「パラレルインカム」で、仕事をやり続けた方がいい理由とは?
監修・ライター
一度しかない人生。“自分らしく”“豊かに”“自由に”生きたいと思いませんか?
この講座「『パラレルインカム』のはじめ方」では、そうした生き方の実現方法を、身近な生活のお金や会計、経済、資産運用などに関して幅広い見識を持つ「ファイナンシャルアカデミー」の代表・泉正人先生が、わかりやすくレクチャーします。
また3講座が終了するごとに、このメソッドを実践し、自分らしい生き方を手に入れた6名の「パラレルインカム・ストーリー」も紹介。
今、話題の「FIRE」の先をゆく新しいメソッド「パラレルインカム」。みなさんもぜひ、このメソッドを活用して、自由で豊かな人生を自らつくってみませんか?
人間の欲求を5段階に分けるとすると?
Jくんは、アブラハム・マズローという人物を知っているかな?
すみません、恥ずかしながら存じ上げず……。
マズローは、アメリカの心理学者で、「欲求の5段階説」を提唱した人なんだよ。
欲求の5段階説! 睡眠欲、食欲…あと3つは……。
ははは。確かにそれらも入るけど、マズローの説では、それらは「生理的欲求」ということで、ひとまとめになっているんだ。
それらが生理的欲求でひとまとめ……。とすると、例えば承認欲求、とか?
そう、承認欲求も5つのうちの1つだね。ここで答えを明かすと、人間の欲求とは、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階があり、それをピラミッドで表すと、一番下にあるのが生理的欲求。そこから順に満たしていくことで、最終的に自己実現に達するという考え方なんだよ。
それぞれの欲求について、具体的にどんなものか知りたいです。
まず「生理的欲求」は、食事、睡眠、呼吸、排泄といった、生きていくための必要最低限の欲求のことで、人間が最初に満たそうとする欲求。次の「安全欲求」は、身体的に安全で、経済的にも安定した状態で暮らしたいという欲求だよ。健康に不安を抱えていたり、明日の生活も不安なくらい困窮していたりしたら、快適な生活を送るのは難しくなる。生活の不安から抜け出して、安心して暮らしたいという欲求は誰もが持っているはず。
確かに。そうですね。
「社会的欲求」は、家族や組織などの集団に属したり、仲間を求めたりする欲求。この欲求が満たされないとき、人は孤独を感じて不安を持つんだ。だから社会的欲求は、「所属と愛の欲求」とも呼ばれている。そして先ほどJくんから挙がった「承認欲求」。社会の中で認められたい、評価されたいという欲求で、この欲求を満たされることで、喜びや達成感を感じ、モチベーションを持って自分を成長させることができるようになる。
SNS時代の今、承認欲求は良く話題になりますよね。
そうだね。そしてラストが「自己実現欲求」。これは自分にしかできないことを成し遂げ、自分らしく生きたいという欲求のこと。人が何かの夢を持って、それを実現したいと努力するのは、自己実現の欲求があるからなんだよ。
これらを順番に積み重ねていくと、より満足のいく人生が送れるということなんですね。
例えば早期リタイアをして社会から離れると、「アイデンティティー・クライシス」という状態に陥ることがあるんだ。アイデンティティー・クライシスとは、日本語で「自己喪失」と訳される言葉で、「自分は何者なのか」「この社会で生きていく能力があるのか」という疑問を抱えて心理的に追い詰められてしまった状態のこと。
アイデンティティー・クライシスに陥ると、どうなるんですか?
社会的欲求が満たされず、承認欲求や自己実現欲も満たされないので、人生への不満が大きくなってしまう。そうなると、何のためにお金をつくってリタイアしたのか、ということになりかねないよね。やっぱり一度きりの人生を充実させるには、生きがいのあるコトを追求することが大切なんだ。
なるほど!
仕事で社会とつながろう
パラレルインカムでは、経済的自由を達成したあとも、生きがいにつながるコトを続けていく。それは主に仕事なのだけど、仕事をする理由は大きく2つに分けられるんだ。まず1つ目の理由は、社会とつながるため。マズローの5段階欲求でいうと、社会的欲求を満たすということ。
そういえば、若くしてリタイアした人の中には、「何もしないと、どんどん社会から置いていかれるような感覚になる」と言う人がたくさんいるみたいですね。
人は何も仕事をしないとスキルの成長が止まって、思考が鈍くなって、社会との接点も極端に少なくなるんだ。
一方で、それまで一緒に仕事をしていた会社の同僚なんかは、仕事で成果を出してどんどんポジションを上げていったり、大きなプロジェクトを動かしたり、仲間と飲み会を楽しんだり…。今の時代は、そういった様子がSNSを通じて嫌でも目に入ってくるので、自分だけ取り残された感や閉塞感を感じるのは当然かもしれないですね。
メディアなどで「FIREに成功した人」として登場している人は、ネガティブな話を一切口にせず、「毎日自由で楽しいです。朝起きて今日は何をしようかと考えると、ワクワクします」といった話をしているけれど、現実には「社会から取り残されている」という悩みを抱えて、孤独な生活を送っている人も少なくないんだよ。
せっかくアーリーリタイアしたのに、孤独かぁ……。
コロナ禍では、緊急事態宣言が発令された影響で、業種によっては営業の自粛を余儀なくされたケースもあったよね。飲食店の休業や時短営業が続いたのも記憶に新しいと思う。でもいったん休業をしてからもう一度営業を再開するのは、簡単なことではないんだよ。休業している間にスキルが落ちてしまうだけでなく、お客さまとの接点を失うことで、世の中の動きやニーズをつかみにくくなってしまうこともあるからね。
休業前と同じレベルから営業再開できるわけではなく、休業時点のレベルに戻るだけでも苦労しそうですよね。
そう考えると、業種を問わず、仕事からリタイアすることのデメリットは相当大きいよね。早期リタイアしてから2~3年後に「もう一度社会復帰しよう」と思っても、遅すぎる判断となってしまう。パラレルインカムの場合は、経済的自由を達成したあとの会社を辞める、辞めないは自由だけれど、会社を辞めるにしても、生きがいを感じる仕事を通じて社会とかかわり続けるんだ。
大切なのは、社会とつながっておくことなんですね。
「ライスワーク」ではなく「ライフワーク」を
仕事を続ける2つ目の理由は、生涯にわたって生き生きと充実した人生を歩むため。5段階欲求でいうと、承認欲求と自己実現欲求を満たすイメージかな。いくらお金を持っていたとしても、時間の自由があったとしても、頭を使わず何かに挑戦しない生活をしていると、あっという間に老化が進んでしまう。人は本能的に何かにチャレンジし、アドレナリンが出るような経験をたくさんしたいと思うものなんだ。
そうですね。3日連休とかでずっと家にいたら、何やってたっけ?とぼんやりすること、ありますもんね。
最近、僕が運営するファイナンシャルアカデミーの受講生だったAさんと話をする機会があったんだ。Aさんは40代なんだけど、授業で学んだ知識をもとに投資を始めて、今では仕事をしなくても家族を養うのにまったく困らないレベルの不労所得を得ているんだって。
うらやましい……。
笑。それで、せっかくの人生を好きなことをして生きていきたいと思って、退職を決意したそうなんだ。
まぁ、普通はそう考えますよね。
その話を聞いていて印象に残ったのは、Aさんが会社を退職する間際の体験談なんだ。Aさんは会社に辞表を出して、退職の1か月前から有休消化に入った。それまで仕事一辺倒の人生を送ってきて、そのとき社会に出て初めて、何もすることのない空白の1か月間を過ごしたそうだよ。
その1か月間、何をされていたんですか?
平日の昼間からたっぷり町を歩いてみたと。でもそうしたら、何か違和感を覚えたそうだよ。
違和感とは。
どれだけ歩いても、街中には高齢者しか見かけないんですよ、って。
言われてみれば、確かに平日の昼間から町を歩いているのは定年退職をした高齢者の方が中心ですよね。
さらにAさんは、ちょっとなまった体を動かそうと、スポーツジムに行ってみたらしい。でもやっぱり高齢者ばかり。今の年齢からこういうコミュニティの中で生きていくのが、本当に正しいのだろうかと思ってしまったそうだよ。
それは悩みますね。
経済的自由を達成したあとは、何もしないという生き方の選択も可能だけど、多くの人には、仕事でのチャレンジを通じて自己実現欲求を満たしたり、仕事で社会とかかわることで承認欲求を満たしたりして、達成感や人生の充実感を感じることができるんじゃないかな。
だからこそ、パラレルインカムでは生きがいのある仕事を重視しているんですね。
食べていくための仕事を「ライスワーク」と呼ぶのに対して、夢や好きなことを追い求める活動は「ライフワーク」と呼ぶことができる。パラレルインカムは、ライスワークではなく、自己実現につながる「ライフワーク」を追求していくメソッドなんだよ。
仕事を通じて社会に貢献しよう
パラレルインカムを実現した人にとって、やりがいのある仕事を通じて社会とつながるとき、仕事の規模や収入の大小は問題ではなさそうですね。
そうだね。パラレルインカムを実現した人が取り組んでいる仕事はさまざま。一人で小さなカフェを営んでいる人もいるし、経営する会社を上場させようと奮闘している人もいる。フリーランスで活動している人もいれば、会社員のまま働き続ける人もいる。
ボランティアはどうですか? 世の中には無償のボランティアにやりがいを見出して、社会貢献に取り組む人もいますよね。
立派な志だと思う。ただ、ボランティア精神だけで、永続的にボランティア活動を続けられる人は意外と少ないものだよ。時間が経てば経つほど、ボランティアよりも収入につながる仕事の優先順位が高まっていったり、ボランティアのはずなのにいつの間にか見返りを求めてしまったり。
わかる気がします。
経済社会では、自分のスキルや労力を提供して報酬をもらえるということ自体が、他者から認められたという承認欲求を満たしてくれる。ボランティアは本来、見返りを求めるものではないけれど、常に誰かから感謝されるような活動でない限り、承認欲求を満たすことは難しいものなんだよ。
常に感謝されることをやるって、なかなか大変そうですね。
仕事とは、お金をもらうためにモノやサービスを提供して、その価値、つまり質を高めるために自分のスキルや労力を提供する行為なんだ。価値が高まると、得られる報酬も高まるというシンプルな構造になっている。そして仕事となると、株式会社をはじめとする資本主義や社会経済の仕組みが存在するので、その仕組みを使って、より高い価値を世の中に提供できる。これによって、経済の発展に貢献しながら、便利で豊かな社会をつくっていくことができるんだよ。
仕事に、そんな価値を見出しながら働いたことがなかったので、ちょっと驚きです。
僕は、世の中に価値を提供することと、利益を生み出すことは同義だと考えているんだ。仕事は社会に対して何らかの価値を提供する営みだよね。何らかの価値を提供して、お客さまに受け取っていただくことで、対価としてのお金を受け取ることができる。価値を提供して社会に貢献することでお金が得られる、ともいえるよね。逆に価値を提供しないと、なかなかお金を払ってもらえない。
確かに僕自身も、価値のあるコトにはお金を払いますけど、価値を感じないコトには1円たりとも払いたくないですもんね。
たとえ1,000円でも、お金をいただくのは大変なこと。1億円、2億円といった大きな売上でなくても、1円でもお金を払ってもらうことに意味があるんだ。
もし、早期リタイアして仕事に携わらなくなると、社会に価値を提供するチャンスが激減してしまいそうですね。
そうだね。自らが働いて社会に価値を提供できるのにもかかわらず、価値を提供し合わなければ、社会はよい方向に進まない。早期リタイアで社会から離脱する人が増えたら、私たちが暮らしている社会は衰退していく一方だよ。
社会の一員として生活するなら、仕事を通して社会に貢献していくことが望ましいんですね。
とは言え、経済的自由は欲しいけど、将来特にやりたいことはない、とか、好きなことといっても趣味くらいしか思いつかない、という人も一定数いると思う。でも現時点でやりたいこと、好きなことがなくても大丈夫。これから経済的自由の達成を目指す取り組みと並行しながら、じっくり探していけばいいんだよ。
やりたいことを見つける一番確実で手っ取り早い方法ってなんでしょうね。
それは、まず行動してみることだよ。外に出てみたり、人とのコミュニケーションを増やしてみたり、普段行わないようなことをやったりすると、やりたいことが見つかるかもしれない。そして興味を持ったことや、チャレンジしてみたいと思ったことをやってみて、面白そうなら続けて、つまらなかったらやめればいいだけ。一度で見つけなければいけないわけではないと思えば、気楽にやりたいこと探しができるんじゃないかな。
行動する、確かにそうですね。
そして、「お金を使う」ということも実は大事なポイントなんだ。
え?お金を使う?
やりたいことは、いろいろとお金を使っているうちに見つかるもの。今の時代、何かをするときには、だいたいお金がかかるよね。何かを習ってみることもそうだし、友人と一緒に食事をするのもそう。でもそのときの会話の中や、旅行先で見た景色からインスピレーションを受けることもあるでしょ?
そういえば、インド旅行をして、人生史上最高のチャイを飲んで感動したから、日本で美味しいチャイを飲めるお店をつくりたいと思った!という友人がいました。
うん、旅もそう。お金を使って何かを体験すると、やりたいことに出会えるチャンスが格段に広がる、ということなんだよ。経済的自由を達成するためにひたすらお金を貯め込んで部屋にこもり、資産を守るという発想では、やりたいこと探しは難しくなる。頭で考えていても、ワクワクするようなやりたいことを見つけるのは難しいものなんだ。
すぐに利益につながらなくても、少しでも興味を持ったことは、お金を使ってやってみることですね。
やってみたら楽しかった、食べてみたら美味しかった、会ってみたら素敵な人だった……。そんな経験を積み重ねていけば、きっとやりたいことが見つかると思うよ!
まとめ
人間には、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階の欲求があり。一番下にある生理的欲求から順に満たしていくことで、最終的には自己実現に達するという考え方があります。
アーリーリタイアは、安全欲求あたりまでは満たしてくれるものの、社会から離れることで「アイデンティティークライシス」という状態を引き起こすことがあり、そうなると社会的欲求や承認欲求、自己実現欲求が満たされず、人生に不満を持つようになる可能性があります。
一方、パラレルインカムでは、経済的自由を達成したあとも仕事を続け、価値を提供し、受け取りながら、自己実現欲求を満たすことを目指します。食べていくための「ライスワーク」ではなく、好きなことを追い求める「ライフワーク」をしながら、というところも重要なポイントです。
今、やりたいことが見つからない、という人でも大丈夫。まずは行動し色んなことに実際にお金を使ってみて、やってみたら楽しかった、食べてみたら美味しかった、会ってみたら素敵な人だった、そんな経験を積み重ねてみてください。きっと次のステップへの糸口が見つかるはずです。
次回は、パラレルインカム達成のために必要な、所得と資産の関係性について学んでいきます。お楽しみに!