今回から、この「みらいのお金と経済」で、お金に関する話題をわかりやすくお話ししていきたいと思います。

そもそもキャッシュレスとは?

10月から始まったキャッシュレスポイント還元とは


 2019年10月からの9か月の間ですが、お買い物をするときに何を買うか、どのお店で買うかによって、消費税率は事実上、10%、8%、6%、5%、3%と5段階に分かれます。ずいぶんと複雑にみえますが、政府が今回の増税で国民負担の増加をできるだけ回避し、景気に悪影響を与えないよう、消費者に対していろいろな配慮をした結果、こうなりました。
一つは食料品などに対する軽減税率。その多くが8%に据え置かれます。これは今後も継続しますが、もう一つが、来年6月末までの時限措置として導入されたポイント還元です。ポイント還元制度とは、消費増税を機に政府がキャッシュレス化を推進するために導入したもので、財源は政府が負担しています。
中小の店舗で、クレカ(クレジットカード)や電子マネーなどキャッシュレス決済で支払いをすると、原則として購入額の5%分がポイントで還元されます。コンビニや外食チェーン、ガソリンスタンドなどの大手チェーンのフランチャイズ店舗の場合は、購入額の2%分です。ポイントの付与ではなく、値引きで対応している店舗もあります。
ですから、軽減税率8%の対象となる食品を、5%分ポイント還元されるお店で買えば、消費税の負担は8-5=3%と、2014年以前の負担に戻ることになります。2%還元のお店で食品を買えば6%、ポイント還元ができる店舗以外で買えば、軽減税率の適用だけになりますから8%、食品以外の10%の消費税がかかるモノやサービスを5%還元、2%還元のお店で購入すれば、それぞれ5%と8%…つまり、税率は5つということになります。

政府がキャッシュレスを推進する理由


このポイント還元の恩典を受けるために必要なのがキャッシュレス決済。「どうも、アナログ世代には苦手、やっぱり現金が安心で便利」とおっしゃる方々も多数いらっしゃいますが、先日、私のご高齢の知人が、「PayPay(ペイペイ)のアプリを入れました、とても便利です」と言いながら、スマホでレストランの支払を嬉しそうに済ませていました。慣れれば簡単…。
かつてはキャッシュレスといえばクレカでしたが、最近では、スマホ決済ではPayPayのほかにもLINEPay(ラインペイ)などもありますし、カード型も楽天Edyやsuicaなど、さまざまな「電子マネー」が使われるようになっています。クレカと一体型の電子マネーもあります。
 現金の場合、どこでも誰にでも渡せるメリットはありますが、多いとかさばりますし、紛失や盗難や破損の危険に対しては物理的にしか守る方法がありません。これに対し、電子マネーは、対応している店舗(相手)にしか渡せませんが、スマホやカードを持つだけで、支払いはおつりなどの面倒もなくて簡単、機械が自動的に計算し、記録してくれます。保管はパスワードで守られ、スマホが壊れてもお金は残るなど、さまざまなメリットがあります。
 しかし、クレカと電子マネーを合わせたキャッシュレス決済が家計の消費額に占める比率をみると、日本は2016年時点でたった19.8%。「たった」と言うのは、世界的にみれば、同年の韓国の96.4%を筆頭に、イギリスは68.7%、アメリカは46%、中国も概ね60%程度…と、日本はキャッシュレス後進国?というのが実態だからです。
特に来年は東京五輪の年。外国人にとってお金の支払いで必ずしも便利でないのが日本です。これをもっと便利にしておくことも「おもてなし」の上で望まれます。

キャッシュレスが浸透しない日本独自の事情


 では、こんなに便利なキャッシュレスの比率が日本でこんなに低いのはなぜなのでしょうか。やや逆説的になりますが、日本がとても便利な国だからです。日本国内どこに行っても、たいていは銀行の支店やコンビニなどのATMがあります。ドル札や人民元などに比べても、日本の紙幣の印刷や貨幣の鋳造技術も世界最高水準。ニセ札の危険も少なく、日本は世界一、現金に対する国民の信頼が厚い国といえるかもしれません。
 しかし、これはこれまでの社会の仕組みや技術を前提とした利便性であり信頼感だといえます。世の中が大きく変化するときは、金融や通貨をはじめ、さまざまな社会インフラの信頼性や安定性が高いことが、逆に、変化への対応を遅らせる原因にもなります。
中国で電子マネーが急速に普及したり、通信手段が未整備な途上国の人々にスマホや携帯電話が行き渡ったり、預金口座を持たない人が多い国で仮想通貨の普及が予想されているように、新しいサービスが先進国の歩みを飛び越えて一気に広まることを「リープフロッグ(蛙飛び)現象」と言います。
 特にIT分野で後れをとったと言われる日本では、社会の隅々まで電子化を図ることは国家的な課題です。ATMや現金の管理には、社会全体で大きなコストがかかっています。

電子マネー・仮想通貨・銀行預金(キャッシュ)は何が違う


さて、お金といえば、ビットコインの価格が急騰したり急落したり、コインチェック事件で大量の流失事件が起きたりと、何かと人々の関心を集めているのが「仮想通貨」です。

仮想通貨とは?電子マネーとの違い


 一般に、お金、つまり「通貨」とは、次の3つの条件をすべて満たしている支払い手段だとされています。第一に、決済に使われること、第二に、価値を保蔵するものであること、第三に、価値を量る尺度であることです。
価格が大きく変動する仮想通貨は、特に、第三の条件を満たさないことから「通貨」ではなく、資産であるとして、最近、G20のような国際的な場でも、また、日本の所管官庁である金融庁も、「暗号資産」を正式な呼び方とすることを決めました。
いずれにしても、仮想通貨とは、暗号技術を使った電子的な支払い手段としてインターネットで送付が可能な経済的価値のことです。「暗号通貨」という言い方もあります。
電子的な支払い手段という意味では、電子マネーなどと似ているようですが、電子マネーもクレカも、現金でチャージしたり、決済が銀行の預金口座からなされるなど、日本円という「法定通貨」と結びついています。これに対し、仮想通貨は、例えばビットコインがそうであるように、法定通貨とは結びついておらず、円やドルといった単位とは異なる独自の単位で計算されている点が大きく異なります(ビットコインの場合、単位はBTC)。

仮想通貨と銀行預金との違い


法定通貨とは、国が法律で支払いや決済の手段として定めているお金で、現金と、銀行預金である預金通貨を指します。定義にもよりますが、ざっくり言えば、日本の現金残高は100兆円あまり、そのまま送金や支払いなどに使える狭義の預金通貨(普通預金など)は700兆円程度。これに比べ、仮想通貨は数十兆円と、量的にはまだ極めて少ない状況です。キャッシュレスと言うときの「キャッシュ」とは、これら法定通貨のことを意味します。
預金通貨の場合、銀行預金からの海外送金には時間と高い手数料がかかりますが、仮想通貨ですと、24時間いつでも、国境を超えた瞬時の送金が、しかも、どれだけ少ない金額でも可能だといった利便性が着目されてきました。最近では日本国内でも、電子マネーと同じように、仮想通貨で支払える店舗などが増えています。ただ、一般的な支払い手段としてはまだ十分に普及しておらず、これまでのところ、価格の上昇を期待しての投資の対象として買われてきた面が大きいといえます。銀行預金の場合は預金者保護の仕組みがありますが、仮想通貨の価値が大きく下がっても、自己責任で、保護の仕組みはありません。

「お金」って何?


「お金」は実は2種類ある


 では、この仮想通貨、これからお金として広く使われるようになるのでしょうか?
そもそもお金には貨幣方式と台帳方式の2種類があります。このうち、電子的な台帳方式となっている仮想通貨には、ハッカーによるサイバー攻撃で流失しないための「安全性」、人々がスマホからすぐに支払えるなどの「利便性」、マネーロンダリングの手段とならないための「信頼性」、そして、通貨として必要な「信用」といった、大きく言って4つの課題があります。これらの課題は、急速な技術進歩により日々、克服されていく流れにあります。
現在のところ、世界で何千種類もある仮想通貨のほとんどがブロックチェーンという暗号技術を基盤にしています。そこでは、参加者が改ざん不可能な電子的な台帳を共有し、独自の単位で測られる経済的価値の取引を記帳して、みんなでその正しさを確認し合うことで取引が確定していきます。そこには銀行のような中央管理者が存在せず、参加者どうしが直接、P2P(peer-to-peer)でやり取りする「分散型」という仕組みになっています。

「お金」の歴史


前述のお金の2つの種類のうち、貨幣方式は経済的価値の存在や移転を、硬貨や紙幣などの物理的なモノを使って行う方式です。それを台帳への記帳で行う方式が台帳方式です。
実は、台帳方式のほうが歴史が古いと言われています。現在の台帳方式の典型が、法定通貨である預金通貨ですが、電子的に記帳する台帳方式である点で、仮想通貨と変わりありません。
両者の違いは、預金通貨が銀行やその背後にある国家などの中央管理者の信用で成り立っているのに対し、中央管理者がいなくても成立する仮想通貨は、もっぱら技術への信頼だけでも成り立つお金であるという点にあります。
そして、こうした分散型の仕組みが、何事も中央集権的な仕組みで営まれてきたこれまでの人類社会を、分散型社会へと大きく転換していくものと予想されています。
これらは大変深い話になりますので、詳しくは別の回に論じてみたいと思います。

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