不妊治療は保険適用になってどう変わった?条件や自治体の助成は
監修・ライター
2022年4月から不妊治療に対して保険が適用されました。3組に2組が不妊を心配しているといわれる昨今、不妊に悩む夫婦にとって嬉しいニュースとなったのではないでしょうか。今回の記事では、不妊治療の現状と、保険適用後の不妊治療における注意点や、自治体の助成制度について解説します。
「3組に2組」が不妊を心配している
日本産婦人科学会が2023年8月に公表した最新ARTデータによると、2021年の不妊治療実績件数(年別治療周期総数)は49万8140周期となっており、治療法別の周期は以下の通りです。
IVF(体外受精):8万8362周期(前年差:+5479周期)
ICSI(顕微授精):17万350周期(前年差:+1万8618周期)
凍結融解胚(卵):23万9428周期(前年差:+2万4143周期)
なお、ここでいう「周期」とは治療が行われた月経周期(約28日間)のことです。1年で何回不妊治療を受けるかは女性によって異なるため、生殖医療の分野では人数でカウントするのではなく、周期といった単位が用いられます。
また、もうひとつ別の調査結果も見てみましょう。国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」(2021年)によると、不妊を心配したことがある夫婦の割合は39.2%。実際に検査や治療を受けたことがある夫婦は22.7%(5.5組に1人)となっているほか、結婚5年未満の夫婦では6.7%が不妊に関する検査や治療を現在受けていると回答しています。
いずれの調査も前回調査より割合が増加しており、不妊治療が身近な治療となりつつあることがわかるでしょう。
不妊治療にかかる費用とは
厚生労働省が公表した「不妊治療の実態に関する調査研究」(2021年度)によると、全国の医療機関の人工授精の1回あたりの平均費用は約3万円、体外受精は約50万円となっています。また、同調査の当事者アンケートで不妊治療にかかった費用の総額を尋ねたところ、治療内容によって大きな差が見られました。検査のみやタイミング法の経験者は10万円未満の割合が大半を占めている一方、体外受精や顕微授精では医療費の総額が50万を超えることも珍しくなく、顕微授精の経験者の約5割が50万円以上かかったと答えています。
ここでの費用はあくまで1周期あたりのものであり、回数を重ねていけば数百万円単位での負担となるでしょう。不妊治療が家計に与える影響の大きさが調査結果からも分かります。
2022年4月から不妊治療は保険適用に
不妊治療は精神的な負担に加え、経済的負担が大きいことを受け、政府は2022年4月から不妊治療に保険を適用することにしました。従来は不妊か否かを判断するための検査や症状の治療のみが保険の対象となり、体外受精や顕微授精といった不妊治療は保険の適用対象外でした。今回の改定によって、不妊治療の経済的負担が軽くなることが期待されます。
とはいえ、保険の適用対象となるためには一定の条件を満たす必要がある点に注意が必要です。まず、2022年4月以降、保険の適用対象となった不妊治療法は以下の通りです。
・一般不妊治療:タイミング法、人工授精(AIH)
・生殖補助医療:採卵、採精、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植
また、上記の治療を受け、保険の適用対象者となるには治療開始時点で女性が43歳未満でなければならないほか、女性の年齢によって適用回数も異なります。具体的には女性が40歳未満の場合は子ども1人に対して最大6回、40~43歳未満の場合は最大3回です。
女性の年齢が上がるにつれて不妊治療の難易度が上がるため、子どもがほしいと悩んでいる夫婦はできるだけ早いうちに医療機関を受診することをおすすめします。
オプションとして実施される先進医療は保険の適用対象外
2022年4月から不妊治療が保険適用となった一方で、オプションとして実施される先進医療は保険の適用対象外となります。
参考|先進医療として告示されている不妊治療関連の技術(令和5年4月1日時点)|厚生労働省
不妊治療における先進医療は保険の適用対象外となることから、経済的負担が大きくなることは避けられません。しかし、自治体によっては先進医療に対する費用助成を打ち出しているところもあります。
たとえば、愛媛県松山市では、2023年9月から不妊治療に対する先進医療に対し、助成する制度を開始しています。厚労省が告示した13種類の先進医療を受けた場合、1回につき上限5万円まで助成が行われます。
その他、複数の自治体でも先進医療に対する助成制度を打ち出しているところがあるため、治療予定がある方は、一度お住まいの自治体のHPを確認してみるとよいでしょう。
まとめ
今回は2022年4月に保険が適用された不妊治療について、その概要と適用条件等についてお伝えしました。これまで経済的な負担から不妊治療を諦めていた夫婦にとって、希望の持てる明るいニュースであることは確かでしょう。とはいえ、保険の適用対象となるには一定の条件が設けられているほか、先進医療は適用対象外となる点に注意が必要です。
また、自治体によっては不妊治療における先進医療に対して助成制度を打ち出しているところもあるため、一度お住まいの自治体が実施しているかどうか確認するとよいでしょう。