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不妊治療の費用、保険適用後はいくら?民間の医療保険も使える?

うちの家計簿 世継 祐子

不妊治療の費用、保険適用後はいくら?民間の医療保険も使える?

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FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は38歳会社員女性のUさん。不妊治療を検討しているという共働きご夫婦の家計簿です。

38歳会社員女性のUさんの相談内容

結婚して2年が経ちました。子どもがいたらいいなと思うことが増え、夫婦で話し合って不妊治療を検討しています。不妊治療はお金がかかるイメージがありますが、治療費についてはどのように備えたらよいでしょうか。保険などに新たに加入した方がよいのでしょうか。仕事は妊娠しても続けていきたいと思っています。不妊治療の費用について確認しておくべきことがあれば教えてください。

Uさんの家計簿は…?

収入は夫婦の手取りが45万6000円、NISAでの積み立てと貯金をあわせて、収入の約28%にあたる12万8000円を貯蓄できています。現在の貯金額は380万円です。

不妊治療は身近な治療に 

夫婦で医者の話を聞く
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公益社団法人日本産科婦人科学会の調査によると、2021年に日本で生まれた子ども81万1622人のうち、8.6%の6万9797人が生殖補助医療によって誕生しています。約12人に1人の割合です。

また国立社会保障・人口問題研究所の「2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、不妊を心配したことがある夫婦の割合は39.2%。夫婦全体の3組に1組以上の割合です。実際に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の割合は22.7%で、4.4組に1組の夫婦が治療を受けたことになります。

約10年前の2002年における不妊を心配した夫婦の割合は26.1%、不妊の治療を受けた夫婦の割合は12.7%となっており、増加傾向にあります。子どもの誕生を考える夫婦にとって身近な治療となっているといえるでしょう。

2022年4月から不妊治療が健康保険適用に

治療内容を確認
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2022年4月から有効性・安全性が確認された体外受精などの基本医療は健康保険適用となりました。

●一般不妊治療
 ・タイミング法
 ・人工授精
●生殖補助医療
 ・採卵受精
 ・体外受精
 ・顕微授精
 ・受精卵・胚培養
 ・胚凍結保存
 ・胚移植

※生殖補助医療のうち、上記に加えて実施されることのある治療については「保険適用」されたものや、「先進医療」として保険診療と併用できるものがあります。

高額療養費制度で治療費用の負担が軽減

高額療養費制度は、医療費の家計への負担が重くならないように、1カ月(1日から末日まで)で支払った医療費が一定の上限額を超えた場合に、超えた金額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得によって異なります。

また過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。

1カ月の自己負担上限額(70歳未満の方)※ここでの年間所得は、総所得金額等から基礎控除額43万円を控除した金額です。

不妊治療が健康保険適用になったことで1カ月の医療費の上限が事前に確認できるようになりました。ご自身の上限額はいくらか確認しておきましょう。

保険適用には年齢と回数の制限あり

体外受精と顕微授精では、健康保険診療の中で年齢回数制限があります。
●年齢制限
治療開始時に女性の年齢が43歳未満であること
●回数制限


Uさんは40歳未満の回数「通算6回まで」となりますが、40歳以上になると体外受精と顕微授精の回数の上限が変わることも確認しておきましょう。

加入している民間の保険内容の確認を

加入している保険で手術に対しての保障があるか確認しましょう。「不妊症」など病院で診断され、2022年4月1日以降に「手術料」の算定対象となる不妊治療を受けられた場合は、「手術給付金」の対象となる場合があります。

女性の場合、人工授精や採卵術、胚移植術や受精卵の管理に伴う費用も民間の医療保険の給付対象となる場合があります。男性の場合は精巣内精子採取術などです。不妊治療として先進医療を受けた場合も先進医療給付の対象となる場合があります。

加入している保険の契約内容によって給付対象は異なりますが、事前に加入中の保険の給付対象になるか確認しておくことで、請求の漏れがなくなり、治療費の計画も立てやすくなります。

自治体による支援も

福岡県を例に挙げると、不妊治療の経済的不安を軽くするため、保険適用となった特定不妊治療と併用して、全額自費で実施される「先進医療」に係る費用の一部を助成しています。令和7年3月31日までに「妊娠判定」等に至った治療が対象となります。

助成の対象となるには所定の要件があり、「治療計画」を立てた日に夫婦であることや、妻の年齢が43歳未満であることなどの要件もあります。お住まいの自治体に支援制度があるか、ある場合は具体的にどのような内容か、早めに確認をしておきましょう。

目的あるお金の使い方は有意義

今回、Uさんご夫婦のご希望で不妊治療を検討されているとのことです。目的をもったお金の使い方はとても有意義なお金になると思います。これからかかるかもしれない治療費が今後の新たな出費となり、貯金に回せるお金が減ったとしても、今、必要としていることのためにご夫婦が納得してお金を使うことはとても幸せなことだと思います。お金は使うためにあるのですから安心して支出していただければと思います。

家計管理についてのアドバイス

Uさんは手取りの約28%を貯められています。このペースを続けられれば年間で150万円貯めることができます。

これから不妊治療に取り組むとしても、健康保険の適用となる治療であれば一定の上限までの支出で抑えられるため、安心していただければと思います。

また医療費の負担については、年間で10万円以上の医療費については「医療費控除」の対象となりますので「医療費」についての領収書などはしっかり保管しておくようにしましょう。

新たに民間の保険に加入することを検討するより、公的保障とすでに加入している民間保険の内容を再度確認し、活用できるものがないかまず確認をすることが大切です。公的保障と民間の保険が重複しているものがあれば見直しも検討しましょう。

アドバイスを受けたUさん談

保障内容について問い合わせたところ、現在加入している医療保険で人工授精などが手術給付金の対象となることがわかりました。まさか不妊治療が「手術」の対象となるなんて、想像できていなかったので驚きました。治療費の不安もなくなってきたので、治療を具体的に考えていこうと思います。

家計簿診断を終えて

不妊治療が健康保険適用になったことで、民間の医療保険にある手術給付金の給付対象となるケースがあります。また不妊治療をサポートする休暇制度などを準備している企業もあります。通院での治療もあると思いますので、勤務先の有休制度の内容を事前に確認しておきましょう。