あなたの100円は世界とつながっている -エシカルな消費と投資-
目次
あなたが何の気なしに買う100円のチョコレート お金は世界をめぐっている
あなたがコンビニエンスストアでチョコレートを一枚買ったとします。100円の価格に10円の消費税をつけて、電子マネーで決済をします。よくある日常のシーンです。
しかし、その100円がどう配分されているのかどうか、考えてみたことはあるでしょうか。たった100円であっても、
・コンビニエンスストアの売り上げ
・配送業者の売り上げ
・チョコレート会社の売り上げ
・材料を日本に配送してきた船会社の売り上げ
・カカオ農園の売り上げ
のようにいろんな会社が関係してきます。たった百円も1円ずつあるいは数銭ずつの形でいろんな関係者が配分しています。
そしてそれぞれに働く人たちの収入源にもなっています。コンビニのアルバイト、配送業者のトラック運転手、チョコレート会社の社員や工場で働く人たち、船員さんや外国の農園で働く人たちまで、あなたの100円の分配でお金を稼いでいるのです。
ほとんどの商品は世界中とつながっています。先ほどのチョコレートのように農産物の多くは世界中から日本にやってきます。スーパーマーケットで原産地表示をみるとブラジルから届いたことに気がついたりします。
工業製品もオーストラリアでボーキサイトが採掘されたり、中国やベトナムの工場で作られていたりします。
何の気なしに買って、すぐ食べてしまうチョコレートも、こうした「お金のつながり」を考えてみると、私たちが使うお金が誰かを支える役割も担っているということが分かります。
一方で、低賃金での児童労働を行う農場、環境負荷のきつい農薬を用いている農場もあったりします。できればそんな農場からはチョコレートを買いたくない、と思う人もいるかもしれません。
お金のいろんなつながりに思いを巡らせると、"ライフプラン3.0時代のお金の使い方"が見えてきます。
あなたの積立投資した数千円も、世界を動かす原動力
iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを通じて、資産形成に挑む人も増えています。100円程度の少額から積立投資を受け入れる金融機関もあるほどです。
あなたがもし、1万円を国内外の株式に投資する投資信託で保有したとします。その投資信託がどんな企業に投資をしているか考えたことはあるでしょうか。とある投資信託は世界中の企業に投資をしていますが4000社以上を対象としていました。
こうした株式を用いて投資をするということは、中長期的な世界中の経済成長があなたの資産価値の上昇になる、ということです。生きて活動している経済ですから、上がり下がりはあるものの長い目で見れば豊かさを増し、資産価値も高まっていきます。
投資はギャンブルというイメージが未だに根強いですが、本質的には企業の経営努力を資金的にサポートし、企業が経済的豊かさを私たちに提供したことによる発展の果実を投資家として受け取る仕組みです。
Googleがたくさんのインターネットサービスを通じて私たちを便利にしたように、AppleがiPhoneやiPad、かつてはiPodなどを通じて生活スタイルを革命的に変化させたことは、社会を豊かにしただけでなく企業価値を高め、投資家も豊かにしたわけです。
それは任天堂のSwitchしかり、トヨタ自動車のプリウスしかり、ユニクロのヒートテックしかりです。私たちは投資を通じて世の中の豊かさを実現させていく役割を担ってもいるわけです。
ところで、先進国だけが投資対象ではありません。日本やアメリカ、ユーロ諸国のような豊かさを目指して、発展著しい新興国もあります。日本の1960年代から90年代を一気に駆け抜けるような経済成長を果たしている国もあります。
あなたがこうした国に投資をする、ということは、彼らの経済発展を資金的にサポートすることでもあります。もちろん投資家として、その資産価値が高まることが前提かもしれませんが、あなたのお金はやはり世界とつながっているわけです。
エシカルな消費、ESG投資 気持ちのよいお金の使い方を考える
こうした消費や投資について、世界とつながっているなら、世界をちょっと良くしていくための力になるかもしれません。
近年注目されている考え方に「エシカル」というものがあります。"倫理的"と訳すとちょっと固い印象を与えますが、「気持ちのよいお金の使い方」と考えてみるとわかりやすいと思います。
たとえば、コーヒーの値段に数十円の差があったとします。このとき、高いコーヒーの方に「レインフォレスト」のカエルのロゴマークがついていることに気がつくかもしれません。環境の悪化に敏感なカエルも暮らせるような環境で作られているコーヒーに対し「レインフォレスト」のロゴをつける取り組みが行われています。
あなたはロゴのあるコーヒーのほうを飲むことで、コーヒー豆の産地の環境を守りつつ、(おそらく)美味しいコーヒーを楽しむことができるわけです。これは「数十円高い」ことを受け入れつつ、気持ちよくコーヒータイムを楽しむ選択です。
そしてその選択がもしかしたら長い目で見て地球を支える力となる可能性を秘めています。
ちょっと前は「ロハス(LOHAS)」という考え方が流行しました。Lifestyles of Health and Sustainability の略で、健康で持続可能な生活様式ということでした。少し高い予算になろうとも、地球環境保護を意識した消費スタイルを実践する試みのひとつです。
投資の世界でも、エシカル投資という言い方をすることもあります。また、ESG投資という考え方もあります。これは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったものです。企業の長期的な発展のためには、社会的責任を意識しつつ持続可能性の高い経営を心がける必要がある、ということで、3つのキーワードを意識しながら投資家は企業とコミュニケーションしていくべきだという考え方です。
わかりやすくいえば、「悪い企業ではなく、いい企業に投資をしよう」という考え方です。ブラックな企業がいくら儲かっていてもそれは長続きするはずがありません。その国では合法だからと工場から廃液を川に流している企業にはできれば投資をしたくないものです。ただ売り上げを伸ばせばいい、と単純に考えるのではなく、投資のアプローチも広がりをみせているのです。
ESGを意識し企業選びをしている投資信託も現れ始めました。こうした金融商品は、私たちにとって「気持ちのよいお金の使い方」の投資バージョンともいえます。
無理のない範囲でエシカル消費やESG投資とつきあってみよう
私たちのお金の使い方は「より安く」を意識することが多いと思います。お金を増やそうとするなら「より増える」ことを考えます。それはそれで大事なことです。
しかしエシカル(あるいはESG)を少し意識することで、スーパーマーケットでの商品選びが違って見えてきます。今まで「これは高いな」と思っていたものにも、実はちゃんと理由があったりするわけです。
そしてエシカル消費を意識すると「より気持ちよく」お金を使うことにも心を配ることができます。それはお金が生きた形で世界を動いていることを感じるステップでもあります。
といっても、毎月の家計が赤字の状態でエシカル消費のためにお金を使うというのは本末転倒です。まずは家計が黒字の状態を作ったうえで、家計にしっかりと余裕があるとき、少しエシカル消費を意識してみてください。
投資も同じです。ESG投資を始めてはみたものの、短期的に儲かれば売ったり、値下がりしては手放すというのではなく、できれば中長期的に企業の取り組みをサポートするつもりであなたの投資資金を位置づけてほしいと思います。
無理のない範囲で、エシカル消費や投資を考えてみる事は、自分とお金の意味を考える、よいきっかけになるかもしれませんね。
ところで、こうした気持ちのよいお金の使い方のひとつとして「寄付」もあります。次回は寄付について考えてみたいと思います。