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ボーナスうれしい!でも税金や保険料などけっこう引かれてる!?

ためる 内山 貴博

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夏と冬、通常年2回のボーナス時期を楽しみにしている会社員や公務員の方は多いのではないでしょうか?ボーナスは毎月のお給料同様、労働の対価という意味合いもありますが、業績等を考慮した「ご褒美」のような意味合いも含まれています。よって会社の業績や個人の成績などで大きく左右されることがありますが、やっぱり少しでも多くもらいたいものです。

ただ、そのボーナスも額面通りピッタリもらえるわけではありません。お給料と同じように税金などが差し引かれます。今回はその仕組みについて詳しく見ていきたいと思います。

ボーナス?賞与?違いはあるの?

今回のテーマであるボーナスですが、「うちは夏季賞与、冬季賞与と言い、あまりボーナスという表現を使いません」という会社もあると思います。ボーナスと賞与、どう違うのでしょうか?

ボーナスは「bonus」という英語であり、その起源はローマ神話の「Bonus Eventus」という農作物の収穫や発展の神からきているようです。賞与は文字通り「賞を与える」ということから、ボーナスも賞与も頑張った成果に対する報いという意味を感じることができます。細かい違いはあるようですが、一般的にボーナスと賞与は同じ意味合いで使われています。

夏季、冬季と指定している時期に支給される場合は賞与・ボーナスどちらも使われている印象がありますが、決算期に業績に応じて支給される場合は「決算賞与」と、ボーナスよりも賞与が使われるケースが多いようです。

ボーナス(賞与)と毎月の給与との違いは??

ではボーナスや賞与(以下ボーナス)と給与はどう違うのでしょうか?これには大きな違いがあります。ボーナスと違って、毎月もらう給与は法律で支給しなければならないと定めてある点です。

労働基準法で定めてあるように、労働の対価としての賃金は毎月少なくとも1回は、定められた日に支払われることになっています。よって、「25日に給料をもらっている」という人が多いと思いますが、こういった法律が根拠となっており、ここで言う賃金が給与を指しています。

ボーナスは法律上「臨時の賃金等」に当てはまり、「支払わなければならない」という賃金には含まれておらず、会社の就業規則によるものとなります。よって、ボーナスについては皆さんがお勤めの会社の就業規則にどのように記載されているかによって変わります。

就業規則では「12月1日時点に在籍している者に冬季賞与を支給する」といった表現が多いようです。例えば4~9月の上半期を査定期間とし、その期間の業績に応じて12月に冬季のボーナスを支給する会社では、査定期間中に勤務していても、11月に退職してしまうと冬のボーナスがもらえない場合があるのはそのためです。よって退職する際にボーナスのタイミングを考慮するケースは非常に多いです。

ボーナスから控除されているものは?

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ボーナスも給与同様に税金や社会保険料が控除されます。以下から分かるように、給与支給時と賞与時では算出する際の料率や、使用する一覧表が異なるといった事務面での違いがあります。

筆者作成

社会保険については加入している健康保険の組合等によっても異なります。例えば、医師会などのように、賞与から保険料は徴収しないといったルールがある組合もあります。なお、多くの中小企業などが加入する通称「協会けんぽ」(都道府県)は以下のような保険料額表を用いて計算します。

<参考>福岡県の協会けんぽ

全国健康保険協会(協会けんぽ)HPより


 表中には「報酬月額」とありますが、ボーナスの支給額から1000円未満を切り捨てた額が「標準賞与額」となり、同じ表を用いて保険料を算出し、その分が控除されることになります。

税金についてですが、ボーナスも税務上は「給与所得」となります。よって1年間の給与とボーナスを合算した額に応じて所得税を負担することになります。そのため給与と同じようにボーナスからもあらかじめ所定の所得税が源泉徴収されることになります。

税金はどれくらい引かれる?計算方法は

前述のように税務上は給与もボーナスも「給与所得」として合算され、課税の対象となりますが、会社側の事務手続き上、源泉徴収額の算出方法が給与とボーナスでは異なります。
以下が国税庁ホームページより入手できる「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」です。

国税庁HPより

なお、この計算のベースとなる金額はボーナス総額ではなく、社会保険料を控除した前月の給与支給額です。例えば前月の給与支給額が50万円、そこから控除される健康保険料、厚生年金保険料などの社会保険料の額が8万円であった場合、42万円となり、賞与の金額に乗ずべき率は14.294%となります。

賞与もまた健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が差し引かれるため、それらの控除後の金額が70万円であった場合、70万円×14.294%=10万58円が源泉徴収額となります。
 

扶養家族がいる場合は?

扶養親族がいた場合は扶養親族の人数に応じた項目を見ていきます。

国税庁HPより

よって、同じく前月の社会保険料等控除後の給与収入が42万円の場合で扶養親族が1人いる場合は、「扶養親族1人」の欄から、乗ずべき率が12.252%となりますので、社会保険料等控除後の賞与の額が70万円であった場合、8万5764円、賞与から源泉徴収されることになります。

できればあまり税金を引かれたくない…源泉徴収の位置づけは?

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年に2~3回程度の楽しみなボーナス。色々と引かれてしまうと、がっかりするかもしれません。そもそもなぜ勝手に差し引くの?そう思っている方も多いと思います。その理由の1つとして、給与やボーナスから税金を徴収する「源泉徴収」は税金の前払いのような位置づけであるからです。

もし皆さんが自営業で消費者に50万円の商品を現金で販売した場合、何も差し引かれず50万円が手元に入ってきます。この例と比較して「自営業の人はいいな、何も控除されなくて」と思うでしょうか?
たしかに、その時点では何も控除されていませんが、自営業の人は毎年、確定申告を行い、年に1度まとめて税金を納付しているのです。
※予定納税については今回触れません

このように会社員であっても自営業であっても、働いて稼いだお金のうち、一定の金額に対して税金がかかることは同じなのです。
相対的に人数の多い会社員や公務員が毎年税金を自分で計算して、確定申告をするのは手続きも大変ですし、1年間しっかり納税額を確保しておかなければなりません。そこで毎月の給与とボーナスから一定額の税金を差し引いて、会社側が従業員の代わりに納税しているのです。

ただし、この源泉徴収額は一覧表を使って徴収した、いわば「仮計算」のようなものです。私たち個人の税金は1月から12月の1年間で計算しますので、1年分をまとめると「ボーナス時にたくさん税金が引かれ過ぎていた」という状況になることも想定されます。そういった場合に対応してくれるのが「年末調整」です。従業員の家族構成や加入している生命保険などを考慮し、適した税額を計算し、給与やボーナスから徴収した税額と照らし合わせ、徴収し過ぎていたということであれば還付してくれます。

この年末調整もできる範囲が限られています。例えば従業員個人が通院等で支払った医療費に対して受けることができる医療費控除については年末調整で対応することはできません。こういう場合は確定申告(還付申告)をして還付を受けることになります。

まとめ ボーナスも「給与所得」である

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ボーナス・賞与といった名目で受け取る一時金は、税務上の「給与所得」となり、毎月の給与と同じように考えるため、税金や社会保険料も徴収されることが分かりました。なお、社会保険については2003年4月に総報酬制というのが導入されて今の形となりましたが、それまではボーナスから社会保険料はほとんど徴収されていませんでした。これは、私たちの負担が増えたことを意味します。高齢者が増え少子化が進む中、構造的に社会保険の仕組みを維持するのが難しくなるという指摘もあります。今後さらに給与やボーナスに対する税金や社会保険料の在り方が変わる可能性もあるでしょう。こういった動向はしっかりチェックして、自身の将来、老後に向けて何をやるべきなのか、そんなことにも目を向けてほしいです。

ただし、控除されている金額ばかり気にするのではなく、やっぱりボーナス支給日はちょっと特別な日であることを改めて考える日にして欲しいと思います。日頃がんばっている自分を振り返り、欲しかったものを買ったり、高級レストランを予約したり…。こんなお金の使い方も素敵ですよね。

ボーナスの税金についてのQ&A

Q.住民税はボーナスから差し引かれないのですか?

A.差し引かれません。住民税は本来、自宅に納付書が届き自ら納付する「普通徴収」がベースとなっています。ただし、会社員などお勤めの方は、納付手続きなどの関係で、会社が毎月の給与から代わりに徴収して納付してくれているのです。これを「特別徴収」といいます。この特別徴収は毎月の給与の時に徴収されますので、ボーナスからは差し引かれません。

Q.ボーナス支給とは別に結婚の際に会社から支給された「お祝い金」は税金がかかりますか?

A.結婚のお祝い金などは社会通念上相当な額でよほど高額でない限り、税金も課税されず社会保険料も徴収されないこととなっています。