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「お金を増やしたい」なら知っておくべきこと

泉 正人先生のお金アカデミー 泉 正人

「お金を増やしたい」なら知っておくべきこと

「貯金ができない!」「お金に弱い!」という人、大歓迎の、泉先生のお金アカデミー。

ここでは毎回、お金のプロ・泉正人先生が、社会に出て約5年になる20代のAくん、Bさんに、お金のことをもっと身近に、楽しく考えてもらえるようなレクチャーを行っています。お金について知ることができた人には、今よりももっと自由な日々が待っている!
みんなで一緒に「人生の貯金額」、どんどん増やしちゃいましょう!

「貯金」と「年金」だけで老後はダイジョウブ?

新型コロナウイルスの件があって改めて考えたのだけど、これからの時代、給与収入と銀行預金だけに頼りきりって、すごく不安よね。

僕もそう思った。大学時代の友達は早速株を始めたって。他に、1発当てる!って、競艇に行ったやつもいるよ。競艇は確かに公営競技だけど、なんだかなぁ…。

私の友人は、「このままじゃ子供も安心して産めない!」って、外資系金融マンと結婚する!って言い出したよ(笑)。お給料も良くて、確かに安心かもしれないけれど、お金のことばかり考えてそうな人って大丈夫かなとも思っちゃう。

おっと。ふたりの会話を聞いていると、まだ世間一般的には、資産運用や投資は、善というよりもむしろ悪と捉えられがちなのかな? 確かに、一部のマネーゲームに走っている人を見ると顔をしかめたくなるかもしれないけれど、僕は、資産運用や投資というのは、そんな暗いイメージのものではなく、僕たちの将来をより豊かにするためのひとつの手段だと思っているよ。

でも先生、資産運用とか投資って、それで損することもあるわけでしょ?やっぱりちょっと怖いですよ。自分には一生関係ないことかも…。

確かにリスクがあって怖いという気持ちはよくわかる。でもこれからの時代、貯蓄しているだけのほうがハイリスクかもしれないんだよ。

えっ、そうなんですか?

その理由としてあげられるのが、経済が右肩上がりであった時代は終わったということ。高度経済成長期には、労働による収入が毎年どんどん増えていって、資産運用など考えずとも仕事による収入アップが当たり前だった。銀行の金利も高かったから、貯蓄しているだけで十分だったんだ。でも、今はどうかな?

収入アップどころか、減ったという話もよく聞きます。

普通預金の金利もほぼゼロだったりするし…。

ほかにも会社が事業規模を縮小してリストラの憂き目に遭ったり、病気を患ったり、メンタルが参ってしまったり、あるいは親の介護をしなくてはいけなくなる可能性も否定できないよね。

医療の発展で90歳、100歳まで生きるのが当たり前になりつつあるのに、65歳の退職から40年間もずっと貯金と年金だけで暮らしていかなくちゃいけないなんて、考えただけで身震いしちゃう。

そう考えると、収入源を会社からの収入だけに絞るというのは、命綱1本で崖に吊るされているようなもの。それってやっぱりリスキーだよなぁ。

とすると命綱は2本、3本とあった方がリスクは減ると考えられるよね。どんなに優秀なビジネスパーソンでも、「明日何が起こるのかわからない」のが現代。常にリスクを意識して生活することが大切なんだ。それに「経済的自立」は、将来の選択肢を増やすことも可能にしてくれる。

そのために、資産運用が欠かせないということなんですね!

資産運用の基本的な考え方を勉強しよう

では、資産運用って、どういうものかわかるかな?

え~っと、株とか?  あと儲かったり、大損したり、詐欺にあったり…。そんなイメージです。

Aくんには資産運用が、ちょっとネガティブなものに映っていそうだね(笑)。資産運用の基本的な考え方は、自分が保有しているお金を運用して、世界中のどこかにいるお金を必要としている人に投資し、その見返りとして配当を受け取る、ということだよ。

でもリスクがある、という話をよく聞くんです…。

そうだね。もちろんリスクはゼロではない。でも資産運用において指摘されるリスクとは、多くの場合、お金の運用をするスキルを持っていない人にあてはまるものなんだ。つまり、投資自体がリスクと同義ではないということ。

スキルを持っていないから、リスクを負ってしまうということですか?

クスリを例に考えてみようか。クスリは、きちんとした知識を持った医者が使用する(処方する)場合には素晴らしい効果をもたらしてくれる。一方、なんの知識もないまま過量に使用したりすると、生命の危険性すらある。つまり、リスクと表裏一体だけれども、正しい使い方をすれば、病気から快復したり、生命の危機から抜けだしたり、精神を安定させたりできるものであるということだよ。

なるほど!すごくわかりやすいです。

資産運用のスキルを身につけるには、「経済と投資の知識」が必要だということ。まずはこの後に説明する基礎知識をしっかりと頭に入れておこう。また自分で実際に投資をすることは、その成果にかかわらず、経済のことや世の中の流れを勉強することにもつながるんだ。その経験は間違いなく、仕事にも活きてくると思うよ。

「身銭を切る」と、真剣度が増しますもんね。

そう。そして真剣であればあるほど身につきやすいよね。短期的には損をすることがあるかもしれないけど、中長期的な観点から見れば、社会人としての成長によるメリットがあると思う。

資産運用、やってみたくなってきました! そういえばこの前、「○○で1億円儲ける」とか、「お金持ちになるための7つの法則」っていう気になるタイトルの本を見つけたんですよ。それを読んだら僕もすぐ儲けられるかなぁ…。

ちょっと待った! キャッチーなタイトルの本に触発されて、「私も儲けよう!」と何の知識もないまま投資を始めるのは、泳ぎ方を知らないまま海に飛び込むようなもの。すぐに溺れてしまう可能性がかぎりなく高くなるよ。

ええっ!

投資の世界は、ある意味プロ同士の戦いの場。運用会社などの投資の専門家が、日々研究しながら投資に挑んでいるんだ。投資のプロとして一人前になるには、5~10年の勉強期間が必要だといわれているし、一人前になった後も、彼らは絶え間なく努力を続けているんだよ。

その中に、何の知識も身につけていない素人がいきなり入っていっても勝てるはずないですよね。

そう。まずは泳ぎ方を身につけ、体力をつけておく。さらには、潮の流れや天候の影響など海の特徴をよく知り、状況が急変したときの対処法までも身につけて、初めて安全に泳ぐことができるようになるんだ。

準備体操もしっかりしておかないと、ですね。

そうだね。正しい知識を身につけて資産運用をしている人の多くはしっかりとしたリターンを得ているものの、誤った知識で運用している人の多くは損をしているという話もあるぐらいだよ。つまり、「学んでいない人」から「学んでいる人」へお金が流れているとも言えるんだ。

それ、すごく悲しいです…。

投資では、「儲かる可能性が高いもの」ほど「失敗の確率も高くなる」というハイリスク・ハイリターンの考え方が浸透しているけれど、そのリスクは投資の知識やスキルを身につけることで小さくしていくことができる。仕事でもこんなことはないかな? 約束の時間に遅れて、「電車の遅延で遅れた」と言い訳をすること。でもその前に、10分前行動を心がけていただろうか。遅れるリスクを軽減する方法は、いくらでもあるはずなんだ。

うわ~、耳が痛い!

Aくん、ついさっき、その言い訳使ってたもんね(笑)! ファイト~!

大きな「お金の流れ」を理解しよう

さて、資産運用を始める前に、お金の世界には5つの島があることを知っておこう。

5つの島、ですか?

そう。人から人へ、人から会社へ、会社から人へ、会社から会社へ、国から国へ、お金は世界中を駆け巡っている。そしてその世界には、「株」「債券」「不動産」「商品」「為替」という5つの島(市場)が浮かんでいるんだ。

「株」「債券」「不動産」「商品」「為替」の島。

ここで、「株」「債券」「不動産」「商品」の島は、国や経済圏という城壁に囲まれており、他の国・経済圏の中にある島と行き来するには、「為替」という関所となる島を経由しなければならないことも覚えておこう。

5つの島はそれぞれ環境が異なり、天気が悪くなったり、好天が続いたりする。悪天候が続く島からは、別の島に移り住もうと多くのお金が逃げていく。すると、お金に逃げられた島は景気が悪くなり、島の価値が低下する。反対に、天候に恵まれている島にはお金がたくさん集まってきて景気が良くなる。つまり、知識や経験、お金の教養を使って天気を予測することで、人よりも先んじて景気の良い島に行くことができる。

景気が良くなってしばらく経った島に行っても、すでにライバルがたくさん集結してそうですもんね。

そう。そして個別の金融商品ばかり追うのではなく、全体の流れを見ることも大事。メリット・デメリットの両面から5つの島を理解し、さらに経済や景気状況を見ながら、どの島が好天か予想することが大切だよ。

ここで、5つの島の特徴について説明しよう。

【株の島の特徴】

 株は、会社に投資する商品。カンタンにいえば、会社が発行している株券を買うことで、その会社の所有者のひとりとなるのが株式投資だ。当然利益が出たら相応の配当をもらえるようになっているし、もしその会社が成長して、株券の価値自体が上がったとしたら、手元の株による資産額も増える。

 間違ってはいけないのは、株は投資であって融資ではないこと。したがって、株に投資したお金の保証(元本保証)はないんだ。また「投資信託(ファンド)」は、いろいろな株を複数人で買う仕組みのこと。運用は専門家が行うので、こちらは比較的リスクが小さいといえるかな。

 株の島は天気の移り変わりが激しいことも特徴だよ。

【債券の島の特徴】

 債券とは、お金を貸して金利を得る商品。代表的なものに、国が発行する「国債」がある。株とは違って基本的には元本保証があるので、5つの島すべて(世界経済)の天候が悪いときには、債券にお金が流れてくる傾向があるよ。債券には「国債」の他に、企業が発行する「社債」や、外国の企業が発行する「外国債券」などもあるんだ。

【不動産の島の特徴】

 不動産とは、土地と建物を扱う商品。不動産で資産運用する場合には、土地や建物を買って、値上がりしたタイミングで売る方法と、持っている土地や建物を他人に貸して家賃収入を得る方法の2種類がある。

安く買って高く売るという方法は、莫大な利益をもたらすことがある一方で、日本における土地の価格は停滞傾向にあるし、家賃収入のほうも、日本全体の人口が減少期に入ったことで一筋縄ではいかなくなってきた。

 この不動産の島は、慢性的な曇天模様といったところかな。でもだからこそ、ライバルが少なくなってくるという見方もできる。

【商品の島の特徴】

 商品とは金、プラチナ、鉄、銅といった金属や、コーヒーやとうもろこしなどの農作物、石油や石炭、ゴムといった原材料などを売買する商品取引を指す。

 多くの場合、「先物取引」といって、需要と供給のバランスなどから商品の価格を予想した取引が行われるよ。

ガソリンをイメージするとわかりやすいかもしれない。ガソリンの原料である原油価格が下がっても、ガソリンスタンドでの販売価格はすぐには下がらないよね。それは、先物取引で取引されているからなんだ。

 商品の島は、予測不能な自然災害などにも多大な影響を受けるので、天候の移り変わりは株以上に激しく、さらに自己資金の数十倍もの運用(レバレッジ)が可能なため、高いリスクが伴う。ただし、だからこそ知識を身につけ、上手に活用すればとても有利な運用手段にもなるんだ。

【為替の島の特徴】

 為替とは、他国の島の商品を買うために必要なもの。日本のお金を他国のお金に両替することで、はじめて海外と取引が可能となる。

 お金の交換比は刻一刻と変化していて、円に人気が集まれば円高になり、円なんていらないよという人が増えれば円安となる。この変動を利用して利益を出そうとするのが為替取引。「外貨預金」、「FX(外国為替証拠金取引)」など、為替取引自体を目的とした商品がたくさんあって、日本の円などの低い金利の通貨で高い金利の通貨を買って、金利差の分の利息を得るという方法もあるよ。

以上5つ。さて、どの島に 興味が持てたかな?

う~ん、どの島にもメリット・デメリットがありそうで悩みます…。

そうだね。先ほども述べたように、天候が良いところ、あるいはこれから天候が良くなってきそうなところを予測して投資するのがベストだけど、いつも天候が予測できるかというと、そんなことはない。そこで重要になってくるのが自身の状態なんだ。自分の状態によって、どんな資産運用・投資をすればいいのかを判断する。その詳しい方法は、次で説明していこう。

あ~、やみくもに勉強しなくて良かった…。

時間の足りない社会人は、勉強の質にも気を配ることも大切だからね。また資産運用をする・しないに関係なく、常に経済に触れるように心がけるべき。現在の経済や景気、今後の未来予想図を頭に入れておこう。

分散投資と集中投資の選び方

さて、いよいよ自分に合った資産運用や投資のやり方について教えていこう。これは4つのステップで経験を積み、身をもって覚えていくべきだと考えているよ。

最初のステップ、ステージはどんなものですか。

ステップ①は、「自分への投資を行うステージ」。この段階にいる人は、「お金の教養」についてまだ未熟。だから新聞や経済誌、ビジネス書を読み、セミナーや勉強会に参加するなどの自己投資を最優先させて、「お金の教養」を身につけよう。

僕たちは今、ステップ①だね。

もしここで教養を身につけられたら、次はどんなステップに進めるんですか?

ステップ②は「得意分野を見つけるステージ」。得意分野を見つける方法は2つあって、まずは、「仕事柄、世界経済に詳しい」など、ビジネス分野で関わりのあるものや、自分が好きだ・興味関心があると感じているものと照らし合わせること。そしてもう1つは、実際に運用してみること。

もう運用ですか!?

まだ得意分野を見定めている段階なので、この場合は最低限の額で構わないよ。投資信託であれば1万円の商品、為替取引であれば10万円で十分。実際の運用を肌で感じてみよう。

なんだかドキドキしてきた!

得意分野がわかったら、次はステップ③「得意なところに集中投資するステージ」に入るよ。「はじめはリスクの少ないところで運用しよう」という意見もあるけれど、それだといつまで経っても“実践力”が身につかないよね。分野を狭めることで専門知識や判断力は一気に増していく。誰にも負けない分野をつくって集中投資することで、リスクを小さくするんだ。

投資家らしくなってきたなぁ。

集中投資によってある程度の資産を築くことができたら、ステップ④「資産を分散させるステージ」へ進もう。資産が増えてくると、今度は反対に集中投資によるリスクが高まってくる。専門知識をいくら携えても、誰も予想できないようなことが起きるからね。なので、得意な分野への投資を半分にし、残りの半分を次の投資に充てるようにしよう。ここでやるべきは、次の得意分野を見つけ出すこと。

そこからは、最初の集中投資と同じ手順を踏んで、徐々に「分散投資」へと移行していこう。

「集中投資」と「分散投資」のメリット・デメリットを理解しながら進むことが大切なんですね。

「集中」と「分散」のタイミングを見極めることも大事なんだなぁ。

仕事でも、「どのタイミングで何をするか」という行動計画を事前に立てて、いかに効率よくできるかという視点は大切だよね。また、広く学んで自分の得意分野を見つけていくことも…。どうだろう。資産運用にポジティブなイメージを持てるようになったかな?

はい、すごく!

私も!早速、動きはじめなくちゃ。

まとめ

「お金を増やしたい」なら、資産運用の基礎を学び、世の中の大きな「お金の流れ」を理解しながら、自分に合った投資方法を身につけていくことが大切です。仕事をする上でも同じ。様々なことを広く学んで、その中から自分の得意分野を見つけていこう。

次回は、「誰も教えてくれない『資産』のこと」について勉強します。お楽しみに!